HSコードとは何か?全21類の分類一覧と貿易実務での基本的な考え方

HSコードとは何か?全21類の分類一覧と貿易実務での基本的な考え方

HSコードとは何か

HSコード(Harmonized System Code)とは、国際貿易において取引される商品を分類するための世界共通のコード体系です。正式名称は「商品の名称および分類についての統一システム」とされ、世界税関機構(WCO)が管理しています。

現在、200以上の国と地域がこのHSコードを採用しており、輸出入されるほぼすべての商品は、何らかのHSコードに基づいて税関で処理されています。つまり、HSコードは国境を越える物の流れに共通言語を与える仕組みといえます。

貿易実務では、HSコードは関税率を決めるための番号として認識されがちですが、実際にはそれだけではありません。輸入規制の有無、必要な許認可、統計上の分類、さらには原産地規則の判断など、多くの制度がHSコードを起点として設計されています。

そのため、HSコードは単なる事務処理上のコードではなく、貿易取引全体の前提条件として機能しています。商品を輸出入する以上、必ず向き合うことになる基礎ルールがHSコードです。

HSコードの基本構造と考え方

HSコードは階層構造になっており、上位から下位へと段階的に商品を絞り込む仕組みになっています。

国際的に共通なのは以下の6桁です。

・最初の2桁:類(Chapter)
・最初の4桁:項(Heading)
・最初の6桁:号(Subheading)

この6桁までは世界共通で、日本を含む各国は、さらに国内管理用として細分コードを追加しています。日本の場合は9桁まで存在し、関税率や統計用途に使われます。

HSコードを理解するうえで重要なのは、いきなり細かい番号を探さないことです。
実務ではまず「この商品はどの類(Chapter)に属するのか」を判断し、その後に項、号へと段階的に絞り込んでいきます。

また、HSコードの分類は、必ずしも商品名や商業上の呼び方に一致しません。
分類の基準となるのは、以下のような要素です。

・商品の主たる性質
・素材や原材料
・用途や機能
・加工の度合い

同じように見える商品でも、素材が違えばHSコードが変わることがありますし、完成品か部品かによっても分類が分かれます。この「何を基準に分類されているのか」を意識することが、HSコード調査の基本的な考え方になります。

HSコードが実務で重要な理由

HSコードは、輸出入の現場において非常に多くの判断の起点になります。
具体的には、次のような実務項目に直結しています。

・適用される関税率
・輸入規制や禁止品目の判定
・必要な許可、承認、届出の有無
・通関書類の記載内容
・貿易統計上の処理

HSコードの判断を誤ると、本来不要な関税を支払ってしまったり、逆に不足として後から追徴される可能性があります。また、規制品目に該当していることに気づかず、通関で貨物が止まるケースも珍しくありません。

特に近年は、安全基準、環境規制、医療・化学分野の規制などが強化されており、HSコードと法規制の結びつきは年々強くなっています。そのため、HSコードの確認は単なる形式作業ではなく、リスク管理の一環として重要視されています。

実務では、HSコードを完璧に暗記する必要はありません。しかし、どのカテゴリに属する商品なのか、どの観点で分類されるのかを理解しているかどうかで、調査のスピードと正確性は大きく変わります。

このINDEX記事では、その入口として全体像とカテゴリの考え方を整理しています。

HSコードとINVOICE(インボイス)の関係

HSコードは、INVOICE(インボイス/商業送り状)を作成する際に必ず意識すべき重要項目です。
INVOICEには通常、品名、数量、単価、金額、原産国などが記載されますが、実務ではあわせてHSコードの記載が求められる場面が多くあります。

特に以下のようなケースでは、INVOICE上のHSコードが通関判断の起点になります。

・輸入通関時に関税率を迅速に判定する場合
・輸入規制や許可要否を事前に確認する場合
・原産地規則やEPA・FTAの適用可否を判断する場合
・税関やフォワーダーが事前審査を行う場合

INVOICEに記載されるHSコードは、最終的な税関判断と完全に一致している必要はありませんが、商品内容と大きく乖離していると、追加確認や修正を求められる原因になります。

そのため、INVOICEを作成する段階で
「この商品はHSコード上、どのカテゴリに属するのか」
を把握しておくことが重要です。

HSコード 全21類のカテゴリ一覧と役割

以下はHSコードを構成する全21類の概要です。
ここでは細部よりも「どのような商品群か」をつかむことを目的としています。

部番号主なカテゴリ名称対象となる主な商品・役割記事リンク
第一部生きた動物および動物性生産品生きた動物、肉類、魚介類、乳製品など。検疫や動物由来規制と密接に関係します。動物・畜産品に関する分類
第二部植物性生産品穀物、野菜、果実、豆類などの農産物。植物検疫の対象になりやすい分野です。(準備中)
第三部動物性・植物性の油脂食用油、工業用油脂、ワックス類など。用途や加工度合いで分類が分かれます。(準備中)
第四部食料品、飲料、たばこ加工食品、飲料、アルコール、たばこ製品。食品衛生法との関係が重要です。(準備中)
第五部鉱物性生産品鉱石、石炭、原油、天然ガスなど。資源系商材が中心です。(準備中)
第六部化学工業の生産品化学薬品、医薬品、肥料、洗浄剤など。成分説明が分類の鍵になります。(準備中)
第七部プラスチックおよびその製品樹脂原料、プラスチック製品。素材ベースでの分類が基本です。(準備中)
第八部ゴムおよびその製品天然ゴム、合成ゴム、タイヤ、ゴム製品全般。用途と形状で判断します。(準備中)
第九部木材およびその製品原木、製材品、木製品、木炭など。加工度合いが重要な要素です。(準備中)
第十部パルプ、紙、紙製品紙、段ボール、書籍、印刷物。印刷の有無で分類が変わる場合があります。(準備中)
第十一部紡織用繊維およびその製品綿、化学繊維、糸、生地。原料段階の繊維製品が中心です。(準備中)
第十二部繊維製品衣類、ニット製品、布製品。素材比率や製造工程が重要です。(準備中)
第十三部その他の繊維製品フェルト、不織布、ロープ、網など。特殊用途の繊維製品が含まれます。(準備中)
第十四部植物性編物材料などかご製品、天然素材の編物材料など。限定的な商材が多いカテゴリです。(準備中)
第十五部卑金属およびその製品鉄鋼、アルミ、銅などの金属素材および加工品。形状と加工度が判断軸です。(準備中)
第十六部機械類および電気機器機械装置、家電、電子部品。完成品か部品かで分類が大きく変わります。(準備中)
第十七部輸送用機器自動車、バイク、航空機、船舶および部品。輸送用途が判断基準になります。(準備中)
第十八部精密機器、医療機器計測機器、光学機器、医療用装置。用途説明が不可欠な分野です。(準備中)
第十九部武器および弾薬軍需関連製品。輸出入規制が非常に厳格なカテゴリです。(準備中)
第二十部雑製品家具、玩具、スポーツ用品、日用品などの完成品。実務でよく登場します。(準備中)
第二十一部美術品、収集品、骨董品絵画、美術品、骨董品など。文化財規制との関係が重要です。(準備中)

どのカテゴリを見るべきか?フローチャート

以下は、商品内容から最初に確認すべきカテゴリを判断するための簡易フローです。

HSコード どのカテゴリを見るべきか(簡易フロー) 商品内容から最初に確認すべき「類(Chapter)」を絞り込むための入口 1. 食品・農産物・動植物(生鮮/加工食品含む)ですか? 例:肉・魚・野菜・果実・穀物・加工食品・生体 はい 第1類〜第4類 を確認 食品系は検疫・食品規制も要注意 いいえ 次の質問へ進む 素材・用途で順に絞り込み 2. 鉱物・燃料・化学品・医薬品に該当しますか? 例:原油/燃料、肥料、洗浄剤、薬品、化学原料 はい 第5類〜第6類 を確認 成分・用途説明が分類の鍵 いいえ 次の質問へ進む まずは大分類を確実に 3. 主素材がプラスチック・ゴム・皮革・木材・紙ですか? 例:樹脂製品、ゴム製品、革小物、木工品、紙製品 はい 第7類〜第10類 を確認 素材違いでコードが変わりやすい いいえ 次の質問へ進む 素材の主たる構成で判断 4. 繊維原料・生地・衣類など繊維系ですか? 例:糸、生地、衣服、帽子、布製品 はい 第11類〜第13類 を確認 素材比率や工程で分岐しやすい いいえ 次の質問へ進む 完成品でも素材確認が先 5. 金属素材または金属加工品ですか? 例:鉄鋼材、アルミ形材、ボルト、金属製構造材 はい 第15類 を確認 形状・加工度合いがポイント いいえ 次の質問へ進む 金属部品でも主用途を確認 6. 機械・電気製品・電子部品ですか? 例:機械装置、家電、制御盤、モーター、基板、部品 はい 第16類 を確認 完成品か部品かで分岐しやすい いいえ 次の質問へ進む 機能説明があると調査が早い 7. 輸送用機器(車・バイク・航空機・船舶)または部品ですか? 例:完成車、二輪、船体、車両部品、航空部品 はい 第17類 を確認 完成品/部品の線引きに注意 いいえ 次の質問へ進む 該当しない場合は次へ 8. 精密機器・測定機器・医療機器ですか? 例:計測器、光学機器、検査装置、医療用装置 はい 第18類 を確認 用途の説明が分類の決め手 いいえ 次の質問へ進む 完成品カテゴリを確認 9. 家具・玩具・日用品などの完成品ですか? 例:家具、スポーツ用品、文房具、生活雑貨 はい 第20類 を確認 他に当てはまらない完成品が多い 第14類・第19類・第21類 を個別確認 特殊素材/武器/美術品など該当の可能性 補足:このフローは入口です。最終判断は「品名・材質・用途・加工度合い」を揃えて各類の解説記事で絞り込みます。

まとめ

HSコードは、国際貿易において商品を分類するための世界共通ルールであり、輸出入実務のあらゆる場面に関わる基礎要素です。関税率の決定だけでなく、輸入規制や許認可、通関書類の作成、貿易統計に至るまで、多くの制度がHSコードを起点として設計されています。

HSコードは階層構造になっており、実務ではまず「どの類(Chapter)に属する商品か」を判断することが重要です。いきなり細かい番号を探すのではなく、素材、用途、加工度合いといった観点から大枠のカテゴリを見極めることで、分類作業は格段に進めやすくなります。

また、HSコードの判断を誤ると、関税の過不足、通関遅延、規制対応漏れといった実務上のリスクが発生する可能性があります。そのため、HSコードは形式的な入力項目ではなく、取引リスクを左右する重要な判断項目として扱う必要があります。

本記事では、HSコードの基本的な考え方と全体像を整理し、どのカテゴリから確認すべきかを判断するための入口を示しました。
この後は、該当するカテゴリの記事を順に確認し、具体的な商品例や分類時の注意点を押さえていくことで、実務に耐えるHSコード理解につながります。

まずは自分の扱う商品が、どのカテゴリに属するのかを意識するところから始めてみてください。

HSコード調査に役立つ外部参考リンク

HSコードは国際的な制度であるため、一次情報や公的機関の資料を参照することが非常に重要です。
以下は、HSコードを調査・確認する際に信頼性が高く、実務でもよく参照される公式サイトです。

・世界税関機構(WCO)
 HSコード制度の策定・管理機関です。HSの基本構造や改正(HS2022など)の概要を確認できます。
 https://www.wcoomd.org/

・日本税関(税関ホームページ)
 日本国内で使用されているHSコード、関税制度、通関手続き全般の公式情報です。
 https://www.customs.go.jp/

・実行関税率表(日本)
 日本の輸入関税率や国内細分コード(9桁)を確認するための基本資料です。
 https://www.customs.go.jp/tariff/

・税関 事前教示制度(品目分類)
 HSコードの判断に迷う場合、税関に公式な見解を求めることができる制度です。
 https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/

・JETRO(日本貿易振興機構)
 HSコードを含む貿易実務全般の解説、国別制度、輸出入ガイドが充実しています。
 https://www.jetro.go.jp/

2025年12月18日 | 2025年12月19日