理由書とは、ある出来事や判断・行動の理由や背景を文章で説明する書類のことです。提出先は役所、会社、学校、取引先などさまざまで、事実経過と正当性を明確にするために使われます。
理由書は、単なる「説明」ではなく、「なぜその行為・申請・決定が必要なのか」、「どのような事情や経緯があったのか」を客観的・論理的に説明する文書です。
目的
- 経緯や背景の説明
- 何があったのか、どのような経過でそうなったのかを整理する。
- 判断や行動の正当性を示す
- 相手に納得してもらうための説明材料になる。
- 記録として残す
- 後日確認が必要なときに証拠や参考資料として使える。
主な使用例
- 行政手続きでの申請や許可(例:期限延長の申請理由)
- 会社での稟議や報告(例:予算超過の理由書)
- 学校での事情説明(例:欠席や遅延の理由)
- 事故やトラブル発生時の報告(例:納期遅延、ミスの発生原因)
分野 | 用途 | 内容の例 |
---|---|---|
行政・公的機関 | 免許申請・異議申立て・減免申請など | 「なぜこの処分に不服があるのか」「なぜ免除を求めるのか」 |
学校・教育 | 欠席・退学・転校など | 「家庭の事情で」「健康上の理由により」 |
企業・職場 | 遅刻・欠勤・退職・懲戒関連など | 「やむを得ない事情による欠勤」などの説明 |
契約・法務 | 契約解除・延長・変更申請など | 「業務上の変更に伴い~」などの根拠説明 |
採用・人事 | 採用見送り・評価根拠など | 「能力・適性評価の結果~」などの判断理由 |
構成の一般例
- 表題:「理由書」または「〇〇に関する理由書」
- 宛名:提出先(例:〇〇株式会社 御中、〇〇学校長 殿)
- 本文
- 事情や背景
- 具体的な理由や経緯
- 今後の対応や謝意(必要に応じて)
- 日付・署名:提出日、氏名、所属など
- 主観的な言い訳ではなく、客観的で事実に基づいた説明が求められる。
- 長文になりすぎず、1枚〜2枚程度にまとめるのが望ましい。
- ビジネスや行政用途ではフォーマルな書式が必要。
理由書を書く際のポイント
① 感情的にならず、事実を明確に書く
理由書は「訴え」ではなく「説明書」です。感情や不満をぶつける文書ではなく、事実関係を時系列で整理して伝えることが最も重要です。
悪い例:上司の対応が理不尽だったため、退職を決意しました。
良い例:業務内容が当初の契約条件と異なり、改善要請を行いましたが解決に至らなかったため、退職を希望いたします。
このように、「誰が・いつ・どのように・どうなったか」を中心に書くと、感情的でなくても理由が明確に伝わります。
② 主観ではなく、客観的な説明を心がける
「自分がどう感じたか」よりも、「客観的にどういう事情が発生したのか」を重視します。読む相手(上司・審査担当・学校など)が第三者として判断しやすい書き方を意識しましょう。
主観的な書き方:とても辛かったので休みました。
客観的な書き方:高熱が続き、医師の診断により安静が必要と判断されたため、欠席いたしました。
「判断したのは誰か」「確認できる事実は何か」を示すと信頼性が高まります。
③ 必要に応じて証拠・資料を添付
理由書の説得力を支えるのは「客観的な裏付け」です。特に公的手続きや企業内の正式な申請では、診断書・通知書・証明書・契約関連書類などを添付することで、記載内容の正当性を担保できます。
例:
・健康上の理由 → 医師の診断書
・家庭の事情 → 戸籍謄本や介護認定書の写し
・契約関連 → 当初契約書・通知文書の写し
提出先によっては、原本の提示またはコピーの添付を求められる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
④ 誠実で簡潔な文体を使う
理由書は「ビジネス文書」の一種です。過度に長く説明するよりも、誠実さと読みやすさを重視する方が印象が良くなります。「〜のため」「〜により」「やむを得ず」などの言い回しを使うと、柔らかく、かつ公式な印象を与えます。
避けたい表現:~せざるを得ない状況でした!とても困りました!
適切な表現:~の事情により、やむを得ずこのような結果となりました。
文章全体を2~3段落以内にまとめ、最後に「ご理解のほどよろしくお願いいたします」と結ぶと、丁寧な印象で締めくくれます。
このように書くことで、読者(=申請先・上司・審査官など)が「この人の言っていることは筋が通っている」と感じやすくなります。
ダウンロード:理由書
使い方と記載例
項目 | 記載内容 | 記載例 |
日付 | 作成日を記入 | 2023年9月11日 |
送付先 | 宛先を記入 | 株式会社〇〇商事 御中 営業部 △△様 |
送り主 | 送り主名を記入 | 株式会社〇〇物流 担当 山田 太郎 |
住所・電話番号・メール | 送り主の情報を記入 | 東京都三鷹市渋谷町1-1-1 TEL:03-8000-0000 E-mail:info@sample.com |
書き出し | 理由書を作成する原因となった件を導入に含める | 平素より格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。 このたび、2023年8月10日納品予定の「建築資材A」につきまして、納期が遅延いたしました件について、下記の通りご報告申し上げます。 |
【事実経過】 | ケースを記載 | 2023年8月10日、弊社提携倉庫において台風の影響により停電が発生し、出荷作業が一時停止いたしました。 復旧は翌11日午後となり、配送業者の運行スケジュールにも影響が出たため、予定通りの出荷が困難となりました。 |
【理由および背景】 | ケースの原因を記載 | 出荷体制が一拠点に集中していたこと、また天候リスクを想定した代替ルートを十分に確保できていなかったことが原因です。 社内確認の遅れも重なり、結果として納期遵守が難しい状況となりました。 |
【再発防止策および改善策】 | 対策・改善内容を記載 | ・緊急時に備えた代替倉庫の契約および複数ルート配送の確保 ・社内報告ルートの迅速化(担当責任者を明確化) ・気象リスク発生時の事前出荷対応ルールの策定 |
締め | 締めの言葉を記載 | 以上、関係各位には多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げるとともに、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。 |
理由書のまとめ

理由書は、単なる「言い訳」ではなく、事実経過と背景を整理し、相手に納得してもらうための正式な説明文書です。感情ではなく事実を中心に、客観的かつ誠実な文体でまとめることが信頼につながります。
ポイントは次の3つです。
- 事実経過を明確にする – いつ、どこで、何が起きたのかを時系列で記載。
- 理由・背景を具体的に示す – 原因を分析し、主観を避ける。
- 改善・再発防止策を添える – 今後の対応を示して誠意を伝える。
これらを意識して書くことで、相手に「誠実で筋の通った説明」として受け止めてもらえます。また、医師の診断書や通知書などの客観的資料を添付すると、より説得力が増します。
理由書は、行政・企業・学校などあらゆる場面で用いられる重要な書類です。テンプレートを活用しながら、状況に応じた内容を的確に記載することで、信頼を損なわず円滑な対応が可能になります。