EUR/USDの30日後見通し【2025-12月】:米欧金利差縮小と米景気減速がユーロ高を後押しする可能性

EUR/USDの30日後見通し【2025-12月】:米欧金利差縮小と米景気減速がユーロ高を後押しする可能性

1 過去半年の価格推移と変動要因

EUR/USDはここ半年、1.05〜1.11の広いレンジ内で推移しました。背景には主に以下の要因が作用しています。

1)米国の金利見通しの変化

米国ではインフレは落ち着きつつありますが、依然としてサービスインフレが高止まりしており、利下げ時期をめぐる市場の思惑が頻繁に揺れ動きました。利下げ観測が強まる局面ではドル売り優勢となりユーロが上昇し、反対にタカ派寄りの発言が出た局面ではユーロ安が進む展開が続きました。

2)ユーロ圏のインフレ鈍化

ユーロ圏ではエネルギー価格の落ち着きもありインフレが減速しており、ECBの利下げ論が強まる場面が見られました。ただし、コアインフレが高めに推移する月もあり、金融政策の方向性を巡って市場のモメンタムが変わりやすい状況です。

3)米欧経済指標の強弱

米国の雇用・消費の強さが確認された期間はドルが買われやすく、逆に景気減速懸念が出た場面ではユーロドルが上昇しました。一方、ユーロ圏の景況感指数が弱かった局面では、ECBの利下げを織り込みユーロが売られました。

こうした複合要因の結果、半年間は方向性に乏しいながらも、金利差の縮小が見込まれる局面ではユーロが優位になる傾向が確認できます。

2 過去1か月の価格推移と変動要因

直近1か月でEUR/USDは1.07〜1.10の範囲で推移し、やや上向きのモメンタムが見られました。背景には以下が挙げられます。

1)米経済指標の弱さ

米国の雇用指標やISMなどの一部データが弱含みとなり、ドル買いの勢いが低下しました。市場では利下げ時期が再び前倒しされる可能性が意識され、ドル売りにつながりました。

2)FOMCメンバーのハト派発言

政策当局者の一部が利下げに含みを持たせるような発言をしたことで、市場はリスク選好に傾き、ドルが売られユーロが買われました。

3)ユーロ圏インフレの下げ止まり観測

インフレ鈍化が続く一方で、一部の部門で底打ちの兆しが見られたことから、ECBが急ぎ利下げに踏み切る可能性がやや後退しました。このことがユーロの下支え要因となっています。

3 直近1か月の価格推移

1.10 1.085 1.07 現状 約1.09

過去30日前についてはこちらをご覧ください。

4 今後30日の価格変動要因

今後30日を見通す上で重要となるのは、米欧の金融政策、景気指標、そして市場心理の3つです。

1)米国の金融政策動向

利下げ時期の前倒し観測が強まればドル売りが進み、ユーロドルは上昇しやすくなります。反対に、インフレの粘りが再び意識されれば利下げ後退につながり、ドル買いが優勢となる可能性があります。

2)ユーロ圏の景気とインフレ動向

ユーロ圏の製造業・サービス業PMIが改善すれば、ユーロ買いの材料になります。一方で、景気指標が弱い場合にはECB利下げ観測が強まり、ユーロ安の圧力がかかります。

3)地政学リスクと市場心理

地政学イベントが発生すると、安全資産としてドルが買われやすい状況にあります。市場がリスクオフに傾けばユーロドルは下落しやすいため、外部要因にも注意が必要です。

5 価格予想(上昇シナリオ)

ユーロドルが上昇するシナリオとしては、米国の利下げ観測が強まるケースが最も有力です。特に、米雇用指標や消費関連データが弱い数字を示した場合、金利差縮小期待につながり、ユーロが選好されやすくなります。

この場合、短期で1.10〜1.115付近まで上昇する余地があります。過去にも金利差が縮まる局面ではユーロドルが上昇しやすい傾向が確認されており、金利要因は引き続き市場テーマとなりそうです。

6 価格予想(停滞シナリオ)

米欧ともに金融政策が大きく変化せず、材料不足の状況が続く場合には、ユーロドルは1.08〜1.10のレンジ内での推移が予想されます。年末やイベント前など市場参加者が減る局面では、値動きが収まりやすく、方向感のない展開となりがちです。

このレンジ帯では売りと買いが交錯しやすく、一方向に強いトレンドが出る可能性は低いと見られます。

7 価格予想(下落シナリオ)

下落シナリオの中心となるのは、ユーロ圏の景気悪化とECB利下げ観測の強まりです。
製造業・サービス業のPMIが低下を続ければ、ユーロ圏の景気停滞が意識され、ユーロ売りの材料となります。

また、米国が強い経済指標を示した場合には、ドル買いが進みユーロドルは1.065〜1.075付近まで下落する可能性があります。安全資産としてのドル需要が高まる局面でも、ユーロドルは下押しされやすくなります。

8 30日後の価格予想一覧

シナリオ予想レンジ背景ポジション方針(未保有の場合)
上昇(ユーロ高)1.10〜1.115米利下げ観測の強まり・ユーロ圏インフレ底打ち買い目線で検討
中立(レンジ)1.08〜1.10目立った政策変更なし・方向感不足様子見が有力
下落(ユーロ安)1.065〜1.075ECB利下げ観測・米指標改善でドル高売り目線で検討

本表はあくまでシナリオ整理であり、どの方向性も一定の不確実性を含むことに注意が必要です。

9 まとめ:今後30日の注目ポイント

今後30日のEUR/USDは、米国の利下げ観測とユーロ圏の景気回復度合いのバランスによって方向性が変わる見通しです。現在は米指標の弱さが意識されやすく、一時的にユーロが下支えされていますが、明確な上昇トレンドが形成されるかどうかは、米国のインフレデータとFOMC関連発言が大きな鍵となります。

下落リスクにも備えつつ、金利差と景気指標の変化に注目することが、今後のユーロドル判断において重要になりそうです。

2025年12月6日 | 2025年12月6日