2025年時点でも、国際間の資金移動にはクロスボーダー決済が広く使われています。近年は高速化・透明性向上が進む一方、依然として全体像は複雑です。とくにSWIFTネットワーク、コルレス銀行、中継銀行、ノストロ・ヴォストロ口座の関係は、専門用語が多いため理解が難しいと感じる方も多いです。この記事では、こうした国際送金の基本構造をわかりやすく説明し、2025年の動向を交えて整理します。
クロスボーダー決済とは
クロスボーダー決済は、国境を越えて資金を移動する仕組みです。送金銀行と受取銀行は国が異なるため、貨幣の体系・決済インフラ・規制が一致しません。このため、両国の銀行をつなぐ中間機能が必要になります。
代表的な役割は次のとおりです。
・国際銀行間ネットワークを提供する組織(SWIFT)
・代理銀行として送金を仲介するコルレス銀行
・外国通貨を保有するためのノストロ・ヴォストロ口座
・手数料負担を規定する送金方式(SHA・OUR・BEN)
SWIFTの役割
SWIFTは、世界200以上の国と地域の金融機関が利用するメッセージ送信ネットワークです。資金を移動させる機能を直接提供するわけではありませんが、銀行同士が安全に送金指示を伝えるための通信基盤として不可欠です。
2025年時点では、SWIFT gpi(Global Payments Innovation)が標準化され、追跡機能や着金スピードの改善が進んでいます。従来よりも透明性が高まり、送金状況をリアルタイムに近い形で把握できるようになりました。
| メッセージ | 用途 | 内容の概要 |
|---|---|---|
| MT103 | 個別送金 | 送金人 → 受取人への単独送金指示。gpi追跡の中心。 |
| MT103 REMIT | 詳細請求情報付き送金 | ISO20022移行で利用増。請求書情報を同梱可能。 |
| MT202 | 銀行間送金 | ノストロ資金移動や流動性調整。 |
| MT202 COV | カバー送金 | MT103の裏で動く銀行間カバー処理。規制強化後に標準化。 |
| MT199 | フリーフォーマット | 補足情報や照会で使われる自由形式メッセージ。 |
| MT999 | フリーフォーマット(汎用) | 異常系や追加説明で使用される汎用メッセージ。 |
ノストロ口座とヴォストロ口座
クロスボーダー決済の中核となるのが、ノストロ口座とヴォストロ口座です。
・ノストロ口座:自国銀行が、別の国の銀行に開設している外貨建て口座
・ヴォストロ口座:相手銀行から見た場合の呼び方で、受け入れている口座を指す
どちらも同じ口座ですが、視点の違いで名称が変わります。
例えば、日本の銀行Aが米国銀行Bに米ドル口座を持つ場合、日本側からはノストロ口座、米国側からはヴォストロ口座になります。
この口座残高で送金の実行可否が決まるため、銀行は外貨流動性の管理が重要になります。
| 項目 | ノストロ口座(Nostro) | ヴォストロ口座(Vostro) |
|---|---|---|
| 意味 | 自国銀行が他国銀行に保有する外貨口座 | 他国銀行から見た受け入れ口座 |
| 誰の視点か | 自行視点 | 相手行視点 |
| 通貨 | 外貨で保有 | 自国通貨で受け入れる |
| 主な役割 | 外貨決済・決済残高管理 | 取引相手の資金管理 |
| 決済に必要か | 必須 | 必須 |
コルレス銀行と中継銀行
送金側と受取側の銀行が直接ノストロ口座関係を持っていない場合、第三の銀行が仲介します。その銀行をコルレス銀行(Correspondent Bank)と呼びます。
また、複数の銀行が関与する送金経路の途中に入る銀行は中継銀行と呼ばれます。つまり、中継銀行は広義ではコルレス銀行の一種ですが、送金経路のどこに位置するかで呼称が異なります。
2025年現在、AML(マネーロンダリング対策)の強化や制裁リスクの増加により、コルレス銀行ネットワークは慎重な管理が求められています。
クロスボーダー決済の全体フロー
以下は典型的な国際送金の流れです。
- 送金人が送金銀行に資金を依頼
- 送金銀行がSWIFTを通じて送金指示(例えばMT103)を発行
- 必要に応じてコルレス銀行・中継銀行が処理
- 受取銀行が着金処理を実行
- 受取人へ資金が振り込まれる
この一連の流れは、送金方式(OUR・SHA・BEN)によって手数料の負担が異なり、受取金額にも影響します。
| 方式 | 手数料負担者 | 受取金額 | よく使われる場面 |
|---|---|---|---|
| OUR | 送金人がすべて負担 | 受取人は満額を受け取る | 商取引・満額着金必須の場合 |
| SHA | 手数料を折半 | 受取人は中継銀行分を差し引かれる | 個人送金・一般的国際送金 |
| BEN | 受取人が全額負担 | 手数料控除後に着金 | 海外からの大量受取など |
2025年のクロスボーダー決済トレンド
2025年は、以下の潮流が強まっています。
・SWIFT gpiの利用拡大
・ISO 20022移行に伴う情報量の増加
・AML規制の強化による審査プロセスの厳格化
・ステーブルコイン・中央銀行デジタル通貨(CBDC)の台頭
・中小銀行によるコルレス銀行依存度の見直し
特にISO 20022によって送金メッセージが詳細化され、透明性が向上した点は大きな変化です。
クロスボーダー決済が遅延する主な理由
国際送金は国内送金に比べて時間がかかることが多いです。よく見られる理由は次のとおりです。
・中継銀行が複数介在する
・AML審査で追加チェックが必要
・ノストロ口座の流動性不足
・休日カレンダー(日本・米国など)が異なる
・受取銀行の情報不足(住所不備、支店コード不備など)
SWIFT gpiの普及で遅延は減少しているものの、依然として完全には解消されていません。
| 遅延理由 | 詳細 | 実務での対策 |
|---|---|---|
| 中継銀行が多い | 経路が複雑で審査も増える | IBAN・BIC・受取銀行情報の精度向上 |
| AML審査 | 国際規制により追加確認が入る | 送金目的・請求書等の証憑を事前提出 |
| ノストロ残高不足 | 銀行が外貨流動性不足で決済が止まる | 送金前に銀行へ確認する |
| 祝日・営業時間差 | 休日が異なるため処理が翌営業日へ | クロスボーダーの休日カレンダーを確認 |
| beneficiary情報不足 | 住所・支店番号・IBAN不備 | 送金人側で情報の正確性を確認 |
まとめ

クロスボーダー決済は、複数の銀行・ネットワーク・口座体系が関わるため複雑に見えますが、基本構造は「SWIFTで指示を伝え、コルレス銀行が仲介し、ノストロ口座から決済する」という流れで整理できます。2025年は規制強化とデジタル化の両方が進むため、透明性と高速性がさらに向上すると考えられます。