SCO(Soft Corporate Offer)とFCO(Full Corporate Offer)とは?
LOIの記事でも述べた通り、海外取引では、買主と売主は次のようなステップを踏むのが一般的です。
- 買主が LOI(購入意向書) を提出
- 売主が SCO(Soft Corporate Offer) を提示
- 双方で条件を協議・調整
- 売主が FCO(Full Corporate Offer) を提示
- 買主がFCOに署名し、契約(SPA)へ進む
私自身もこの流れを何度も経験してきました。
SCOの役割
SCOはLOIを受領した売主が買主へ提出する「仮の提案書」のようなものです。
売主が提示できる基本条件(価格・数量・納期など)が記載され、買主はそれを叩き台にして交渉を進めます。
SCOが提出することで、買主と売主の双方は「まずは話し合える土台」を共有できることになります。
FCOに至る段階
売主と買主の双方が取引ついての協議を経て条件が固まると、売主はFCOを買主へ提出します。これは「最終的な正式オファー」であり、買主が署名すれば契約は大きく前進します。
FCOには数量や価格の他に、決済条件(TT、LC、DLC、SBLCなど)、積地港や仕向港といった細かい情報も記載されるため、契約書とほぼ同等の重みを持ちます。
いきなりFCOが来るケース
実務では必ずしもSCOを経由するとは限らないことがあります。買主が売主へLOIを提出したのちに、売主からFCOが提出することもあれば、もっと極端に「買主である」という情報が漏れただけで、いきなりFCOが送りつけられることもあります。
この場合、条件を交渉する余地は小さく、売主のペースで取引が進みがちになり、売主に供給力や信用がない場合は、買主に疑心が走るため破綻しやすくなります。
よくあるトラブル事例
海外取引の現場では、SCOやFCOにまつわるトラブルも少なくありません。典型例をいくつか挙げます。
- FCOが乱発される
売主から改定されたFCOが次々に届き、買主が混乱する。どれが信頼できる提案なのか見極めが難しくなります。 - 条件が曖昧なままサインを迫られる
FCOに未協議で不明確な部分が残っていても「早く署名してほしい」と急かされる場合、買主は不利な条件を押し付けられるリスクがあるため、トラブルの元になりやすくなります。 - 実態のないFCO
中には商品を持っていないのに、FCOを乱発するブローカーも存在します。もちろん、全てではありませんが、契約時に商品を用意できない事もあります。 - 決済条件のすり替え
例えば最初に提示された条件(LCなど)が、最終段階で「TT先払い」に変えられている場合もあります。買主はサインの前にFCOに記載されている内容を確認しておく必要があります。
FCOを受け取ったときのチェックリスト
トラブルを避けるために、FCOを受け取ったら必ず次の点を確認しましょう。
- 売主の会社情報が正確か(登記、住所、連絡先)
- 商品の詳細仕様(品質規格、数量、サイズ、重量)が具体的に明記されているか
- 価格条件が市場相場と比較して極端にずれていないか
- 出荷条件(納期、積地港・仕向港、輸送方法)が現実的か
- 決済条件(LC、DLC、SBLCなど)が途中で変更されていないか
- FCOの有効期限が記載されているか
- 曖昧な表現や抜け落ちがないか(「約」「おおよそ」などの表現に注意)
- 売主が実際に商品を保有・調達できる信頼できる相手か
成功談:FCOを精査してトラブルを回避したケース
とある取引で、受領したFCOを確認したところ、数量の表記が「最大 up to 100,000 MT/月」と曖昧になっていました。一見すると大規模な取引が可能に見えますが、これは「必ずしもその数量を供給する保証はない」という意味合いが含まれています。
曖昧な数量ではロックする資金に無駄が出る可能性もあるため、売主に「供給可能な最低数量を明確にしてほしい」と依頼。結果として実際に継続供給できるのは月当たり20,000 MTまでだと判明しました。
内容を精査せずに署名していた場合、買主は大口供給を期待して契約したのに、実際には小ロットしか入ってこないという事態になっていました。
まとめ
SCOとFCOは国際取引に欠かせないステップです。
- SCO:交渉の入口となる「暫定的な提案」
- FCO:契約直前の「最終オファー」
- 実務では、SCOを飛ばしていきなりFCOが届くこともある
ただし、FCOを受け取ったときは油断せず、必ず細部まで精査する必要があります。必要なら売主に修正を求めることがトラブル回避につながります。現場では「FCOをどう扱うか」で成否が分かれる場面が少なくありません。冷静に、そして慎重に対応することが成功への第一歩です。