従業員が退職することを「退職代行サービス」から知らされた!なぜ?

ビジネス

電話が鳴ったので受話器を取り、耳をあてると電話の相手先からこう告げられます。

「□□の△△と申します。○○さんの退職の件でお電話しております。」
「人事担当者につないでもらえますでしょうか?」

最初は「??」となり、良く分からず人事の担当者に繋いだのを覚えています。これまでは離職率の低い企業にいたため退職する従業員との接点が無いからか、テレビなどのメディアに接する機会も減ってきているからか、退職代行サービスの存在を知りませんでした。

退職代行サービスを使うのには理由がある

退職代行サービスを使うのには理由がある

一般的には上長や人事担当者に自分で退職する旨を口頭なり退職願などで伝え、そののちに退職届を提出して必要な手続きをしつつ退職という流れになりますが、退職代行サービスはこれを退職を希望する人に代わって行ってくれるものです。

退職代行サービスは有料であるため、基本的に退職を希望する人はこのサービス料の支払いが発生します。自身で退職を実現できれば、もちろんそんな費用は必要ありません。料金を支払ってまで退職代行サービスを利用して退職を実行するのは、退職を希望する人が退職を実行しにくい環境にいるからです。

退職を実現しにくいのはどんなときでしょうか?

1. 本人の意思実行力よりも、退職を伝えにくい会社との関係性が”強い”とき

本人の意思実行力よりも、退職を伝えにくい会社との関係性が”強い”とき

退職するには、ひとつ「退職を会社に伝える」というプロセスが必要です。「退職を会社に伝える」ということができないとき、「退職代行サービスを利用する」選択が発生します。つまり退職代行サービスを利用することとなった要因の一つは、従業員と会社のコミュニケーションに基づく関係性です。

上長または経営者側が日頃から高圧的である、理解力が低い

さて、まずは円満な関係を気付くポイントにおいて論外のケース、上長または経営者側が従業員に対して高圧的な接し方をしている場合についてみてみましょう。考えるまでもなく、従業員は「退職すると伝えたらなんていわれるだろう?」と予想するのが誰でも分かります。

退職を実現するには、会社に退職することを伝えなければなりません。ですが、これを高圧的な形ではねのけてしまう、さらには罵声などが加わってしまう。となると、従業員は「会社に退職することを伝える」というプロセスを代行してくれる、退職代行サービスを利用して退職しよう。と、なるでしょう。

高圧的な人の特徴として、自分の考えを否定されたりすることに弱いか、盲目的に正しいと考えることが多いため、他の人のうち、立場が下にあるものの意見を取り入れたくありません。退職を申し出た従業員の意思を理解したくない、もしくは理解することができません。

理解力が低い上長または経営者側である場合、話し合いは泥沼化し長引くか、無理やり終わらせられてしまうでしょう。つまり無駄に終わってしまいます。ここを退職代行サービスを利用して、退職までのプロセスを通過することで退職できるのであれば、利用されるのも仕方がありません。

上長または経営者側のコミュニケーション能力が無い、または低い

従業員を雇うとき、経営者側は従業員がどのような考えをもって日々仕事をしているか把握している必要があります。例えば「のちに独立して開業する目標がある」、「来期には東京に引っ越すことよていがある」など、従業員が今後どのような人生設計をしているか知っているのであれば、退職する時期もおのずと知れてきます。

この程度のコミュニケーションが取れないのであれば、経営者側に人材を管理できる能力が欠如しています。ひとり株式会社など、単体で動くような経営者であればそれでも問題ないでしょう。ただし、人を雇って業務を遂行していく会社として見た場合、人の上に立つ能力が足りないことになります。

挨拶や会話など、ごく一般的なコミュニケーションは当たり前のことです。人の上に立つ者は、より深く下の人が考えや、希望をくみ取れる、または引き出せるコミュニケーション能力が必要です。

上長または経営者側の勝手な思い込み

人の考えというのは、時間や経験とともに変わっていくものです。面接時や入社時はもちろん「働きたい!」という気持ちが伝わっていたかもしれませんが、初めの時期から時間が日々経過し、会社の業務や、人間関係などの雰囲気を知り、会社の問題に気づき、当初抱いていた気持ちに変化が生じることは当然のようにあるわけです。

「面接したときは長く働きたいと言っていたのに…!」、「入社時はあんなにやる気があったのに…!」という声はよく耳にしますが、経営方針をマーケットに合わせて変更するのと同じように、従業員も自分の人生にあわせて会社を選びます。いつまでも自分たちの会社にいてくれるものだと思い、自社が抱える問題に気づかず、慢心するのは危険です。

従業員の考えなどを知らずに「あの子はしばらく働いてくれるだろう」、「このプロジェクトが完了するまでは今のメンバーに変動の心配ないだろう」と考えるのは、一方通行の勝手な都合の良い希望です。

定期的に面談などを実施する会社で、面談を担当する者のコミュニケーション能力が高い場合や、常日頃から従業員の考えが読み取れるような対人スキルが高い場合は退職代行サービスを利用する形ではなく、一般的な退職の流れが作れるようになります。

従業員の意思の方が強いときは、自分から伝える

上記のいずれにせよ、会社との関係性より従業員の意思実行力のほうが”強い”ときは、退職代行サービスを利用する事なく、本人の意志の通りに実行するでしょう。

逆に従業員の意思実行力の方が”弱い”とき、自分の意思を実行するために退職代行サービスを利用して退職を実現させます。

2. 本人の意思よりも、会社に留める力の方が強いとき

本人の意思よりも、会社に留める力の方が強いとき

次に、退職に必要なプロセスである「退職までの手続き」です。「退職すると会社に伝えたけど、取り合わない」、「何らかの理由で、必要な手続きをしてくれない」など、退職を実現させてくれない状況にあるとき、従業員はこのプロセスを退職代行サービスに依頼する選択を選ぶことがあります。

従業員の弱みを会社が掴んでいる

退職するより前に従業員に過失等があり、他の従業員よりも対等に扱われていない場合、この過失などを含む弱みを理由に退職させてくれない場合はどうでしょうか。確かに会社に損害等を与えてしまったとき、その損害を賠償する必要がある場合はこれを賠償することになるでしょう。(ここでは賠償責任の割合は扱いません)

気をつけたいのは、「損害の賠償するまで」または「損害を与えたから」といって、退職を認めないことはできないという点です。損害の賠償責任と従業員の退職は別で扱わなければなりません。その他、会社が従業員の何らかの弱みを掴んでいて、これを理由に退職を認めないということもできません。

このとき、前述と同様に従業員本人の意思実行力よりも、会社が従業員に与える会社に留まる様にとする力が強いとき、退職代行サービスを利用する事があるでしょう。

慢性的に人材が不足している

退職を申し出た従業員のポストに、これを引き継ぐ後任の者がいないときに「後任が来るまで待ってくれないか?」というお願いをされる可能性が高くなります。会社に留まるよう促す力が強く、従業員は自分の意思実行力が弱いとき、希望する時期に退職できないことが予想できます。

これは、常に求人を募集しているような慢性的に人手が足りていない会社に目立ちます。退職を申し出ても、求人に対して応募が見込めないと従業員がこれまでの様子から伺えるとき、希望する日以降から出社不要となる退職代行サービスを選択する可能性があります。

退職を申し出た従業員は、退職を希望する会社よりも更に条件が良い会社の求人に応募するため、退職後のスケジュールを調整したいかもしれません。このスケジュールで最も優先されるのは残念ながら今まで働いている会社ではなく、次に働く会社です。これまでの関係性にも左右されますが、最も劣後となるのはもちろん辞める会社の都合です。

会社が抱える慢性的な人手不足問題には、必ず原因が存在しています。会社に甘く、従業員の待遇が辛い会社ほど、原因に気付いているが見ないフリ、もしくは気づけてすらいない可能性もあります。まずは正しい評価を指摘できるコンサルティングや、診断等を受け入れて、この原因を追究し解決する必要があります。

退職を受け入れたものの、手続きを進めない

会社は、従業員が申し出た退職を拒むことはできません。ですから退職を受け入れるだけ受け入れ、退職手続をとらずにいる、または必要な書類を送付しないなどの場合はどうでしょうか。退職をすると希望した日以降に出社こそしないものの、従業員は保険の手続きや、次の会社に提出する書類を受け取れず困るでしょう。退職後の元従業員の活動を妨害する事はできません。

しかし、退職したいという従業員の退職手続がすんなり進められない場合は、本人の代わりに実施してくれる退職代行サービスを選択する事は十分にありうる話です。退職する会社に出向く必要もなく、会社の人と会話を交わす必要すらありません。本人に代わってこの面倒なやり取りを代行してくれるのは時間的にも精神衛生上にも費用が発生してもプラスとなる面が大きくなりがちです。

退職代行サービスを利用するのは非常識か?

退職代行サービスを利用するのは非常識か?

次に、退職代行サービスを活用して退職することについて考えてみていきましょう。ここでは、退職理由と退職手段は別で考える必要があります。混同しないように注意してください。

退職代行サービスを利用することは、通常の退職の流れと異なり、上長や経営者側にとっては損失となることがあります。例えば、従事していたプロジェクトが中途半端な状態でストップしたり、ぽっかりとあいたポストに入る人も不思議に思うはずです。

また、同僚や同じチームにいた人たちにももちろん、抜けた後の対応を多少なりとも要求されるのは間違いないでしょう。これについては、仕事から受ける過剰なストレスなどに耐えきれず、突然飛んだりするようなケースと同様の濁りを残して会社を去る形と変わりありません。

それでは、退職代行サービスを利用して退職したケースは非常識か?という点ですが、一概に非常識とは言えません。

退職代行サービスを利用されている以上、会社側にも問題がある

退職代行サービスを利用した元従業員に対して、会社側は自己に非は無いと訴えたいことはもちろんあるかもしれません。ですが、本来従業員と会社間には適切な関係性が築かれているべきで、これを実現できなかったのは会社側にも問題があります。

実現していたと言いたいこともあるかもしれません。しかし、これが単なる自己評価であったり、イエスマンのような従業員の一意見あれば、結局は実現できていなかったという結論として受け止めるべきかもしれません。

一般的な退職の形を取りにくいような組織体系の会社である以上、退職代行サービスの利用を非常識として非難するのは難しいでしょう。とるべき人材ケアができなかった、管理能力不十分な会社であったというだけです。

退職代行サービスを利用されないような組織に会社を改善する

会社にとって有効な事業活動の維持存続は経営面からみると大切なポイントであることは経営者でなくても理解できるでしょう。そして、従業員はこの会社の事業活動を継続させる上で最も大切なパズルの一つです。経営者はこの「従業員」に対して、日頃から適切なケアができる組織へと会社を改善していく必要があります。

日本では様々な形態・業種の会社が日々設立され、解散しています。時代とともに潰れていくのではなく、成長し続けていくには従業員をしっかり適切に管理し、会社と共に成長していく必要があります。この能力が会社に、そして経営者にないと感じるのであれば今は外部のサービスを借りたり、色々な手段を検討し対策を取るのが望ましいでしょう。

上長・人事担当者を、人材管理能力を持つものに代替する

会社の方針と異なり、上長または人事担当者に人材を管理する能力が無いと判断できる場合は、ポストを変更する必要があります。健全な体の中にがん細胞が見つかったらこれを放置する事はしないはずです。有力な人材が手に入っても、その人材を扱えない管理者が上に立ってしまうと、すぐ失ってしまう可能性があります。

あたりまえですが、会社は管理職・管理者をそのスキルに応じて配置しましょう。良好な関係性を築ける管理職・管理者がいることで、急な人事変更の発生による対応量を少なく抑える事ができます。

もちろん、扱いの難しい従業員を抱えている会社もあるでしょうが、それでも上に立つものはこれを踏まえて接していきます。上に立つ以上は、扱いが難しくても採用されて従業員となっている以上は、受け入れ、活用する能力を備えているべきです。

日頃から、従業員と良好な関係性を維持する

日頃から、従業員と良好な関係性を維持する

日ごろからカウンセリングや面談など従業員が会社に対して感じることを反論せずに受け止め、これをどう対策していくか、どう実践していくかを会社は常に考えていく必要があります。

従業員の退職に至るまでの経緯はここではさておき、退職するのであれば、寝耳に水のような退職ではなくごく一般的な普通の退職方法が好ましいはずです。風通しの良い、良好な関係性を築いていけいるように、経営者・上長、人事担当者は努力していきましょう。

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