HSコード第3部・第15類を解説|動物性・植物性油脂とろうの分類と判断ポイント

HSコード第3部・第15類を解説|動物性・植物性油脂とろうの分類と判断ポイント

第3部の概要

HSコード第3部は、動物性・植物性・微生物性の油脂類と、それらを原料とした加工品、さらに動物性または植物性のろうを対象とする部です。
第1部第2部が「生きた動物」や「肉類」といった比較的原形を保った産品を扱うのに対し、第3部は搾油、精製、化学処理など一定の加工を経た製品が中心となります。

油脂は食用だけでなく、飼料、工業原料、医薬品、化粧品など用途が非常に広く、国際貿易においても重要性の高い分野です。その一方で、用途ではなく加工状態や性状によって分類されるため、実務上の誤分類が多い部でもあります。

第3部の構成と第15類の位置づけ

第3部は、第15類のみで構成されています。
単一の類でありながら、動物性脂肪、植物油、化学処理油、ろう類まで幅広く含まれている点が特徴です。

分類の基本軸は次の通りです。
・原料が動物性か植物性か
・油脂か、ろうか
・未加工か、精製・化学処理済みか

HSコード第3部(第15類)分類の基本軸 原料 / 形状(油脂・ろう) / 加工度の3軸で整理すると判断が速くなります 軸1:原料 動物性 植物性 微生物性 例:ラード / 大豆油 / 発酵由来油脂 軸2:形状・区分 油脂 (油・脂肪) ろう (ワックス) 用途ではなく性状で判断 軸3:加工度 未加工 (原油・未精製) 精製 (脱酸・脱色等) 化学処理 (水素添加・再エステル化等) 読み方:まず原料(動物/植物/微生物)→ 次に油脂かろうか → 最後に未精製/精製/化学処理の順で切り分け

第15類 類内コード表(6桁まで)

6桁コード例分類されるものの例
15.011501.10豚脂(ラード)、家禽脂
15.021502.10牛脂、羊脂
15.031503.00ラードステアリン、オレオステアリン
15.041504.10魚油、肝油
15.051505.00羊毛脂(ラノリン)
15.061506.00その他の動物性油脂
15.071507.10大豆油(原油)
15.081508.10落花生油
15.091509.10オリーブ油
15.101510.00その他のオリーブ油
15.111511.10パーム油
15.121512.10ひまわり油、サフラワー油
15.131513.10ヤシ油、パーム核油
15.141514.10菜種油、からし菜油
15.151515.10その他の植物性油脂
15.161516.10水素添加油、再エステル化油
15.171517.10マーガリン、調製食用脂
15.181518.00工業用脂肪酸、グリセリン残渣
15.211521.10植物性ろう(カルナバろう等)
15.221522.00動物性ろう、使用済み油脂

※実務では、原油か精製油か、化学処理の有無で号が細分化される点に注意が必要です。

分類の考え方と実務ポイント

第15類の分類では、商品の最終用途よりも、輸出入時点での性状が重視されます。
たとえば、食用として販売される予定の油であっても、未精製であれば「原油」として分類されます。

また、水素添加やエステル化など化学的処理を行った油脂は、通常の植物油とは別項目に分類されます。マーガリンやショートニングも、原料が植物油であっても「調製食用脂」として独立した項に含まれます。

よくある誤分類Q&A

Q1:食用の大豆油はすべて同じコードになるか
A:なりません。原油か精製油かによって号が異なります。精製工程の有無が判断基準です。

Q2:化粧品原料用の植物油は第15類に含まれるか
A:含まれます。用途が化粧品であっても、油脂としての性状が変わらなければ第15類で分類します。

Q3:マーガリンは植物油なので植物油の項に入るか
A:入りません。調製食用脂として15.17項に分類されます。

Q4:ろうと油脂の違いはどこで判断するか
A:常温での性状や化学的特性が基準となり、用途では判断しません。

実務上の注意点

油脂類は関税率差が比較的大きく、FTAやEPA適用時の原産地判定にも影響します。
また、HS改正の影響を受けやすい分野であるため、最新の品目表や税関通達を確認することが重要です。

まとめ

HSコード第3部は、動物性・植物性・微生物性の油脂や、調製食用脂、動物性・植物性のろうを対象とする部であり、見た目や用途だけでは正確な分類ができない点が最大の特徴です。
とくに第15類は、原料、性状、加工度という複数の判断軸が重なり合うため、分類を誤りやすい分野といえます。

実務では「食用か工業用か」「最終的に何に使われるか」に意識が向きがちですが、HSコード上の判断では輸出入時点での状態が最優先されます。未精製の植物油と精製済みの植物油、また化学処理が施された油脂では、同じ原料であっても項や号が異なるケースが多く見られます。

また、マーガリンやショートニングのように、原料が植物油であっても調製工程を経ている製品は、単純な植物油として扱われません。これらは調製食用脂として独立した分類が設けられており、知識がないと誤分類につながりやすい代表例です。

ろう類についても同様で、用途や商品名ではなく、常温での性状や化学的特性によって油脂と区別されます。化粧品原料や工業用途として流通する場合でも、基本的な分類ロジックは変わりません。

HSコード第3部を正しく理解するためには、まず原料の区分を確認し、次に油脂かろうかを見極め、最後に未加工、精製、化学処理のどこに該当するかを順番に整理することが重要です。この流れを習慣化することで、実務上の判断ミスを大きく減らすことができます。

第3部は、関税率差や原産地規則、FTA適用にも直結する分野です。単なるコード暗記ではなく、分類の考え方を理解することが、安定した輸出入実務につながります。

参考外部リンク(HSコード第3部・第15類)

日本の公的機関・公式資料

・税関(日本)HS品目表(第15類)
https://www.customs.go.jp/tariff/2024_04_01/data/15.htm

・税関(日本)実行関税率表
https://www.customs.go.jp/tariff/

・財務省 関税制度・HSコード解説
https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/tariff/

・農林水産省 油脂・油糧統計関連
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/syokuhin_yushi/

国際機関(HS解釈の根拠資料)

・World Customs Organization(WCO)HS Convention
https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/instrument-and-tools/hs_convention.aspx

・WCO Explanatory Notes(HS解説書・概要)
https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/instrument-and-tools/hs_explanatory_notes.aspx

※Explanatory Notesは有料資料ですが、分類判断の国際的根拠として重要

2025年12月21日 | 2025年12月21日