SCOとFCOとは?

SCOとFCOとは?

SCO(Soft Corporate Offer)FCO(Full Corporate Offer)とは?

LOIの記事でも述べた通り、海外取引では、買主と売主は次のようなステップを踏むのが一般的です。

  1. 買主が LOI(購入意向書) を提出
  2. 売主が SCO(Soft Corporate Offer) を提示
  3. 双方で条件を協議・調整
  4. 売主が FCO(Full Corporate Offer) を提示
  5. 買主がFCOに署名し、契約(SPA)へ進む

私自身もこの流れを何度も経験してきました。

SCOの役割

SCOはLOIを受領した売主が買主へ提出する「仮の提案書」のようなものです。
売主が提示できる基本条件(価格・数量・納期など)が記載され、買主はそれを叩き台にして交渉を進めます。

SCOが提出することで、買主と売主の双方は「まずは話し合える土台」を共有できることになります。

FCOに至る段階

売主と買主の双方が取引ついての協議を経て条件が固まると、売主はFCOを買主へ提出します。これは「最終的な正式オファー」であり、買主が署名すれば契約は大きく前進します。

FCOには数量や価格の他に、決済条件(TT、LC、DLC、SBLCなど)、積地港や仕向港といった細かい情報も記載されるため、契約書とほぼ同等の重みを持ちます。

いきなりFCOが来るケース

実務では必ずしもSCOを経由するとは限らないことがあります。買主が売主へLOIを提出したのちに、売主からFCOが提出することもあれば、もっと極端に「買主である」という情報が漏れただけで、いきなりFCOが送りつけられることもあります。

この場合、条件を交渉する余地は小さく、売主のペースで取引が進みがちになり、売主に供給力や信用がない場合は、買主に疑心が走るため破綻しやすくなります。

よくあるトラブル事例

海外取引の現場では、SCOやFCOにまつわるトラブルも少なくありません。典型例をいくつか挙げます。

  • FCOが乱発される
    売主から改定されたFCOが次々に届き、買主が混乱する。どれが信頼できる提案なのか見極めが難しくなります。
  • 条件が曖昧なままサインを迫られる
    FCOに未協議で不明確な部分が残っていても「早く署名してほしい」と急かされる場合、買主は不利な条件を押し付けられるリスクがあるため、トラブルの元になりやすくなります。
  • 実態のないFCO
    中には商品を持っていないのに、FCOを乱発するブローカーも存在します。もちろん、全てではありませんが、契約時に商品を用意できない事もあります。
  • 決済条件のすり替え
    例えば最初に提示された条件(LCなど)が、最終段階で「TT先払い」に変えられている場合もあります。買主はサインの前にFCOに記載されている内容を確認しておく必要があります。

FCOを受け取ったときのチェックリスト

トラブルを避けるために、FCOを受け取ったら必ず次の点を確認しましょう。

  • 売主の会社情報が正確か(登記、住所、連絡先)
  • 商品の詳細仕様(品質規格、数量、サイズ、重量)が具体的に明記されているか
  • 価格条件が市場相場と比較して極端にずれていないか
  • 出荷条件(納期、積地港・仕向港、輸送方法)が現実的か
  • 決済条件(LC、DLC、SBLCなど)が途中で変更されていないか
  • FCOの有効期限が記載されているか
  • 曖昧な表現や抜け落ちがないか(「約」「おおよそ」などの表現に注意)
  • 売主が実際に商品を保有・調達できる信頼できる相手か

成功談:FCOを精査してトラブルを回避したケース

とある取引で、受領したFCOを確認したところ、数量の表記が「最大 up to 100,000 MT/月」と曖昧になっていました。一見すると大規模な取引が可能に見えますが、これは「必ずしもその数量を供給する保証はない」という意味合いが含まれています。

曖昧な数量ではロックする資金に無駄が出る可能性もあるため、売主に「供給可能な最低数量を明確にしてほしい」と依頼。結果として実際に継続供給できるのは月当たり20,000 MTまでだと判明しました。

内容を精査せずに署名していた場合、買主は大口供給を期待して契約したのに、実際には小ロットしか入ってこないという事態になっていました。

まとめ

SCOとFCOは国際取引に欠かせないステップです。

  • SCO:交渉の入口となる「暫定的な提案」
  • FCO:契約直前の「最終オファー」
  • 実務では、SCOを飛ばしていきなりFCOが届くこともある

ただし、FCOを受け取ったときは油断せず、必ず細部まで精査する必要があります。必要なら売主に修正を求めることがトラブル回避につながります。現場では「FCOをどう扱うか」で成否が分かれる場面が少なくありません。冷静に、そして慎重に対応することが成功への第一歩です。

2023年8月27日 | 2025年9月9日