HSコード第一部の概要
HSコードは全体で21部に分かれていますが、その最初に位置づけられているのが第一部です。第一部は、生きた動物および動物性の一次産品を中心に構成されており、いわばHSコード体系の出発点ともいえる区分です。
第一部に含まれるのは、畜産物や水産物、乳製品など、加工度が極めて低い段階の動物由来品です。工業製品や高度に加工された食品は含まれず、原材料段階の性格が強い点が特徴です。
第一部に含まれる類(Chapter)の構成
HSコード第一部は、以下の5つの類で構成されています。
第1類は、生きた動物です。牛、豚、鶏などの家畜から、観賞用や研究用の動物まで、生体として輸出入されるものが該当します。
第2類は、肉および食用のくず肉です。屠畜後の肉、冷蔵肉や冷凍肉、食用内臓などが含まれます。
第3類は、魚ならびに甲殻類、軟体動物およびその他の水棲無脊椎動物です。鮮魚、冷凍魚、エビやカニ、貝類など、水産物全般が対象となります。
第4類は、乳製品、鳥卵、天然はちみつ、その他の食用の動物性産品です。牛乳、チーズ、バター、卵、はちみつなどがここに分類されます。
第5類は、動物性生産品で、他の類に該当しないものです。骨、角、毛、腱など、食用ではなく工業用や原材料用途のものが中心です。
HSコードの例
| 類 | コード例 | 分類されるものの例 |
|---|---|---|
| 第1類 | 01.01 | 生きた馬、ロバ、ラバおよびバード |
| 01.0101 | 生きた純血種の繁殖用馬 | |
| 01.0102 | その他の生きた馬 | |
| 01.02 | 生きた牛 | |
| 01.0201 | 生きた純血種の繁殖用牛 | |
| 01.0202 | その他の生きた牛 | |
| 第2類 | 02.01 | 牛の肉(生鮮・冷蔵) |
| 02.0101 | 牛枝肉および半丸枝肉 | |
| 02.0102 | その他の牛肉(生鮮・冷蔵) | |
| 02.02 | 牛の肉(冷凍) | |
| 02.0201 | 冷凍牛枝肉 | |
| 第3類 | 03.01 | 生きた魚 |
| 03.0101 | 観賞用の生きた魚 | |
| 03.0102 | その他の生きた魚 | |
| 03.02 | 魚(生鮮・冷蔵) | |
| 03.0201 | 鮭(生鮮・冷蔵) | |
| 03.03 | 魚(冷凍) | |
| 第4類 | 04.01 | ミルクおよびクリーム(濃縮していないもの) |
| 04.0101 | 牛乳(脂肪分無調整) | |
| 04.02 | ミルクおよびクリーム(濃縮したもの) | |
| 04.0201 | 粉乳 | |
| 04.07 | 鳥卵(殻付き、生鮮) | |
| 第5類 | 05.01 | 人髪、動物の毛(未加工) |
| 05.0101 | 洗浄していない人髪 | |
| 05.02 | 豚毛、アナグマ毛など | |
| 05.05 | 鳥の皮および羽毛 | |
| 05.0501 | 羽毛(詰め物用) |
第一部における分類の基本的な考え方
第一部の分類で最も重要なのは、生きているかどうか、そして食用かどうかという点です。生体であれば第1類、屠畜後で食用に供されるものは第2類や第3類に分類されます。
また、冷蔵、冷凍、乾燥といった処理は、HS上は加工とはみなされない点も重要です。これらは保存方法に過ぎず、第一部の範囲内にとどまるケースが多くあります。
一方で、味付けや調理、加工工程が進んだ場合は、第一部から外れ、後続の部や類に移行することになります。
第一部で注意すべき分類ミスの例
第一部では、分類以前に輸入規制や検疫条件が問題となることが多くあります。たとえば、動物性であってもペットフードや加工食品の場合、第一部ではなく別の部に分類されることがあります。
また、副産物やくず肉が食用か非食用かによって、該当する類が変わる点も注意が必要です。用途の違いが分類に直結するため、インボイス上の品名記載は特に重要です。
貿易実務におけるHSコード第一部の重要性
HSコード第一部に該当する貨物は、関税率以上に輸入可否そのものが問題となる場合があります。動植物検疫、食品衛生法、家畜伝染病予防法など、複数の法令が関係するためです。
HSコードの誤りは、単なる関税計算ミスにとどまらず、通関保留や差し戻し、最悪の場合は輸入不可となるリスクもあります。そのため、第一部に該当しそうな商材では、事前教示制度の活用が特に有効です。
第一部を確認すべき取引の例
畜産物や水産物の原材料輸入、食品メーカーの原料調達、飼料や工業用動物性素材の輸出入などでは、第一部の確認が不可欠です。新規商材で動物由来要素が含まれる場合も、早い段階で第一部との関係を整理しておく必要があります。
まとめ

HSコード第一部は、生きた動物や動物性一次産品を扱う、HS体系の基礎となる区分です。分類そのものだけでなく、検疫や衛生規制との関係が極めて深い点が大きな特徴といえます。
次回以降は、第1類から第5類までを個別に取り上げ、それぞれの分類基準や実務上の注意点を詳しく解説していきます。
参考外部リンク
HSコード第一部を正確に理解・確認するためには、一次情報にあたることが重要です。以下は、分類確認や実務判断の際によく参照される公的・準公的な情報源です。
・世界税関機構(WCO)HS条約・HS解説
https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/overview/what-is-the-harmonized-system.aspx
HSコード体系そのものを管理している機関です。HSの基本構造や考え方を確認する際の根拠資料として有用です。
・日本税関(関税率表・品目分類)
https://www.customs.go.jp/tariff/index.htm
日本におけるHSコード(関税率表)を確認できます。第一部(01〜05類)の国内での取扱いを調べる際に必須のサイトです。
・税関 事前教示制度(品目分類)
https://www.customs.go.jp/kyotsu/kyoji.htm
HSコード判断に迷う場合に活用できる制度です。第一部のように規制が絡む品目では特に重要です。
・厚生労働省 動物由来製品・食品輸入規制
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu/index.html
肉類・乳製品・卵など、第2類・第4類に該当する品目の輸入時に関係する規制情報を確認できます。
・農林水産省 動物検疫所
https://www.maff.go.jp/aqs/
生きた動物(第1類)や畜産物の輸出入に関する検疫情報を確認する際の公式窓口です。