取引で多用される、SWIFT カテゴリ1(MT 1xx)顧客支払・小切手

取引で多用される、SWIFT カテゴリ1(MT 1xx)顧客支払・小切手

SWIFT カテゴリ 1 (MT 1xx)の概要

SWIFTメッセージのカテゴリ1(MT1xx)は、顧客名義の資金移動や小切手に関する取引を対象としています。銀行間の資金移動ではなく、あくまで「顧客から顧客への支払」を処理するための基本カテゴリであり、国際送金や貿易決済において最も頻繁に利用されるメッセージ群です。

送金依頼の単発処理、複数件まとめた一括処理、口座引落による決済、さらに照会や自由書式の連絡など、幅広い取引シナリオをカバーしています。

SWIFT カテゴリ 1 (MT 1xx)の主なメッセージタイプと用途比較

MT番号名称主な用途特徴
MT103単発送金(Single Customer Credit Transfer)国際送金・貿易決済最も広く利用され、契約書やL/Cにも明記されることが多い
MT102複数送金指図(Multiple Customer Credit Transfers)複数件の給与支払や小口送金一括処理で効率化
MT104/107口座振替(Direct Debits)顧客口座からの引落定期的な料金徴収・債権回収に関連
MT195/196照会メッセージ(Queries)送金状況確認や修正依頼エラーや不一致時の確認に必須
MT199自由書式メッセージ(Free Format Message)定型外の事務連絡補足説明や例外的取引をカバー

カテゴリ1、MT1xxでよく使用されるMT番号

MT102 複数顧客送金(Bulk Payment)とは

MT102は「複数の顧客から複数の受取人へ行う送金」をまとめて処理するためのSWIFTメッセージです。
単一送金のMT103に対し、複数件をバッチ形式で一括送信できるのが大きな特徴です。給与支払い、仕入先への複数送金、地方自治体や公共料金の収納など、大量の少額送金が発生する場面で活用されます。

MT102の仕組み
  • 発信銀行が複数の顧客から受けた送金依頼を ひとつの電文(MT102)にまとめる
  • 受取銀行はその内容を展開し、各受取人の口座に入金する。
  • MT103が「1件=1メッセージ」なのに対し、MT102は「N件=1メッセージ」。
  • 銀行システム間での処理量削減や通信コスト節約のメリットがある。
MT102における、実務上の注意点
  • 処理効率は高いが、透明性はやや低い
    1件ごとに独立したMT103の方が追跡しやすい。大口決済や国際貿易ではMT103が好まれる。
  • エラー処理の難しさ
    MT102内の1件に誤りがあると、全体が遅延・保留になることがある。
  • 用途の限定
    国際商取引よりも、給与・公共支払など「多数の少額取引」でよく使われる。
  • SWIFT gpi(Global Payments Innovation)の文脈
    gpiトラッキングの主役はMT103。MT102は補助的な役割に留まっている。

MT103 単一顧客送金とは

国際貿易では、契約書の「支払条件」の欄に 「Payment by SWIFT MT103」 と記載されることがあります。これは「送金は銀行経由でSWIFT MT103メッセージに基づき処理される」という意味であり、輸出者にとって確実な資金受取の裏付けになります。

たとえば、輸入者が船荷証券(B/L)と引換えに代金を支払う場合、輸入者の銀行は輸出者の銀行に対し、MT103を発行して送金します。このとき、送金経路に複数の中継銀行が関わるため、カットオフタイム(締め時間)の遵守中継銀行・受取銀行の整合性が重要となります。

MT103についての詳しい内容については、こちらをご覧ください。

MT110 小切手送金依頼

MT110は、顧客からの依頼に基づいて小切手の発行や送金を依頼するためのSWIFTメッセージです。
かつては国際決済で頻繁に利用されましたが、近年は電信送金(MT103など)が主流となり、利用頻度は減少しています。それでも一部地域や取引先では小切手文化が根強く、補助的に使われ続けています。

MT110の仕組み
  • 顧客が銀行に対して「小切手を発行し、受取人に送付してほしい」と依頼。
  • 発信銀行はSWIFTを通じて、取引先銀行に対し小切手発行依頼を伝える。
  • 受取銀行は小切手を作成し、受益者へ交付または郵送する。

要するに「電子メッセージで小切手のやり取りを銀行間に指示する」仕組みです。

MT110の実務上の注意点
  • 処理に時間がかかる
    電信送金のような即時性はなく、発行・送付・現地での取立に日数がかかる。
  • 紛失・盗難リスク
    郵送途中の事故に備えて、受取確認や追跡が必要。
  • 為替レートのタイムラグ
    小切手発行から取立までの間に為替変動が生じることもある。
  • 国際取引では非効率
    現代の貿易や金融実務では、MT103(電信送金)が事実上の標準。
  • 法的効力の違い
    国ごとに小切手の扱いが異なり、決済スピードや強制力に差がある。
MT110のまとめ

MT110は「小切手送金依頼」のためのメッセージであり、かつては国際決済で重宝されました。
現在は電信送金(MT103)が主流ですが、小切手文化が残る国や特定の取引先では、依然として利用されています。
ただし、処理の遅延や紛失リスクを踏まえ、利用は限定的になりつつあります。

MT195 / MT196 照会・回答

MT195、およびMT196についての詳しい内容については、こちらをご覧ください。

MT199 自由書式メッセージ

MT199についての詳しい内容については、こちらをご覧ください。

カテゴリ1 MT 1xxに含まれるメッセージ一覧

メッセージの種類Description説明
MT 101Request for Transfer譲渡の要求
MT 102Multiple Customer Credit Transfer複数の顧客転送
MT 102+(STP)Multiple Customer Credit Transfer複数の顧客転送 (STP)
MT 103Single Customer Credit Transfer単一顧客クレジット転送
MT 103+(REMIT)Single Customer Credit Transfer(REMIT)単一顧客クレジット転送 (REMIT)
MT 103+(STP)Single Customer Credit Transfer(STP)単一顧客クレジット転送 (STP)
MT 104Direct Debit and Request for Debit Transfer Message 口座振替とデビット転送メッセージの要求
MT 105EDIFACT EnvelopeEDIFACT 封筒
MT 106EDIFACT EnvelopeEDIFACT 封筒
MT 107General Direct Debit Message一般的な口座引落メッセージ
MT 110Advice of Cheque(s)小切手のアドバイス
MT 111Request for Stop Payment of a Cheque小切手の支払停止要求
MT 112Status of a Request for Stop Payment of a Cheque小切手の支払停止要求の状態
MT 121Multiple Interbank Funds Transfer (EDIFACT FINPAY Message)マルチバンク・インターバンク・ファンド・トランスファー(EDIFACT FINPAY)
MT 190Advice of Charges, Interest and Other Adjustments料金、利息、その他の調整に関するアドバイス
MT 191Request for Payment of Charges, Interest and Other Expenses料金、利息、その他の経費の支払いの依頼
MT 192Request for Cancellationキャンセルの要求
MT 195Queriesクエリ
MT 196Answers回答
MT 198
Proprietary Message
独自のメッセージ
MT 199Free Format Message自由形式メッセージ

まとめ

SWIFT Category 1(MT1xx)は、顧客の資金移動や小切手処理に関わる基本カテゴリであり、特に国際送金・貿易決済の中核を担っています。
MT103をはじめとする各メッセージは、日常的な資金移動から大規模な商取引まで幅広く利用され、契約実務や銀行運用に直結する重要な役割を果たしています。

2025年8月10日 | 2025年10月29日