個人で中古車を輸出する始め方|海外バイヤーの探し方と契約手順
個人でも、日本から中古車を海外へ輸出することは可能です。ただし、中古車輸出は車両を先に購入してから買主を探すのではなく、輸出先の規制、海外バイヤーの信用、車両条件、費用負担、決済方法を確認してから仕入れることが重要です。
本記事は、中古車輸出を3回に分けて解説するシリーズの第1回です。海外の顧客を見つけ、見積書と売買契約書を作成し、前金の着金を確認するまでの流れを整理します。輸出抹消、通関、船積みは第2記事、残金回収と現地納品は第3記事で扱います。
個人でも中古車を海外へ輸出できるのか
自分で使用していた車を売却する場合と、輸出販売を目的に中古車を仕入れる場合では、必要な許可が異なります。千葉県警察の案内では、自己使用していた物や自己使用のために購入した未使用品を売却するだけなら、通常は古物商許可を必要としません。一方、転売目的で中古品を仕入れる場合は古物商許可が必要です。
| 輸出するケース | 古物商許可の考え方 |
|---|---|
| 自分が使用していた車を売却する | 通常は不要です。 |
| 自己使用のために購入した車を売却する | 通常は不要です。 |
| 海外へ転売する目的で中古車を仕入れる | 必要です。 |
| オークションなどから継続的に仕入れて輸出する | 事業として許可、取引記録、相手方確認などが必要です。 |
古物商許可は、主たる営業所を管轄する警察署を通じて申請します。警視庁の案内では新規申請手数料は19,000円です。ホームページを使って中古車を販売する場合は、許可番号等の表示やURLに関する届出も確認してください。
中古車輸出は顧客探しから始める
中古車輸出で最初に行うことは、車両の仕入れではなく、輸出先と顧客候補を決めることです。国によって中古車の輸入可否、車齢、ハンドル位置、排ガス基準、安全基準、船積前検査、輸入者資格が異なります。先に車を仕入れると、輸入できない車両を抱えるおそれがあります。
一般的な貿易の流れについては、関連記事「【2026年版】初めての貿易実務ガイド|輸出・輸入の流れと手続きを解説」でも整理しています。
輸出先を決めるときの確認項目
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 中古車の輸入可否 | 商業目的または個人名義で中古車を輸入できるか |
| 車齢制限 | 製造年または初度登録から何年以内か |
| ハンドル位置 | 日本の右ハンドル車を輸入・登録できるか |
| 検査・認証 | 船積前検査、排ガス、安全基準への適合が必要か |
| 輸入者資格 | 輸入ライセンスや現地通関業者が必要か |
| 税金と到着港 | 関税、付加価値税、港湾費用、登録費用を誰が負担するか |
ジェトロは、中古車を原則輸入できない国や、右ハンドル車を登録できない国の例を公開しています。規制は変更されるため、ジェトロの国別情報だけで確定せず、輸入国の税関・運輸当局と現地通関業者にも確認します。
海外の顧客・バイヤーを見つける方法

顧客候補は、現地の中古車輸入業者、自動車販売店、整備事業者、法人需要者、個人購入者などです。検索エンジンや地図サービスで現地企業を探すほか、展示会、業界団体、紹介、自社サイト、SNS、国際ビジネスマッチングサービスを利用します。
ジェトロの「JETRO e-Venue」は、海外のビジネス案件を検索し、自社の案件も発信できるマッチングサービスです。個人でも登録申請はできますが、ビジネス利用を目的としているため、開業届を提出して事業を行う個人事業主の利用が想定されています。
顧客開拓の方法は、関連記事「【2026年版】海外の取引先の見つけ方|輸出の買い手・輸入の仕入先を探す方法」も参考になります。
最初の提案で伝える情報
- 取り扱えるメーカー、車種、年式、価格帯
- 車両写真、走行距離、修復歴、検査表の有無
- 日本側の出港候補港
- FOB、CFR、CIFなど対応できる取引条件
- 前金と残金の支払条件
- 問い合わせへの対応言語
言語と時差を考慮して商談する
海外バイヤーとの連絡は英語が中心です。翻訳ツールは、メールやチャットの作成補助として活用できます。ただし、車台番号、金額、通貨、港名、支払期限、インコタームズなどの重要事項は、機械翻訳だけで判断せず、短く明確な英文と書類で再確認します。
WhatsAppなどのチャットアプリを指定される場合もありますが、チャットだけで取引条件を確定させないことが重要です。電話やビデオ通話で合意した内容も、終了後にメール、見積書、プロフォーマインボイス、売買契約書へ反映します。
日程調整では「2026年8月10日 15:00 JST」のように、日付、時刻、タイムゾーンを併記すると認識違いを防げます。
海外バイヤーの信用と輸入資格を確認する
問い合わせを受けても、相手の確認が終わる前に仕入れや船便予約を進めてはいけません。取引先の選定では、実在性、輸入資格、支払能力、輸入実績、送金名義を確認します。
- 正式な氏名または法人名、住所、電話番号
- 会社登記、営業許可、輸入ライセンス
- 担当者の氏名、役職、会社ドメインのメール
- 現地通関業者と到着希望港
- 契約者、送金者、輸入者の名義
- 過去の輸入実績や販売店舗の確認資料
契約者と送金者が異なる場合や、第三国の口座から支払うと言われた場合は、関係性と理由を確認します。また、仕向国、経由地、最終需要者によっては経済制裁や輸出規制の対象になるため、契約前に経済産業省の安全保障貿易管理情報も確認します。
顧客の希望条件を注文仕様として整理する
顧客から車種だけを聞いて仕入れるのではなく、年式、走行距離、排気量、燃料、駆動方式、色、修復歴、予算、到着港、希望時期を一覧化します。条件に合う車がない場合に備え、年式や色をどこまで変更できるかという代替条件も確認します。
条件は口頭だけで管理せず、メールや注文仕様書として残します。車両が決まった後は、写真、検査表、傷や不具合の説明を提示し、買主の承認を記録します。
見積書は車両価格以外の費用も分ける
中古車輸出の見積りには、車両価格のほか、仕入手数料、国内陸送、整備、検査、輸出抹消、通関、港湾費用、海上運賃、保険、送金手数料などが含まれます。総額だけを提示すると、後から費用負担を巡るトラブルになりやすいため、内訳と含まれない費用を明記します。
見積書には通貨、見積有効期限、出港港、目的港、予定船積時期、決済条件、インコタームズを記載します。海上運賃や為替は変動するため、有効期限を設定してください。関連する費用の考え方は「貿易でかかる費用一覧|商品代金以外に必要な送料・関税・保険・通関費用」で確認できます。
インコタームズで費用と危険負担を決める
インコタームズは、売主と買主の輸送、費用、輸出入通関、危険負担を整理する国際ルールです。支払時期、所有権の移転、契約解除、品質保証までは決めないため、これらは売買契約書で別に定めます。
| 条件 | 海上運賃 | 海上保険 | 危険負担が移る時点 |
|---|---|---|---|
| FOB | 買主 | 買主 | 輸出港で本船に積み込まれた時点 |
| CFR | 売主 | 買主 | 輸出港で本船に積み込まれた時点 |
| CIF | 売主 | 売主 | 輸出港で本船に積み込まれた時点 |
FOB Yokohama Portの例
FOBでは、売主が輸出通関を行い、買主が指定した本船に中古車を積み込むまでを負担します。本船への積込み後は、海上運賃、保険、現地輸入通関、関税などを買主が負担します。買主が船便を手配できる場合は、売主の海上運賃の先行負担を抑えられます。
CFR・CIFの例
CFRでは売主が目的港までの海上運賃を手配し、CIFではさらに所定の海上保険も手配します。ただし、どちらも危険負担が目的港で移るわけではありません。中古車が日本の輸出港で本船に積み込まれた時点で、危険負担は買主へ移ります。
コンテナ輸送で、本船積込み前にコンテナターミナルで運送人へ引き渡す場合、ICCはFOBではなくFCAの検討を案内しています。輸送方法に合う条件を、フォワーダーや通関業者と確認してください。詳しくは「インコタームズとは|FOB・CIF・DAPの違いを初心者向けに解説」も参照してください。
売買契約書と前金で仕入れリスクを抑える
車両条件と価格が決まったら、仕入れ前に売買契約を締結します。契約書には、当事者情報、車名、型式、車台番号、年式、走行距離、修復歴、価格、通貨、インコタームズ、港名、支払期限、船積予定、キャンセル条件、クレーム期限、準拠法などを記載します。
書類の流れは「貿易契約の流れ|見積書・注文書・プロフォーマインボイス・売買契約書の基本」、条件の決め方は「貿易の契約条件とは|価格・納期・インコタームズ・支払条件の決め方」で詳しく解説しています。
初回取引では、契約締結後に全額または一定割合の前金を受け取り、銀行口座への着金を確認してから車両を仕入れる方法が基本です。送金明細の画像だけで判断せず、実際の入金額と送金者名義を確認します。決済方法の比較は「貿易決済の方法|銀行送金・前払い・後払い・L/Cの違いとリスク管理」も参考になります。
車両を仕入れる前の最終チェックリスト

- 輸入国で対象車両を輸入・登録できるか
- 古物商許可や事業上の届出が必要か
- 買主、送金者、輸入者の身元と関係を確認したか
- 車両条件と代替条件を文書化したか
- 見積りに含まれる費用と含まれない費用を分けたか
- インコタームズに港名と「Incoterms 2020」を記載したか
- 車両状態、キャンセル、クレーム条件を契約書に入れたか
- 前金の着金を銀行口座で確認したか
まとめ|中古車輸出は車を買う前の準備で決まる
個人が中古車を輸出するときは、先に車両を購入するのではなく、輸出先の規制と海外バイヤーを確認することから始めます。転売目的で仕入れる場合は古物商許可が必要であり、ウェブ販売を行う場合には表示や届出も確認しなければなりません。
商談では、車両条件、費用内訳、インコタームズ、決済時期を文書化します。FOB、CFR、CIFは、費用を負担する場所と危険負担が移る場所が一致しないことがあります。輸送方法に適した条件を選び、売買契約と前金の着金を確認してから仕入れへ進みましょう。
次の第2記事では、車両の仕入れ後に行う検品、輸出抹消、必要書類、通関、RoRo船・コンテナ船への船積みまでを解説します。一般的な輸出手続きについては「初めての輸出手続き|必要書類・通関・出荷までの流れを初心者向けに解説」もご覧ください。
参考外部リンク
- 千葉県警察|古物商・古物市場主許可について
自己使用していた物の売却と、転売目的で仕入れる場合の違いを確認できます。 - 警視庁|古物商許可申請
古物商許可の申請場所、手数料、必要書類を確認できます。 - ジェトロ|貿易の流れ
取引先の選定、契約、輸送、決済までの基本的な流れを確認できます。 - ジェトロ|JETRO e-Venue
海外のビジネス案件や取引候補を探せる国際ビジネスマッチングサービスです。 - ジェトロ|中古車の輸入が制度上困難な国々
中古車の輸入禁止やハンドル位置などの制限例を確認できます。 - ICC|Incoterms 2020 海上・内陸水路輸送規則
FOB、CFR、CIFにおける引渡し、費用、危険負担の基本を確認できます。 - 経済産業省|安全保障貿易管理
輸出先、用途、需要者に応じた輸出規制や許可制度を確認できます。 - 税関|中古自動車の輸出通関手続
輸出抹消仮登録証明書など、中古車の輸出申告で必要になる手続きを確認できます。