中古車輸出の決済と納車手順|B/L・代金回収・現地通関を解説
中古車を本船へ積み込んでも、海外取引はまだ完了していません。船積み後は、B/Lの内容を確認し、契約に基づいて残金を回収したうえで、買主が現地で輸入通関と車両引取りを行えるように書類を渡します。
特に注意したいのが、残金の着金確認とB/Lの取扱順序です。Sea WaybillやTelex Releaseを早く手配すると、買主がB/L原本を提示せずに車両を引き取れる状態になるため、未回収代金がある取引では慎重に進める必要があります。
本記事は、個人による中古車輸出を3回に分けて解説するシリーズの第3回です。海外バイヤー探しから船積みまでの流れは、次の記事もあわせてご覧ください。
船積み後から中古車を納車するまでの流れ
- 予定船への船積み完了を確認する
- B/Lの正式発行内容を確認する
- 契約に基づいて残金を請求する
- 銀行口座への着金額と送金者名義を確認する
- B/Lの発行・引渡方法を確定する
- 買主へ船積書類を送付する
- 買主が現地で輸入申告と税金の支払いを行う
- D/Oを取得して港から車両を引き取る
- 現地登録または購入者への納車を行う
- 到着時の車両状態を確認する
- クレームや輸送事故があれば期限内に対応する
- リサイクル料金の取戻しと書類保存を行う
船積み後は、日本側の輸出者だけで完結する作業ではありません。買主、現地通関業者、船会社の現地代理店、銀行、保険会社などと情報を共有しながら進めます。
船積み完了と到着予定日を買主へ連絡する
税関から輸出許可が出ても、予定船への積載が完了したとは限りません。船の遅延、積み残し、寄港中止、航路変更などが発生することがあるため、フォワーダーまたは船会社から実際の船積み完了を確認します。
船積み後は、買主へ次の情報を伝えます。
- 船名と航海番号
- 出港港と到着港
- 実際の出港日
- 到着予定日
- B/L番号
- 車名、型式、車台番号
- 船会社または現地代理店
- 到着前に準備する書類と費用
到着予定日は確定日ではありません。天候、港湾混雑、積み替え、税関審査などで変わる可能性があるため、買主にはETA(到着予定日)として伝えます。
B/Lの正式発行内容を確認する
B/Lドラフトを承認すると、船会社またはフォワーダーから正式なB/Lが発行されます。発行後の訂正には時間や費用がかかるため、次の項目を再度確認します。
- Shipper
- Consignee
- Notify Party
- 船名と航海番号
- Port of Loading
- Port of Discharge
- 車名、型式、車台番号、数量
- Freight PrepaidまたはFreight Collect
- Original B/Lの発行部数
Consigneeは貨物の受取人、Notify Partyは到着通知を受ける相手です。詳しくは「Notify Partyとは誰を書く?Consigneeとの違いを初心者向けに解説」をご覧ください。
B/Lの確認方法は「B/L draft確認で必ず見る5項目|Bill of Ladingの基本と実務チェックポイント解説」で整理しています。
B/Lの種類によって車両の引取条件が変わる
| 書類・取扱い | 車両引取りの基本 | 売主側の注意点 |
|---|---|---|
| Original B/L | 原則として原本を船会社へ提出する | 原本を保持している間は貨物引渡しを管理しやすい |
| Telex Release | 船積地で原本を回収し、現地へ引渡指示を送る | 手配後は原本による貨物管理ができなくなる |
| Sea Waybill | 記名されたConsigneeの確認により引き渡す | 最初からB/L原本で貨物を止められない |
| Express B/L | 船会社の運用に従い原本なしで引き渡す | 名称や条件が船会社ごとに異なる |
各書類の違いは「B/L一覧|Original・Sea Waybill・Express・Telex Releaseの違い」で比較しています。
残金回収前にTelex Releaseを依頼しない
Telex Releaseでは、日本側でOriginal B/Lを船会社へ返却し、現地代理店へ貨物を引き渡せる旨を通知します。買主は原本の到着を待たずに車両を引き取れますが、売主がB/L原本を保持して代金回収を促す機能は失われます。
T/T送金の残金が残っている場合は、原則として銀行口座への着金を確認してからTelex Releaseを依頼します。送金控えの画像だけで判断してはいけません。
詳しくは「Telex Release(元地回収)とは?Original B/Lとの違いや選択理由とメリットを比較」をご覧ください。
Sea Waybillは信用関係を前提に使用する
Sea Waybillは有価証券ではなく、原本の提示を前提とせずに記名されたConsigneeへ貨物を引き渡す運送書類です。継続取引があり、代金回収の不安が少ない相手には便利ですが、新規取引や残金がある案件では慎重に判断します。
詳しくは「Sea Waybillとは何か|Original B/L不要になる仕組みを実務から整理」をご覧ください。
契約条件に基づいて残金を回収する

T/T送金では、全額前払い、一部前払いと船積み後の残金払い、後払いなど、契約で定めた時期に買主が代金を送金します。
初回取引では、契約時に前金を受け取り、船積み後にB/Lコピーや輸出許可書を提示して残金を回収する方法が考えられます。ただし、残金回収前にTelex ReleaseやSea Waybillを確定すると、代金未回収のまま車両を引き取られる可能性があります。
着金確認で見る項目
- 受取銀行口座へ実際に入金されているか
- 送金者名義が契約者と一致するか
- 契約通貨と入金通貨が一致するか
- 銀行手数料控除後の金額が不足していないか
- インボイス番号や送金目的を確認できるか
海外送金では、送金銀行、中継銀行、受取銀行の手数料が差し引かれる場合があります。契約金額より不足しているときは、差額の送金または次回取引への充当方法を合意してから、貨物引渡しの手続きを進めます。
決済方法は「貿易決済の方法|銀行送金・前払い・後払い・L/Cの違いとリスク管理」でも比較しています。
海外送金の着金が遅いときに確認すること
買主から「送金した」と連絡を受けても、日本側の口座へ直ちに入金されるとは限りません。中継銀行を経由する場合や、銀行による受取人情報・送金目的の確認が行われる場合があり、着金まで数営業日を要することがあります。
送金完了画面や送金控えは、買主が送金手続きを行ったことを示す資料ですが、売主の口座へ着金したことを証明するものではありません。B/L原本の発送やTelex Releaseは、実際の着金確認後に行います。
着金が遅れている場合は、買主に送金銀行へ問い合わせてもらい、次の情報を提出してもらいます。
- MT103またはpacs.008などの送金情報
- UETRなどの送金追跡番号
- 送金日、金額、通貨
- 送金者名義
- 受取人名義と口座番号
- 受取銀行のSWIFT・BICコード
- 送金手数料の負担区分
受け取った情報を、契約書やインボイスに記載した銀行情報と照合します。UETRなどの追跡情報がある場合は、日本側の受取銀行へ提示して送金状況を確認します。
関連記事「SWIFT国際送金の着金が遅い理由とは?よくある原因と実務対応を解説」と「SWIFT MT103 単一顧客送金のためのSWIFTメッセージ」も参考になります。
買主へ船積書類を送る

残金の着金とB/Lの取扱方法を確認したら、買主または現地通関業者へ必要書類を送付します。
| 書類 | 主な用途 |
|---|---|
| Commercial Invoice | 輸入価格、売主・買主、車両情報の確認 |
| Packing List | 数量、重量、寸法の確認 |
| B/LまたはSea Waybill | 海上輸送と貨物引取りの手続き |
| 輸出抹消関係書類 | 日本で登録を抹消したことの確認 |
| 輸出許可書 | 日本から正式に輸出されたことの確認 |
| 船積前検査証明書 | 輸入国が検査を要求する場合に使用 |
| 車両写真・検査表 | 船積み前の車両状態の確認 |
書類全体の役割は「貿易で必要な書類一覧|インボイス・パッキングリスト・B/L・AWBの役割」で解説しています。
B/L原本は追跡できる国際宅配便で送る
Original B/Lなどの重要な原本書類を海外へ送る場合は、普通郵便ではなく、追跡と配達確認ができる国際宅配便を利用します。
DHLやFedExなどのクーリエでは、発送時にトラッキングナンバーが発行されます。発送後は買主と現地通関業者へ番号を共有し、車両が目的港へ到着する前に書類を受領できるか確認します。
原本発送前の確認事項
- 残金が銀行口座へ着金している
- B/Lの記載内容に誤りがない
- Original B/Lの必要部数を確認した
- 受取人の正式な氏名・法人名を確認した
- 住所、郵便番号、電話番号を確認した
- 発送前にすべての書類をスキャンした
- 発送書類の種類と部数を記録した
原本は水濡れや折れを防げる封筒へ入れ、発送日、書類一覧、追跡番号を取引記録として保存します。追跡画面が配達済みになった後も、買主へ実際の受領を確認してください。
Telex ReleaseやSea Waybillを利用する取引では、B/L原本の国際発送が不要になる場合があります。どの方法を使用するかは、残金回収状況と買主との信用関係を踏まえて決定します。
現地で輸入通関を行う
中古車が目的港へ到着した後は、買主または現地通関業者が輸入申告を行います。必要書類、関税、付加価値税、検査、登録条件は国によって異なります。
- 船会社からArrival Noticeを受け取る
- 輸入申告書と船積書類を提出する
- 関税、税金、港湾費用を支払う
- 必要な車両検査や税関検査を受ける
- 船会社または代理店からD/Oを取得する
- 港またはヤードから車両を引き取る
- 現地制度に従って登録・ナンバー取得を行う
D/OはDelivery Orderの略で、船会社が貨物の引渡しを認めるための書類または電子的な指示です。B/Lに関する処理が終わっていても、海上運賃や現地費用が未払いの場合はD/Oが発行されないことがあります。
インコタームズで納品完了地点を確認する
目的港へ到着したことと、購入者への納車が完了したことは同じではありません。売主の引渡義務がどこで完了するかは、売買契約とインコタームズで確認します。
| 条件 | 売主の主な役割 | 現地輸入通関 |
|---|---|---|
| FOB | 日本の輸出港で本船へ積み込むまで | 買主 |
| CFR | 目的港までの海上運賃を手配・負担 | 買主 |
| CIF | 目的港までの海上運賃と所定の保険を手配 | 買主 |
| DAP | 指定された現地場所まで輸送する | 原則として買主 |
| DDP | 原則として輸入通関・関税まで売主が負担する | 売主 |
CFRやCIFでは売主が目的港までの海上運賃を負担しますが、現地の輸入通関や関税まで売主が負担する条件ではありません。
また、個人や小規模事業者がDDPを選ぶと、現地で輸入者になれない、税務登録が必要になる、予想外の関税や保管料を負担するといった問題が生じる可能性があります。
基本は「インコタームズとは|FOB・CIF・DAPの違いを初心者向けに解説」、物流リスクを含めた比較は「FOB・CIF・DAPの違いを徹底解説|2026年物流リスク下での費用負担とリスク移転の急所」をご覧ください。
港からの引取りと納車完了を確認する
買主が車両を港から引き取ったら、次の内容を報告してもらいます。
- 車両を引き取った日
- 車台番号
- 到着時の外装・内装写真
- エンジン始動の可否
- 輸送中の傷や破損の有無
- 現地登録または購入者への納車予定
買主が中古車販売店の場合、港から引き取った時点を納品完了とするのか、販売店への搬入または最終購入者への納車まで確認するのかを、契約時に決めておきます。
現状有姿でも既知の不具合は開示する
中古車には、年式や走行距離に応じた傷、汚れ、摩耗、経年劣化があります。そのため、売買契約書に現状有姿(As is condition)で販売することを記載する方法があります。
ただし、As isと記載するだけで、売主がすべての責任を免れるわけではありません。契約で示した車種、年式、走行距離、修復歴、装備が実際の車両と異なる場合や、把握していた重大な不具合を開示していなかった場合は、クレームや契約上の問題になる可能性があります。
現状有姿で販売するときは、次の資料を契約書と関連付けて保存します。
- 車両検査表
- 前後左右、下回り、エンジンルームの写真
- 既存の傷、へこみ、錆の写真
- 走行距離と警告灯の写真
- エンジン始動時の動画
- 修復歴と交換部品の説明
- 既知の不具合一覧
- 買主が車両状態を承認した記録
現状有姿条項は、船積み前から存在していた経年劣化と、輸送中に新たに発生した損傷を区別するために使用します。高額取引や契約準拠法が不明確な場合は、専門家による契約書確認も検討してください。
輸送中の損傷やクレームに対応する
現地到着後に傷、へこみ、ガラス割れ、部品欠品、エンジン不調などを指摘された場合は、すぐに責任を認めず、船積み前と到着時の資料を比較します。
買主に提出を求める資料
- 車両全体と損傷箇所の写真・動画
- 港から引き取った日時
- 車台番号が分かる写真
- 船会社やヤードの受取記録
- 現地検査会社や修理工場の見積書
- コンテナや固定状態が分かる資料
海上保険を付けている場合は、保険証券の通知期限を確認し、保険会社または代理店へ速やかに連絡します。保険会社の確認前に車両を修理・廃棄すると、事故原因や損害額を確認できなくなる場合があります。
船積み前の写真ですでに確認できる傷や、買主へ開示した経年劣化は、輸送事故と区別します。クレーム受付期限、必要資料、対象外となる状態を売買契約書へ記載しておきましょう。
港湾保管料や超過費用を防ぐ
車両到着後に買主が輸入通関や引取りを遅らせると、ヤード保管料、デマレージ、ディテンションなどの費用が発生する場合があります。
CFRやCIFは目的港までの海上運賃を売主が負担する条件ですが、目的港で発生するすべての費用を売主が負担するという意味ではありません。到着港側で発生する費用と負担者を、見積書と契約書へ明記します。
費用の全体像は「貿易でかかる費用一覧|商品代金以外に必要な送料・関税・保険・通関費用」をご覧ください。
リサイクル料金の取戻しを申請する
リサイクル料金が預託されている車両を中古車として輸出した場合は、所定の手続きによりリサイクル料金の取戻しを申請できます。
申請期間は、車両を輸出した日から2年間です。一般的には次の資料を使用します。
- 輸出抹消仮登録証明書などの写し
- 車台番号が記載された輸出許可書の写し
- 車台番号が記載されたB/Lなどの写し
- 所定の取戻し申請書
パソコン申請には自動車リサイクルシステムの事業者登録が必要です。個人で1台を輸出する場合は、一般申請の手続きを確認してください。
輸出・決済関係書類を保存する
中古車輸出を事業として行う場合は、取引ごとに次の書類とデータを整理して保存します。
- 売買契約書
- Commercial InvoiceとPacking List
- 輸出許可書
- B/L、Sea Waybill、Telex Releaseの記録
- 輸出抹消関係書類
- 銀行送金・着金記録
- 買主とのメールやチャット
- 車両写真、動画、検査表
- クレーム・保険対応記録
業として輸出する者は、税関上の帳簿、契約書、仕入書、包装明細書、電子取引記録などを原則として輸出許可の日の翌日から5年間保存します。
課税事業者が消費税の輸出免税を適用する場合は、輸出許可書など輸出の事実を証明する書類を原則7年間保存する必要があります。税務処理は事業形態によって異なるため、税務署または税理士へ確認してください。
中古車輸出の取引完了チェックリスト

- 実際の船積み完了と到着予定日を確認した
- B/Lの車台番号、港名、荷受人情報を確認した
- 残金を銀行口座への着金で確認した
- 着金前にTelex Releaseを依頼していない
- 買主へ必要な船積書類を送付した
- 原本書類の追跡番号を共有した
- 現地通関業者が書類を受領した
- Arrival NoticeとD/Oの手続きを確認した
- 買主が関税・港湾費用を支払った
- 港からの車両引取りを確認した
- 到着時の写真と車両状態を受領した
- クレームの有無を期限内に確認した
- リサイクル料金の取戻しを申請した
- 契約・輸出・決済関係書類を保存した
まとめ|残金回収とB/Lの順番を守って取引を完了する
中古車輸出では、本船へ積み込んだだけで取引が完了するわけではありません。船積み後は、B/Lの内容を確認し、契約どおりの残金が銀行口座へ着金してから、買主が車両を引き取るための手続きを進めます。
Telex ReleaseやSea Waybillは、B/L原本の到着を待たずに車両を引き取れる便利な方法ですが、売主が原本を使って貨物引渡しを管理できなくなります。新規取引や残金がある案件では、必ず着金確認との順番を守りましょう。
現地到着後は、輸入通関、関税の支払い、D/O取得、港からの引取り、車両状態の確認まで追跡します。最後に、クレーム期限、リサイクル料金の取戻し、輸出・決済書類の保存まで終えることで、中古車輸出の一連の取引が完了します。
参考外部リンク
- ジェトロ|貿易実務の流れ-輸出
貨物、代金、船積書類が並行して動く輸出取引の全体像を確認できます。 - ジェトロ|サレンダードB/LとSea Waybillの違い
B/L原本の有無と貨物引渡し方法の違いを確認できます。 - ジェトロ|輸出代金の請求方法と送金に関する銀行諸費用
T/T送金と銀行手数料の考え方を確認できます。 - SWIFT|UETRとは
国際送金を追跡するための固有番号UETRの仕組みを確認できます。 - Ocean Network Express|B/L Terms
Original B/LとSea Waybillによる貨物引渡し条件を確認できます。 - 国際商業会議所|Incoterms 2020
費用、危険負担、輸出入通関の役割を定める公式ルールを確認できます。 - ICC Academy|CFRとCIFの違い
CFR・CIFの海上運賃、保険、危険移転時点を確認できます。 - ICC Academy|DAPとDDPの違い
現地輸入通関と関税負担の違いを確認できます。 - 自動車リサイクル促進センター|自動車を海外に持ち出したとき
リサイクル料金の取戻し期間と申請方法を確認できます。 - 税関|輸出者に対する帳簿書類の保存義務
業として輸出する場合の帳簿、書類、電子記録の保存期間を確認できます。 - 国税庁|輸出取引の免税
消費税の輸出免税と証明書類の保存について確認できます。 - DHL|国際配送の追跡
B/L原本などを国際宅配便で発送した際の追跡に利用できます。 - FedEx|国際貨物の追跡
追跡番号による配達状況と配達証明を確認できます。 - UNCITRAL|国際物品売買契約に関する国際連合条約
国際売買契約における売主・買主の義務を定めるCISGの概要を確認できます。