SWIFTメッセージカテゴリ7(MT7xx)は、ドキュメントクレジット(信用状, L/C)や銀行保証に関する取引を対象としています。国際貿易においては、輸出者が安心して出荷できるように買主の支払確実性を保証する仕組みが必要であり、信用状や保証はその中核を担います。MT7xxは、信用状の発行・修正・通知・引受、または保証発行やスタンバイL/Cなどの伝達に利用され、バイヤーとサプライヤー、銀行間の信頼関係を橋渡しする役割を果たします。
SWIFT カテゴリ7(MT7xx)の主なメッセージ種別
SWIFTメッセージカテゴリMT7系では、主に以下のようなメッセージが使用されます。信用状が主役となるため、主に国際貿易で使用されることが多くなっています。それぞれのメッセージについては、別ページで解説します。
メッセージ種別 | 名称(英語) | 内容・用途 |
---|---|---|
MT700 | Issue of Documentary Credit | 信用状の発行を通知する基本メッセージ |
MT701 | Issue of Documentary Credit (Additional Conditions) | MT700で記載しきれない追加条件を補足 |
MT707 | Amendment to Documentary Credit | 発行済み信用状の条件を修正 |
MT710 | Advice of a Third Bank’s Documentary Credit | 通知銀行が別銀行発行の信用状を受益者に通知 |
MT740 | Authorization to Reimburse | 発行銀行が償還銀行に支払依頼を行う |
MT760 | Guarantee / Standby Letter of Credit | 銀行保証やスタンバイ信用状の発行・通知 |
MT767 | Amendment to Guarantee / Standby L/C | 保証やスタンバイ信用状の条件を修正 |
SWIFT カテゴリ7(MT7xx)のメッセージフロー
ここでは例として信用状発行から決済までを追っていきます。
- 買主(輸入者)→発行銀行:信用状発行依頼
- 発行銀行→通知銀行:MT700でL/Cを送信
- 通知銀行→輸出者(受益者):信用状通知
- 輸出者→通知銀行:船積書類提出
- 通知銀行→発行銀行:書類送付と支払請求
- 発行銀行→輸出者銀行:支払または引受
- 発行銀行→買主:代金請求
では、この流れにMT番号を当てていきます。
Step | 当事者 | 内容 | 使用される主なMT番号 |
---|---|---|---|
1 | 買主(輸入者) → 発行銀行 | 信用状発行の依頼 | (SWIFT外/銀行内処理) |
2 | 発行銀行 → 通知銀行 | 信用状を発行し送信 | MT700 / MT701 |
3 | 通知銀行 → 輸出者(受益者) | 信用状を通知 | MT710 |
4 | 輸出者 → 通知銀行 | 船積書類を提出 | (SWIFT外/実物書類) |
5 | 通知銀行 → 発行銀行 | 書類送付と支払請求 | MT707(修正がある場合)、決済請求関連はMT740 |
6 | 発行銀行 → 輸出者銀行 | 書類承認後、支払または引受 | MT740 |
7 | 発行銀行 → 買主(輸入者) | 代金を請求 | (SWIFT外/請求通知) |
これで、「誰が」「どのタイミングで」「どのMTメッセージを使うか」が一目で分かるようになりました。次に、MT7xxにおける注意点も確認していきましょう。
MT705について
MT705は、信用状(LC: Letter of Credit)の発行銀行が、輸出者側の通知銀行に対して「正式な信用状発行が間もなく行われる」という 事前の通知 を送るために使用されるメッセージです。
まだ信用状自体が発行されたわけではなく、あくまでも「近々発行する予定」という段階で伝達されます。
MT705の注意点
- 正式な信用状ではないため、輸出者は出荷を急がず、実際のLC発行(MT700)の受領を待ってから行動することが推奨されます。
- 条件が最終確定していない場合もあるため、MT705の内容を鵜呑みにして出荷してしまうと、後で発行された正式なLCと条件が異なり、代金回収にリスクが生じることがあります。
- そのため、MT705は「信用状が来る」というシグナル程度の扱いとし、実務ではMT700の到着を確認してから動くのが基本です。
まとめると、MT705は「信用状がもうすぐ届くよ」という事前アドバイスを送るためのメッセージです。輸出者に安心感を与え、取引準備を進めるメリットがありますが、正式な支払保証ではないため注意が必要です。
SWIFT カテゴリ7(MT7xx)のリスト
SWIFT カテゴリ7(MT7xx)には、以下のメッセージがリストされています。
メッセージの種類 | Description | 説明 |
MT 700 | Issue of a Documentary Credit | 記録クレジットの発行 |
MT 701 | Issue of a Documentary Credit | 記録クレジットの発行 |
MT 705 | Pre-Advice of a Documentary Credit | ドキュメンタリークレジットの事前アドバイス |
MT 707 | Amendment to a Documentary Credit | ドキュメンタリークレジットの修正 |
MT 710 | Advice of a Third Bank’s Documentary Credit | 第三銀行のドキュメンタリークレジットに関するアドバイス |
MT 711 | Advice of a Third Bank’s Documentary Credit | 第三銀行のドキュメンタリークレジットに関するアドバイス |
MT 720 | Transfer of a Documentary Credit | ドキュメンタリークレジットの譲渡 |
MT 721 | Transfer of a Documentary Credit | ドキュメンタリークレジットの譲渡 |
MT 730 | Acknowledgment | 了承 |
MT 732 | Advice of Discharge | 排出のアドバイス |
MT 734 | Advice of Refusal | 拒否のアドバイス |
MT 740 | Authorization to Reimburse | 払い戻しの承認 |
MT 742 | Reimbursement Claim | 払い戻し要求 |
MT 747 | Amendment to an Authorization to Reimburse | 払い戻しの承認の修正 |
MT 750 | Advice of Discrepancy | 不一致のアドバイス |
MT 752 | Authorization to Pay, Accept or Negotiate | 支払い、承諾、またはネゴシエートの承認 |
MT 754 | Advice of Payment/Acceptance/Negotiation | 支払い/受け入れ/交渉のアドバイス |
MT 756 | Advice of Reimbursement or Payment | 払い戻しまたは支払いのアドバイス |
MT 760 | Guarantee | 保証 |
MT 767 | Guarantee Amendment | 保証の修正 |
MT 768 | Acknowledgment of a Guarantee Message | 保証メッセージの受信確認 |
MT 769 | Advice of Reduction or Release | 削減またはリリースのアドバイス |
MT 790 | Advice of Charges, Interest and Other Adjustments | 料金、利息、その他の調整に関するアドバイス |
MT 791 | Request for Payment of Charges, Interest and Other Expenses | 料金、利息、その他の経費の支払いの依頼 |
MT 792 | Request for Cancellation | キャンセルの要求 |
MT 795 | Queries | クエリ |
MT 796 | Answers | 回答 |
MT 798 | Proprietary Message | 独自のメッセージ |
MT 799 | Free Format Message | 自由書式メッセージ |
SWIFT カテゴリ7(MT7xx)の注意点
- L/C条件の修正は必ずMT707で行い、受益者の同意が必要。
- 保証(MT760)は、債務不履行時に銀行が代位弁済する仕組みであり、信用度が高いが発行銀行のリスク管理が重要。
- 実務では、貿易契約書・インコタームズ・UCP600などの国際規則と密接に関連する。
信用状や保証に関するSWIFTメッセージを扱う際には、いくつかの実務上の留意点があります。まず、信用状の条件変更は必ずMT707によって行われ、受益者の同意がなければ効力を持ちません。
また、保証(MT760)は債務不履行が発生した場合に銀行が代位弁済を行う仕組みであり、取引の信頼性を高める一方で、発行銀行にとっては大きな信用リスクを伴います。そのため、発行に際しては取引当事者の与信管理や内部審査が重要です。
さらに、これらの取引は国際商取引規則であるUCP600やISP98などの規定と密接に関連しており、契約条件やインコタームズとの整合性を確認しながら運用することが不可欠です。
SWIFT カテゴリ7(MT7xx)のまとめ
カテゴリ7(MT7xx)は、国際貿易における「決済の安全性」を確保するための要となるカテゴリです。信用状や保証は、輸出入双方にとってリスク軽減の手段であり、MT7xxメッセージはそれを円滑に伝達するための標準フォーマットとして機能します。