国際送金では、すべての銀行同士が直接つながっているわけではありません。とくに異なる通貨・地域をまたぐ送金では、資金ルートの途中に別の銀行が入り、送金を仲介するケースが一般的です。この役割を担うのが中継銀行です。国際貿易や海外送金を利用する企業にとって、中継銀行の仕組みや手数料体系を正しく理解しておくことは重要です。
中継銀行(intermediary bank)とは
中継銀行とは、送金銀行と受取銀行の間に入り、資金をつなぐ役割を持つ銀行です。銀行間に直接のコルレス契約(Nostro/Vostro関係)がない場合、中継銀行のネットワークを利用して資金を迂回させることで、最終的な受取銀行まで資金を届けます。
これにより、国際金融ネットワークが複雑であっても、銀行同士が直接口座関係を持っていない場合でも送金が可能になります。
中継銀行が必要になる理由
中継銀行の利用が発生する主な理由は次の通りです。
- 送金銀行と受取銀行が同じ通貨のNostro口座を保有していない
- 両者のコルレス契約が存在しない
- 特定通貨の決済業務を行う銀行が限定されている(例:米ドル決済は多くが米銀に集中)
- 地理・規制・取引量の観点で、銀行同士の直接ルートを構築するコストが高い
このため、多くの海外送金は中継銀行を1つ、または複数経由しながら目的地へ到達します。
送金ルートの仕組み
以下は、送金銀行 → 中継銀行 → 受取銀行 の典型的なフローを簡潔に示した図です。
ここまでで、中継銀行が「送金銀行と受取銀行の間をつなぐ役割」を持つこと、そして直接のコルレス関係がない場合に複数の銀行を経由して資金が動くことを見てきました。ただ、文章だけだと送金ルートが頭の中で整理しづらい場面もあります。
そこで次の図では、実務でよくある2つのパターンを並べて示します。
1つ目は、一般通貨で中継銀行が複数段入る多経路ルートです。
2つ目は、米ドル送金で典型的な「地域中継銀行 → USDクリアリング銀行(米系コルレス)」を通る構造です。
どの地点でNostro/Vostro口座が使われ、どこで手数料や遅延要因が発生しやすいかを視覚的に確認できるようにしているので、図を見ながら本文の内容と照らし合わせてみてください。
Nostro/Vostro口座との関係
中継銀行は、送金銀行または受取銀行のNostro口座を保有している金融機関であることが多く、この口座を介して資金が清算されます。銀行はすべての通貨についてNostro口座を持てるわけではなく、その結果として中継銀行の利用が必須となります。
中継銀行手数料が発生する理由
中継銀行は仲介のための決済インフラとリスク管理を提供するため、手数料(lifting fee)が発生します。送金側負担・受取側負担・折半など、手数料負担方法はSWIFT MT103の手数料区分(SHA/OUR/BEN)によって異なります。
手数料が複数回発生するのは、送金ルートに複数の中継銀行が含まれる場合です。国際送金が高額になる理由のひとつに、こうした多段的な決済経路が挙げられます。
中継銀行を利用するデメリット
・送金に時間がかかる(1〜5営業日など)
・手数料が高くなる場合がある
・ルートが公開されないため、追跡が難しいことがある
・規制チェック(制裁・AML)により遅延することがある
とくに米ドル送金は米国内銀行の審査が厳しいため遅延しやすい傾向があります。
中継銀行の指定が必要なケース
以下のような状況では、送金依頼時に中継銀行を明示する必要があります。
・受取銀行が自前のNostroルートを持たない
・受取側から「中継銀行を指定してください」と案内される
・特定通貨の標準決済銀行が決まっている(USD、EURなど)
企業の貿易実務では、取引相手から中継銀行情報(銀行名、SWIFTコード)が事前に提供されることが一般的です。
中継銀行のSWIFTコードと確認方法
中継銀行の情報は以下で確認できます。
・受取銀行が提供する送金ガイド
・請求書や契約書に記載された受取情報
・SWIFT公式のBIC検索データベース
| 確認方法 | どこで見れる / 何を使う | 得られる情報 | 信頼性 | 実務での使いどころ | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 受取銀行の送金ガイド(Payment/Remittance Instructions) | 受取銀行の公式案内、メール、PDF | 中継銀行名、BIC、口座番号、指定通貨ルート | 高い | 受取側が「このルートで送って」と指定している場合の第一候補 | 古いガイドを使っていないか日付確認。支店BICと本店BICの取り違えに注意 |
| 取引相手(受取人)からの送金指示 | インボイス、契約書、送金依頼書、相手の口座情報 | 受取銀行BIC+中継銀行BIC(必要な場合) | 中〜高 | 貿易決済で相手の指示どおり送金するケース | 相手の記載ミスがあることも。1文字違いで不着になるので送金前に照合 |
| SWIFT公式BIC検索(Refinitiv/SWIFT Registryなど) | SWIFT BIC Directory、銀行のBIC検索ページ | 銀行の正式BIC、支店コード、所在地 | 高い | ガイドや相手の提示BICを検証したい時 | 有料/閲覧制限がある場合あり。銀行名の類似に注意 |
| 送金銀行の窓口・外為担当への照会 | 送金銀行の外為担当、ネット送金画面の候補表示 | 推奨ルート、中継銀行BIC、必要入力項目 | 高い | ルート不明・通貨が特殊・急ぎの送金時 | 銀行によっては「指定がないと自動選択」されるので、指示したい場合は明示 |
| SWIFT gpi追跡(送金後の確認) | gpiトラッカー、送金銀行の追跡画面 | 実際に経由した中継銀行、処理状況 | 高い(事後) | 送金遅延・手数料差引の理由調査 | 送金前のルート確定には使えない。あくまで事後検証 |
| 過去取引のMT103控え | 自社の送金控え、銀行からのSWIFTコピー | 実際に使われた中継銀行BIC(56A/57A等) | 高い | 同じ相手・同じ通貨で再送する時の再現 | 取引当時と現在でルート変更されていることがあるため、最新指示と突合 |
| コルレス銀行の一般的ハブ知識 | 社内ナレッジ、銀行別の標準ルート | 通貨ごとの主要クリアリング銀行候補 | 中 | USD/EURなど「慣例ルート」を推測する時 | 推測に留まる。相手指定がある場合はそちら優先 |
送金前に正確なBICコードを確認することで、送金遅延を防ぎやすくなります。
- 中継銀行BICは、受取銀行側が「指定必須」としている時のみ入力するケースが多いです。
- USD送金はクリアリング構造が絡むため、相手から中継銀行が指定されやすい通貨です。
- BICは1文字でも違うと別銀行扱いになるので、送金前に「相手指示 × SWIFT公式 × 送金銀行候補」のどれかで照合すると事故が減ります。
SWIFT gpiの普及で何が変わるか
従来の国際送金は、途中でどの銀行を経由しているのか、どこで止まっているのかを送金側が把握できませんでした。そのため、「資金が届かない」「どこで遅延しているか分からない」といった問い合わせが頻発し、国際送金の透明性は大きな課題でした。
SWIFT gpi(Global Payments Innovation)は、この不透明さを改善するために2017年以降段階的に導入された仕組みで、現在は国際送金の大部分がgpi対応となっています。gpiの普及により、企業や銀行にとって次のような変化が生まれました。
1. 送金ルートの可視化(トラッキング番号で追跡可能)
従来は「中継銀行がどこか分からない」状態でしたが、gpiでは各送金に固有の「トラッキングID」が付与されます。これにより、「どの中継銀行を通ったか」、「現在どの銀行で処理されているか」、「どこで遅延しているか」、「処理に要した時間(タイムスタンプ)」がリアルタイムで追跡できます。
※特にUSDやEURなど、多段ルートになりやすい通貨で効果が大きいです。
2. 手数料の透明化(lifting fee の内訳が見える)
gpiでは、途中で差し引かれる「中継銀行のlifting fee」、「受取側の着金手数料」などの内訳が一覧で表示されるため、「どこの銀行がいくら引いたのか」が明確になります。これにより、過剰な手数料差引や予期しないコスト発生の原因が特定しやすくなりました。
3. 送金時間の短縮(SLA管理の改善)
gpi導入後、主要銀行は「送金処理の標準時間」を内部で管理し、遅延が起きた地点を可視化できます。
その結果、「各銀行が処理スピードを改善」、「1営業日以内に着金するケースが増加」、「“Where is my payment?” 問い合わせが大幅減少」といった効果が出ています。
とくに、従来数日かかっていたアジア〜欧州間の送金でも、1日以内で処理される例が増えています。
4. 不着・組戻しの調査が迅速化
不着(BEN未着)の調査は、以前は「各中継銀行に照会 → 返答待ち → 次の銀行へ照会」と順番に確認する必要があり、数週間かかることもありました。
gpiではトレーサーにより、
・どの銀行まで到達したか
・どこで返送(Return)が発生したか
・どこのチェックで止まったか(AML・制裁など)
が即座に分かるため、組戻しや調査がスピードアップします。
5. 受取側とのトラブルが減る
実務ではよく「送ったはずなのに届いていない」、「受取側が銀行に問い合わせても分からないと言われた」といったトラブルがありましたが、gpiでは進捗を共有できるため、送受双方で同じ情報を見ながら状況を共有できます。
特に貿易実務(L/C決済・TT送金・前払い)ではトラブル削減効果が大きいです。
6. 中継銀行の審査状況が“見える化”される
gpiでは「“Pending Compliance Check”」、「“Under Review”」など、ステータス表示が導入されており、
「制裁スクリーニングで止まっているのか」、「銀行営業時間外なのか」などの理由が把握しやすくなりました。
米ドル送金で止まりやすい“USクリアリングでのチェック遅延”が把握できるのは非常に大きなメリットです。
7. gpi未対応銀行が相対的に不利になる
現在は主要銀行の多くがgpi対応ですが、一部の地域銀行や特定国の銀行では未導入の例もあります。
gpiルートに組み込まれない銀行は、
・透明性が低い
・処理が遅れやすい
・顧客満足度が下がる
という評価につながりやすいため、競争力の差が生まれています。
SWIFT gpiの普及まとめ
SWIFT gpiの普及により、国際送金は「見えないブラックボックス」から「可視化された追跡可能なインフラ」へと変わりました。送金側・受取側ともに透明性とスピードが向上し、中継銀行を挟む複雑なルートでもトラブルの発生率が大幅に低減しています。
まとめ

中継銀行は、銀行同士の直接ルートが存在しない場合に資金を橋渡しする重要な役割を担っています。国際送金における複雑な資金ルートを成立させるための必須インフラであり、その仕組みを理解することで送金遅延や手数料トラブルを未然に防ぎやすくなります。企業の国際決済に関わる担当者は、Nostro口座、中継銀行、手数料体系をセットで理解しておくことが大切です。