LOIとは大口国際取引における「買主の意思表示」で、売主に対して買主が発行するものです。
LOIの役割
LOI(Letter of Intent)は、買主が売主に対して「この条件で購入を検討している」という意思を公式に伝える書類です。いきなり契約するのではなく、まずは 本気度を示しつつ、売主に正式なオファーを出させる前段階の文書 という位置づけになります。
場合によっては ICPO(Irrevocable Corporate Purchase Order)と呼ばれることもあります。
LOIに記載される主な内容
実務で使われるLOIには、以下のような基本的な項目が盛り込まれます。
- 商品情報:商品名、仕様(例:銅スクラップ 99.97%など)、原産地
- 品質条件:求める品質基準や検査方法(SGS、CCICなど)
- 数量:試験取引(Trial)と年間契約数量
- 契約期間:通常は1年単位で提示されることが多い
- 価格:目標価格や市場指標との連動条件
- 支払方法:DLC、SBLC、BGなどの保証、MT103やMT700での決済条件
- 納入条件:CIF港指定(例:日本、大阪南港CIF)など
- プロシジャー:取引の進め方(SPA締結の前に何を出すか等)
さらに、買主情報(会社名、登録番号、住所、担当者連絡先)と、買主のサイン・会社印が必須です。
LOIに見られる独特の表現
LOIの前書きには、しばしば強い表現が盛り込まれることがあります。代表的なのが、
「偽証罪に問われることを承知の上で、以下のとおり購入を検討します」
という一文です。
国際取引では、実際には購入能力がないのにLOIを発行し、価格情報だけを引き出すブローカーやダミー会社も多数存在しています。このような状況を避けるため、買主が「本気である」ことを示すために、強い表現をあえて用いるのです。
もっとも、実際に「偽証罪」として刑事責任に問われることはほぼなく、法的拘束力というよりも心理的な拘束力として機能しているのが実態です。あくまで誠意の表明として理解し、契約そのものの効力とは切り離して捉える必要があります。
添付書類として求められるもの
厳格な取引では、LOIに以下のような資料を添付するよう売主から求められることもあります。
- 代表者(CEOなど)のパスポートコピー
- 公的機関が発行した会社登録証や営業ライセンス
- 過去の実績証明(Past Performance Document)
特に、Past Performanceは次の段階へ進むための信用情報として大きな影響をあたえます。これらは「買主が実在し、LOIに記載された内容に対しての支払い能力を持つか」を確認するための材料として強みを持っています。
実際の事例から
過去にあったケースとして、銅粉末(Copper Powder)の長期取引を目的に、
- 3,000MTの試験取引
- 年間6万トンの本契約
- 支払いはDLCを保証とし、検査後にMT103で決済
- 契約期間は1年、CIF中国港渡し
といった具体的条件が盛り込まれていました。つまり、LOIの段階で「ほぼ契約の骨格」が示されるのです。このLOIを受領した売主は、条件を確認し次の段階、(SCOまたはFCO)に進みます。
まとめ
LOIは「まだ契約ではない」が「取引の出発点」となる重要書類です。内容が具体的であればあるほど、売主は買主に対して信頼を持ちやすく、次のステップ(SCO → FCO → SPA)へと進みやすくなります。