海上コンテナ輸送では、貨物をコンテナに積めば、そのまま船に載せられるわけではありません。国際海上輸出では、船積み前にコンテナの総重量を確認し、船会社やターミナル側へ伝える「VGM」という重要なルールがあります。
VGMとは、Verified Gross Mass の略で、日本語では「確定総重量」または「検証済み総重量」と呼ばれます。簡単にいえば、貨物・梱包材・パレット・固定材・コンテナ自体の重量まで含めた、実入りコンテナ1本あたりの正しい総重量のことです。
VGMは、船の安全運航や積付計画に関わる重要な情報です。未提出の場合、原則としてそのコンテナは本船に積み込むことができません。輸出実務では、VGMの意味だけでなく、誰が申告するのか、いつまでに出すのか、費用はかかるのかまで確認しておくことが大切です。
VGMとは何か
VGMとは、海上輸送される実入りコンテナの総重量を、所定の方法で確認した重量情報のことです。単なる「貨物重量」ではなく、コンテナに積み込まれた状態での総重量を指します。
たとえば、貨物そのものの重量が18,000kgであっても、段ボール、木箱、パレット、ラッシング材、緩衝材、さらにコンテナ自体の自重を含めると、実際に船へ載せる重量はそれより重くなります。この最終的な総重量を確認して申告するのがVGMです。
VGMの目的は、コンテナ重量の誤申告による事故や荷崩れ、船舶の安定性低下、ターミナル作業時の危険を防ぐことにあります。重量情報は、船会社やターミナルが積付計画を作成する際の重要な前提になります。
VGMが必要になった背景
海上コンテナは、世界中の港で大量に取り扱われています。船に積み込む際は、どのコンテナをどの位置に置くかを細かく計画します。このとき、コンテナ1本ごとの重量情報が非常に重要になります。
もし実際より軽い重量で申告されていた場合、船上での重量バランスが崩れたり、クレーン作業時に想定外の負荷がかかったりするおそれがあります。また、重いコンテナが不適切な位置に積まれると、荷崩れやコンテナ損傷、作業員の安全リスクにもつながります。
こうした背景から、SOLAS条約の改正により、輸出される実入りコンテナについては、船積み前にVGMを確認し、船会社やターミナル側へ伝えることが求められるようになりました。
SOLAS条約とは
SOLAS条約とは、Safety of Life at Sea の略で、日本語では「海上人命安全条約」と呼ばれます。船舶の構造、設備、運航などを通じて、海上における人命の安全を守るための国際条約です。
VGMが厳格に扱われるのは、単なる書類上の手続きではなく、船舶の安全運航に直結するためです。正しい重量が分からないままコンテナを積み込むと、船のバランスや積付計画に影響する可能性があります。
VGMに含まれる重量
VGMは、コンテナの中に入っている貨物だけの重量ではありません。次のような重量を合算したものです。
- 貨物そのものの重量
- 段ボール、木箱、袋などの梱包材の重量
- パレット、スキッドなどの荷役資材の重量
- ラッシング材、固定材、緩衝材などの重量
- コンテナ自体の自重、いわゆるTare Weight
つまり、VGMは「貨物重量+梱包材・固定材+コンテナ自重」と考えると理解しやすくなります。輸出書類上の貨物重量だけを見て申告すると、VGMとしては不足する可能性があります。
Tare Weight(テアウェイト / コンテナ自重)とは

Tare Weightとは、コンテナ自体の自重のことです。多くのコンテナでは、ドア部分に「TARE」「TARE WT」などの表示があり、kgやlbで重量が記載されています。
方法2でVGMを算出する場合は、貨物や梱包材の重量に、このTare Weightを加える必要があります。ここで注意したいのは、同じ20フィートコンテナ、40フィートコンテナでも、個体ごとにTare Weightが異なる場合があることです。
そのため、想定値だけで処理するのではなく、実際に使用するコンテナのドア表示や、船会社・コンテナ所有者から提供される情報を確認することが大切です。
VGMの確認方法
VGMの確認方法は、大きく分けて2つあります。日本では、届出荷送人または登録確定事業者が、定められた方法によりコンテナの総重量を確定する必要があります。
方法1:シール後の実入りコンテナを計量する
方法1は、貨物を積み込み、ドアを閉め、シールを取り付けた後の「実入りコンテナ」を、トラックスケールなどで計量する方法です。実際に船へ積む状態に近い重量を確認できるため、考え方としては分かりやすい方法です。
ただし、実務上は計量場所の確保、搬入ルート、計量証明の取得、VGMカットまでの時間管理が必要になります。計量後に貨物を追加したり、固定材を変更したりすると重量が変わるため、計量後の内容変更は避ける必要があります。
方法2:個別重量を合算して算出する
方法2は、貨物、梱包材、パレット、固定材などの重量を合計し、そこにコンテナ自重であるTare Weightを加えてVGMを算出する方法です。
この方法では、各重量の根拠が重要になります。貨物重量はインボイスやパッキングリスト、製造記録などで把握し、梱包材やパレットの重量も正確に管理する必要があります。
一見すると簡単に見えますが、複数の商品を混載する場合や、梱包形態が複雑な場合は誤差が出やすくなります。そのため、社内で重量確認の手順を整えておくことが大切です。
方法1と方法2の使い分け
どちらの方法が向いているかは、貨物の性質によっても変わります。バラ貨物、スクラップ、原料など、重量にばらつきが出やすい貨物は、方法1で実入りコンテナを計量する方が管理しやすい場合があります。
一方、製品単位で重量が管理されている貨物、梱包仕様が決まっている貨物、パレット数やケース数から重量を正確に算出できる貨物は、方法2で合算する方が実務に合う場合があります。
ただし、どちらの方法を使う場合でも、船会社・フォワーダー・倉庫会社との役割分担を事前に確認しておくことが重要です。
誰がVGMを申告するのか
VGMの責任主体は、基本的に荷送人です。実務上はフォワーダーや通関業者、倉庫会社が手続きを代行することもありますが、重量情報の正確性を確認する責任は荷送人側に残るケースがあります。
ここで注意したいのは、実際の作業を誰が行うかと、制度上の責任主体が誰かは必ずしも同じではないという点です。輸出者、フォワーダー、倉庫会社、通関業者、船会社など複数の関係者が関わる場合でも、B/L上の荷送人がVGM申告の責任主体として扱われるケースがあります。
日本では、自らコンテナ総重量を確定させる荷送人は「届出荷送人」、荷送人に代わって総重量を確定する者は「登録確定事業者」として、国土交通省への届出または登録が必要とされています。
そのため、輸出前には次の点を確認しておくと安心です。
- VGMを誰が算出するのか
- VGMを誰が船会社へ送信するのか
- 船会社のVGMカットはいつか
- CYカットとの関係はどうなるか
- 誤申告や未申告があった場合の費用負担は誰になるか
VGMの締切はいつまでか|VGMカットとCYカットの違い
VGMで実務上よく問題になるのが、「いつまでに申告すればよいのか」という締切です。海上輸出では、コンテナをターミナルへ搬入する締切としてCYカットがありますが、VGMにはそれとは別に「VGMカット」が設定されることがあります。
VGMカットとは、船会社やターミナル側がVGM情報を受け付ける最終期限のことです。船会社のスケジュール案内では、SIカット、CYカット、VGMカットが別々に表示される場合もあります。
実務では、VGMカットがCYカットと同時刻とは限りません。船会社、航路、港、危険品・冷凍コンテナ・特殊貨物などの条件によって、CYカットより前倒しで設定される場合があります。そのため、ブッキング時にはCYカットだけでなく、VGMカットの時刻も必ず確認しておくことが重要です。
VGMカットを過ぎると、コンテナ自体が搬入済みであっても、本船への積載対象から外れる可能性があります。特に、計量場所を経由してから港へ搬入する場合や、シール後に実測する場合は、時間に余裕を持った段取りが必要です。
VGMに費用はかかるのか
VGMでは、重量を確認するための計量費用や、船会社・フォワーダーへの申告手数料が発生する場合があります。たとえば、トラックスケールで実入りコンテナを計量する場合は、計量場所の利用料や手配費用がかかることがあります。
また、船会社やフォワーダーによっては、VGM Fee、VGM申告手数料、手動入力手数料、訂正手数料、遅延提出手数料などが設定されている場合があります。特に、電子的な提出ではなく、メールや書面での手動対応になる場合、追加費用が発生しやすくなります。
そのため、輸出コストを見積もる際は、海上運賃やTHCだけでなく、VGM関連費用も確認しておくと安心です。費用の有無や金額は、船会社・フォワーダー・港・契約条件によって異なるため、ブッキング時に確認するのが確実です。
VGMを申告しないとどうなるのか
VGMが提出されていない実入りコンテナは、原則として本船へ積み込むことができません。これは単なる事務手続きではなく、安全運航に関わる前提条件です。
VGM未提出のまま港へ搬入した場合、船積み保留、追加確認、再計量、スケジュール遅延、保管料や追加作業費の発生につながる可能性があります。
また、VGMを提出していても、重量が不正確であった場合や、提出後に貨物内容を変更した場合は、訂正手続きや追加費用が必要になることがあります。輸出実務では、貨物の準備や通関書類に目が向きがちですが、VGMの締切を過ぎると船積みに直接影響するため注意が必要です。
VGMとパッキングリストの重量は同じではない
実務で混乱しやすいのが、パッキングリストに記載する重量とVGMの違いです。
パッキングリストには、通常、貨物の正味重量であるNET WEIGHTや、梱包込みの総重量であるGROSS WEIGHTを記載します。しかし、VGMはさらにコンテナ自体の重量を含みます。
たとえば、パッキングリスト上のGROSS WEIGHTが18,500kgで、コンテナのTare Weightが3,800kgであれば、VGMは概算で22,300kgになります。もちろん、実際には梱包材や固定材の扱い、計量方法、船会社や現場の運用に合わせて確認する必要があります。
この違いを理解していないと、「書類上の総重量は出しているのに、VGMとしては不足している」という状況が起こります。
VGM申告の流れ
VGM申告は、ブッキング後に慌てて対応するよりも、輸出準備の早い段階で流れを決めておく方が安全です。一般的な流れは次のとおりです。
- ブッキング時に船会社・フォワーダーへVGM提出期限を確認する
- 方法1または方法2のどちらで重量を確定するか決める
- 貨物・梱包材・固定材・コンテナ自重を確認する
- VGMを算出、または実入りコンテナを計量する
- VGMカットまでに船会社・フォワーダーへ申告する
- 提出後に重量変更がないか確認する
- 必要に応じて訂正手続きや追加費用の有無を確認する
特に重要なのは、VGMカットから逆算して、いつまでにバンニングを終えるのか、いつ計量するのか、誰が申告するのかを決めておくことです。ここが曖昧なままだと、港への搬入には間に合っているのに、VGM未提出で船積みに影響する可能性があります。
VGM申告前のチェックリスト
VGM申告前には、次の項目を確認しておくと実務上のミスを減らしやすくなります。
- VGMカットの日時を確認したか
- CYカットとVGMカットを混同していないか
- 方法1と方法2のどちらで重量を確定するか決めたか
- コンテナのTare Weightを確認したか
- 梱包材・パレット・固定材の重量を含めたか
- シール後に貨物や固定材を変更していないか
- VGM Feeや計量費用の有無を確認したか
- フォワーダー・通関業者・倉庫会社との役割分担を確認したか
- 提出後の訂正方法と追加費用の有無を確認したか
VGMでよくある誤解
貨物重量だけを申告すればよいという誤解
VGMは貨物重量だけではありません。梱包材、パレット、固定材、コンテナ自重まで含めた総重量です。貨物単体の重量だけを申告すると、実際の総重量と大きくずれる可能性があります。
フォワーダーに任せれば荷主は関係ないという誤解
実務上、フォワーダーがVGM送信を代行することはあります。しかし、重量情報の正確性まで自動的に保証されるわけではありません。荷主側でも、貨物重量や梱包材の重量、コンテナ自重の確認を行う必要があります。
少しの誤差なら問題ないという誤解
重量情報は、船の積付計画や安全管理に使われます。多少の誤差でも、複数のコンテナで積み重なると大きなリスクになります。特に重量物や高密度貨物では注意が必要です。
まとめ

VGMとは、海上輸送される実入りコンテナの確定総重量のことです。貨物だけでなく、梱包材、パレット、固定材、コンテナ自重を含めた総重量を確認し、船会社やターミナル側へ提出します。
VGMは、改正SOLAS条約に基づく重要なルールであり、未提出の場合は原則として本船に積み込むことができません。輸出者や荷送人は、誰が重量を確認し、誰が申告し、いつまでに提出するのかを事前に整理しておく必要があります。
特に、VGMカットとCYカットは混同しやすいポイントです。コンテナの搬入期限に間に合っていても、VGMの提出期限を過ぎていれば船積みに影響する可能性があります。
また、VGMには計量費用や申告手数料が発生する場合があります。輸出コストを見積もる際は、海上運賃だけでなく、VGM関連費用も確認しておくと安心です。
コンテナ輸送では、重量の正確性が安全運航とスケジュール管理に直結します。VGMの基本を理解しておくことは、輸出実務のトラブルを防ぐ第一歩になります。
参考外部リンク
- 国土交通省|国際海上輸出コンテナ総重量確定制度
日本国内におけるVGM制度、届出荷送人、登録確定事業者、総重量の確定方法を確認できます。 - IMO|Verification of the gross mass of a packed container
VGM制度の国際的な背景や、SOLAS条約に基づく重量確認の考え方を確認できます。 - OOCL|VGM Resource Center
船会社側のVGM提出要件や、実務上の提出情報を確認できます。 - OOCL|How to submit VGM
VGM申告に必要な情報、提出方法、Booking numberやContainer numberなどの項目を確認できます。 - Kuehne+Nagel|SOLAS VGM Regulations
VGM未提出による遅延リスクや、国際物流実務での注意点を確認できます。