中国からASEAN移転時の通関リスクとは?HS分類・原産地・関税の実務注意点

中国からASEAN移転時の通関リスクとは?HS分類・原産地・関税の実務注意点

中国経済の減速や地政学的リスクの高まりを背景に、中国依存を見直す企業が増えています。特に製造業では、ベトナムやインドネシア、タイなどASEAN諸国への生産移転を検討する動きが活発です。しかし「移転=リスク回避」ではありません。実務上は、通関や原産地、HSコード、関税適用の再設計など、新たなリスクが発生します。本記事では、中国からASEANへ切替える際に発生しやすい通関リスクを、実務視点で整理します。

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なぜ今、中国からASEANへの切替えが進んでいるのか

背景には複数の要因があります。第一に、中国経済の減速と内需不振です。第二に、米中対立や輸出管理規制の強化によるサプライチェーン分断リスク。第三に、人件費の上昇です。さらに、RCEPの発効によりASEAN域内の関税優遇を活用しやすくなったことも移転を後押ししています。

しかし、製造拠点を変更すると、通関制度・関税分類・原産地判定・インボイス構成などがすべて再検討対象になります。ここに見落とされがちなリスクが潜んでいます。

リスク① HSコードの再判定による関税率変動

製造国が変わると、製品構成や加工工程が微妙に変わるケースがあります。その結果、HSコードの分類が変更される可能性があります。中国で問題なかった分類が、ASEANでの製造実態では適合しない場合があります。

例えば、単純組立か実質的変更かの判断が変われば、部品扱いから完成品扱いへ変更されることがあります。HSコードが変われば、関税率も変わります。場合によっては優遇税率が使えなくなることもあります。

とくに日本向け輸入の場合、税関は製造実態を重視します。名目上の工程移転だけでは分類根拠が弱いと判断されることがあります。

リスク② 原産地証明の取得難易度上昇

中国からASEANへ移転する際、多くの企業がFTAやRCEPの活用を前提とします。しかし、原産地証明の取得要件は国ごとに異なります。付加価値基準、関税分類変更基準、加工工程基準などを満たさなければなりません。

特に注意すべきなのは、中国製部材を多く使用するケースです。最終組立のみASEANで行う場合、原産地規則を満たさない可能性があります。その場合、関税優遇が適用できません。

また、ベトナムなどではサプライヤーからの原材料証明書の回収が遅延することもあります。書類管理体制が不十分なまま輸出すると、事後調査で否認されるリスクがあります。

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リスク③ トランスシップメント疑義

近年、日本税関や米国税関では「実質的加工がない単なる経由輸出」に対して厳格な姿勢を取っています。中国製品がASEANを経由して輸出される場合、実質的変更が行われているかが厳しく確認されます。

設備投資が十分でない、加工記録が不十分、工程管理資料が存在しないなどの場合、トランスシップメントと疑われる可能性があります。否認されれば、追徴課税や延滞税が発生する場合があります。

リスク④ 関税評価(価格)の再構築

生産拠点が変わると、移転価格やロイヤルティ、設計費用の扱いも変わります。日本輸入時の課税価格算定に影響が出る可能性があります。

特に関連会社間取引では、移転価格と関税評価の整合性が問題になります。関税評価上加算すべきロイヤルティが漏れている場合、後日修正申告が必要になることがあります。

リスク⑤ 現地通関体制の未整備

中国では長年の取引実績があり、通関業者との関係も安定しているケースが多いです。一方、ASEANでは通関実務の水準が国ごとに差があります。書類の整合性、HS分類の解釈、税関との交渉力などが十分でない場合があります。

現地パートナー選定を誤ると、輸出許可遅延や原産地証明書発給ミスが発生し、サプライチェーン全体に影響が出ます。

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実務で今すぐ確認すべきチェックリスト

  • HSコードの再判定を実施しているか
  • 原産地規則を条文レベルで確認したか
  • 加工工程の証拠資料を保存しているか
  • 中国部材の使用割合を把握しているか
  • 関税評価と移転価格の整合性を確認しているか
  • 現地通関業者の実績を検証しているか

これらを事前に整理しておくことで、追徴課税や優遇税率否認のリスクを大きく減らすことができます。

まとめ

中国からASEANへの生産移転は、リスク分散という点で合理的な判断です。しかし、通関・原産地・HS分類・関税評価といった制度面の再設計を伴います。単に工場を移すだけではリスクは解消されません。むしろ初期段階では新たな通関リスクが増える可能性があります。

実務担当者は、移転計画と同時に通関リスク評価を行う必要があります。事前教示制度の活用や、FTA原産地判定の専門家確認などを検討することが重要です。生産移転を成功させる鍵は、制度理解と証拠管理にあります。

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参考外部リンク

2026年2月16日 | 2026年2月15日