1. 概要
CIPは、インコタームズの一つで売主が指定された目的地までの 運賃だけでなく保険料も負担して貨物を引き渡します。ただし、リスクは最初の運送業者への引渡し時点で買主に移転します。複数の輸送モード(海路・陸路・航空など)を問わず使用できる柔軟な条件です。
2. 売主と買主の責任範囲

売主の責任
- 商品の輸出通関、梱包、書類作成
- 最初の運送業者への引渡し(輸送費の負担)
- 目的地までの保険手配
(例として、最低補償は契約価額の110%相当でInstitute Cargo Clauses Aなど)
買主の責任
- 最初の運送業者以降のリスク管理と追加保険
(必須ではなく、買主の希望と必要に応じて) - 輸入通関・関税・仕向地での輸送
3. 危険負担の移転
貨物が 最初の運送業者に引き渡された時点で、リスクは売主から買主へ移転します。運送費と保険は目的地まで売主負担ですが、リスクは早期に移る点に注意が必要です。
4. 実務での注意点
- 保険内容に注視を:売主が手配する保険は最低補償のみの場合が多く、買主が追加補償を求めるケースもあります。
- リスク移転の誤解:多くの取引で誤解されがちですが、到着ではなく「初回運送業者への引渡し」でリスクが移転します。
- 目的地の明確化:CPT同様、引渡しと目的地が不明瞭だと混乱が生じやすいため、契約で明確に定める必要があります。
5. なぜ CIP が選ばれるのか:採用されるケースと理由
複数輸送モードを使う国際取引
CPTと同様に船・空・陸などを組み合わせる取引で、売主が運賃と保険をまとめて手配できる柔軟さが評価されます。
高価な貨物の安全確保
機械装置や精密機器のような高価格商品では、売主提供の保険がリスク管理に有効です。
買主が輸送管理は任せたいが保険対応も不要にしたい場合
買主にとって事務負担が軽減され、手続きが簡略化されます。
信用状(L/C)を利用した取引
売主が保険付きで責任を明確に示せる条件として選ばれることがあります。
6. まとめ
CIPは、売主が運賃及び保険を負担しつつ、リスクは最初の運送業者への引渡しで移転する条件です。複合輸送や高価格貨物、買主の物流負担軽減に適しており、安全性と柔軟性を両立できます。ただし、保険内容の精査とリスクの移転時期には注意が必要です。
まとめ:CIPが選ばれる典型シーン
| ケース | 説明 |
|---|---|
| 複合輸送 | 船・航空・陸路などを組み合わせる際に便利 |
| 高額貨物取引 | 売主側の保険付帯が信頼感を与える |
| 買主負担の軽減 | 輸送・保険の手配を一括売主任せにしたい場合 |
| L/C取引利用時 | 保険の取り扱いが明確になり、信用状条件に適合しやすい |
その他の条件
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