現状の整理(2025年12月04日時点)
為替水準
市場データではUSD/JPYは155.20円前後で、11月後半の156円台から反落し、方向感が定まりにくい局面が続いています。ドル安・円高どちらにも傾きやすく、材料による短期反応が強まりやすい水準です。
市場背景
米国では景気指標が強弱混在し、2026年の利下げ開始期待がじわりと強まっています。インフレ鈍化が確認される一方で、需給関連の堅調データが出る場面もあり、金利観測は不安定です。日本では日銀の政策修正可能性が意識され、円の買い材料として注目されています。さらに年末が近づくことで、企業決済やリバランスによる為替需要が不規則な動きを引き起こしやすい状況です。
市場心理とポジション
投機筋の円ショートは高水準にあり、円安方向に傾いたままです。ただしこのポジションが巻き戻される局面では円高の急伸につながりやすく、市場の不安定要因になっています。ドルロングも一定量残っており、米指標が弱く出た場合にはドル売りが連鎖しやすい構造です。政策イベントと介入警戒が重なり、市場は慎重姿勢を強めています。
テクニカルの要点
日足では中期線が横ばいで、上昇・下落のどちらにも明確なトレンドは見られません。156円台後半には強い抵抗帯があり、ここを突破するには米金利の押し上げが必要です。一方で153円台前半には支持帯があり、152円台前半は当局の警戒領域と重なっています。年末はボラティリティが高まりやすく、短期的にレンジ上端・下端へ触れやすい環境です。
影響のある経済指標(今後30日以内)
以下はドル円の変動に特に影響しやすい指標とイベントです。
- 米国 雇用統計(非農業部門雇用者数、失業率)
- 米国 PCEデフレーター(コア含む)
- 日銀金融政策決定会合(12月18〜19日)
- 日本 賃金統計
- 日本 コアCPI
- 世界株式市場のリスクオン・リスクオフ
- 原油価格などの商品市況
- 年末の輸出入企業によるドル買い・円買い需要
米指標は金利観測に直結し、日銀会合は円の強弱方向に直結するため、短期変動の発火点になりやすい点が重要です。
シナリオ別見通し(30日後)
2026年1月初旬にかけて、以下の3つのシナリオを中心に想定します。
シナリオ別レンジ
| シナリオ | 想定レンジ |
|---|---|
| 上昇シナリオ | 157.80〜159.50円 |
| レンジ維持シナリオ | 152.50〜157.00円 |
| 下落シナリオ | 150.00〜153.00円 |
根拠と解説
上昇シナリオ
米国の雇用統計やインフレ指標が強く、米金利の低下観測が後退する場合、ドル買いが優勢になりやすくなります。日本側で利上げが見送られたり、慎重な姿勢が示されたりすれば、円の強い材料は後退します。年末はドル需要が膨らみやすく、企業や機関投資家の決済関連のフローが加わることでドル円は上昇しやすい局面が生まれます。この組み合わせにより158円台後半までの上振れが想定されます。
レンジ維持シナリオ
米国のデータが強弱入り混じり、利下げ時期の判断が難しい状況ではドルの方向性は出にくくなります。日銀も大幅な政策調整を避ける場合、円の買い材料も限定的となり、両方向に決め手を欠きやすい環境です。このため152.50〜157.00円の範囲で、材料ごとの上下反応を挟みつつも全体としては均衡状態が続く見込みです。最も確度の高い中心シナリオです。
下落シナリオ
米雇用統計やインフレ指標が弱く、利下げ観測が強まる場合、ドル売りが加速しやすくなります。日本側で日銀がタカ派スタンスを示したり、賃金や物価の改善が確認されたりすれば、円買いが広がる可能性があります。さらに投機筋の円ショートが巻き戻されると、円買いが連鎖的に発生し150円台前半までの下落が起きても不思議ではありません。リスクオフ局面が重なると下方向の勢いが増す可能性があります。
監視チェックリスト
- 米雇用統計の強弱
- 米PCEデフレーター
- 日銀の政策判断・総裁発言
- 投機筋の建玉状況
- 株式市場のリスクオン・オフ
- 年末の需給動向
- 原油や資源価格の変動
- 財務省の為替に関する発言
まとめ

ドル円は155円前後で方向感を欠く展開が続き、米金利観測、日本の政策期待、年末の需給、投機筋の調整など多層的な要因が同時に作用しています。最も現実的なのは152.50〜157.00円のレンジ維持ですが、米指標や日銀会合次第では上昇・下落の両方向に大きく動く可能性があります。複数の市場要因を並行して確認しながら、イベントごとの変動リスクに備えることが重要です。
免責と注記
本記事は情報提供のみを目的としたものであり、特定の投資判断を推奨するものではありません。市場の将来値動きを保証するものではなく、取引の最終判断はご自身の責任で行ってください。