MT103とMT202の違いをわかりやすく解説|送金構造・手数料・事例まで丁寧に比較

MT103とMT202の違いをわかりやすく解説|送金構造・手数料・事例まで丁寧に比較

国際送金の現場では、MT103MT202という二つのSWIFTメッセージが頻繁に使用されます。どちらも銀行間決済に関わるメッセージですが、役割は明確に分かれており、誤解されるケースも少なくありません。この記事では、それぞれの特徴、構造、使い分け、そして実際の事例を通して、違いを丁寧に整理します。

MT103とは何か

MT103は、顧客送金を指示するためのメッセージで、送金依頼者から受取人までの詳細が含まれています。送金依頼人の氏名、住所、受取人の口座情報、送金目的、金額など、KYCや資金追跡に必要な情報がすべて含まれる点が特徴です。

一般的に、最終受取人に資金が届く取引において、MT103はシステム上の「資金の証拠」とされ、銀行間でトレーサーを発行するときにも参照されます。

MT202とは何か

MT202は銀行間の決済指示に使用されるメッセージで、顧客情報は含まれません。銀行同士が資金を移動させるためのメッセージで、口座名義や個人情報とは無関係です。

2009年以降はAML強化のため、顧客情報を付加したMT202 COV(Cover Payment)という形式が生まれ、従来のMT202とは使い分けが進んでいます。

COV(Cover Payment)とは?

COV(Cover Payment)=資金決済を別ルートで補完する方式のことです。つまり、

・顧客情報を運ぶメッセージ(MT103)
・資金だけを決済するメッセージ(MT202 COV)

この2つを 分離して送る のがカバー方式です。

なぜCOVが必要なのか?

2000年代は「カバー決済」で資金だけ先に動き、顧客情報(誰が誰に送ったか)が銀行チェーンの途中で欠落し、AML・テロ資金規制上の問題が生じていました。そこでSWIFTは2009年に MT202 COV を導入し、

・資金決済用MT202に
・MT103由来の顧客情報を付加する

ことで透明性を確保しました。要するにCOVとはCover(カバー決済)方式のための顧客情報付きMT202
MT202 COVという意味です。

MT103とMT202の明確な違い

項目MT103MT202(および202 COV)
用途顧客送金銀行間決済
情報量送金依頼者・受取人が含まれる顧客情報なし(202 COVは例外)
追跡トレーサーで個別特定が容易個人情報がないため追跡は困難
典型的利用一般顧客の海外送金、貿易決済ノストロ口座の資金移動、銀行同士の精算
AML対応送金者情報が必須202は情報が少ないため制限が強い

MT202 COVとは

2009年のSWIFT標準改定で導入された形式で、銀行同士の決済メッセージに顧客情報が付随します。これは、カバー決済の過程で顧客情報が欠落することによるAMLリスクに対応するためのもので、現在広く利用されています。

送金の流れを比較する

以下はシンプルな送金プロセスの比較です。

MT103方式

  1. 送金依頼人がA銀行へ送金を依頼
  2. A銀行がMT103を作成
  3. 中継銀行(必要な場合)を経由
  4. 受取銀行が資金を着金
  5. 受取人の口座へ入金

この方式では、MT103に受取人情報が含まれているため、透明性が高く、送金トラブル時にも追跡しやすい点が強みです。

MT202 COV方式(カバー決済)

  1. A銀行が受取銀行へMT103を送信
  2. 同時に、A銀行とコルレス銀行間でMT202 COVを送信
  3. コルレス銀行が資金を受取銀行へ送金
  4. 受取銀行がMT103を参照して顧客口座に入金
送金フロー比較:MT103方式 と MT202 COV方式 MT103方式(顧客送金) 1. 送金依頼人 → A銀行(送金依頼) 2. A銀行 → 中継銀行(MT103) 3. 中継銀行 → 受取銀行(MT103) 4. 受取銀行 → 受取人へ入金 MT202 COV方式(カバー決済) 1. A銀行 → 受取銀行(MT103:顧客情報) 2. A銀行 → コルレス銀行(MT202 COV:資金決済) 3. コルレス銀行 → 受取銀行(資金移動) 4. 受取銀行 → MT103を元に受取人へ入金

この方式では、資金決済と顧客メッセージが分離されている点が特徴です。

実務でよくある誤解

実務経験が浅い事業者や個人では、「MT103を持っている=着金が確定している」と誤解するケースが見られます。しかし、MT103は指示書であり、最終着金は銀行の処理状況によって異なります。

また、詐欺業者がMT103のスクリーンショットを偽造して提示してくる場合もあり、公式なSWIFTコピーであるかどうかを銀行で確認することが重要です。

事例解説:貿易決済でのMT103とMT202の使い分け

事例1:一般的な海外送金(商社 → 海外メーカー)

商社が海外メーカーへ支払う場合、MT103が使用されます。メーカー側は着金確認のため、MT103コピーを要求することがあります。これは資金経路の透明性を高める効果があります。

事例2:銀行間のドル資金移動

A銀行がノストロ口座を保有するB銀行へ資金を移す場合、MT202が利用されます。顧客情報が不要で、銀行同士の残高調整のためだけに使用されます。

事例3:カバー決済による貿易代金送金

A銀行が直接受取銀行とコルレス関係を持たない場合、MT103とMT202 COVの二段構造が使われます。受取銀行はMT103を確認しつつ、別ルートのMT202 COVで資金を受け取ります。

どちらがより安全か

安全性という点では、送金の透明性が高いMT103が優れています。AML審査や送金目的確認が詳細に行われるため、途中で送金が止まった場合の対応も迅速です。一方、MT202は銀行内部の資金移動向けであり、個人が直接関与するケースは多くありません。

まとめ

MT103とMT202は、どちらも国際送金を支える重要なSWIFTメッセージですが、用途は明確に異なります。顧客送金にはMT103、銀行間資金移動にはMT202と202 COVが使われます。貿易実務や国際送金の現場では、これらの違いを理解しておくことで、取引の透明性と安全性が向上します。

2025年11月20日 | 2025年11月20日