12月〜1月の海上運賃はなぜ動くのか|航路別の季節性とSCFI・CCFIから読み解く運賃動向

12月〜1月の海上運賃はなぜ動くのか|航路別の季節性とSCFI・CCFIから読み解く運賃動向

1 過去半年の海上運賃推移とその背景

過去6か月の海上運賃は、航路別に異なる動きを見せながらも、全体としてはやや持ち直し傾向が見られました。アジア発北米航路と欧州航路では、港湾混雑の断続発生やサービス遅延が積み重なり、スポット運賃に下値の固さが生じたためです。

また、8月〜9月には年末商戦を見据えた在庫積み増し需要が生じ、船社によるGRI(General Rate Increase)が複数回適用された航路もありました。これらの要因が重なると、SCFI(Shanghai Containerized Freight Index) CCFI(China Containerized Freight Index)は短期間の上昇を示します。
今年も同様で、夏以降の指数は数週単位で上下を繰り返しつつ、11月に向けて底堅く推移しました。とくに欧州航路では、港湾の混雑と気象リスクの影響が指数を押し上げる局面が散見されました。

2 過去1か月の海上運賃推移とその背景

直近1か月の運賃は、例年と同じく上昇方向に動きやすい時期です。要因としては次の点が挙げられます。
・ブラックフライデー、クリスマス需要に向けた最終出荷
・港湾での滞船増加とスケジュール遅延
・内陸物流の逼迫によるコンテナ循環の悪化
・船社による月次 GRI や PSS(Peak Season Surcharge)の適用

SCFI はこの時期に小幅な上昇を示すことが多く、今年も例年に近いパターンが見られました。指数が上昇しやすい理由として、荷主が「遅延リスクを避けるため早めに出荷する」行動に出ることが挙げられます。

北米西岸 北米東岸 欧州向け 高値 低値 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月

3 航路別に見た12月〜1月の特徴

● 北米西岸向け(Trans-Pacific Westbound / TPWB)

北米西岸は季節性の影響が強く、12月上旬〜中旬にかけて運賃が持ち直す傾向があります。ターミナル混雑、鉄道・トラック輸送の休暇入りによる遅延が積み重なるためです。
特にロサンゼルス・ロングビーチでは、年末期にゲート稼働が不安定になりやすく、コンテナの巻き戻しが遅れると供給が一時的に逼迫します。今年も SCFI 北米西岸指数は秋以降に小幅な改善が見られ、年末にかけて下値が支えられています。

● 北米東岸向け(Trans-Pacific Eastbound / TPEB)

北米東岸は運賃の変動幅が比較的大きい航路で、11月〜1月の荷動きに合わせて上昇と調整が交互に発生しやすい特徴があります。東岸はパナマ運河の制限や大西洋側の気象影響を受けやすく、遅延が指数の押し上げ要因になることもあります。
また、東岸は鉄道接続の重要度が高く、内陸物流の休日入りによってコンテナ循環が鈍化すると、スポット運賃が短期的に強含む傾向が見られます。

● 欧州向け(Far East to Europe)

アジア発欧州向けは、季節性と気象リスクが特に強く出る航路です。冬季の北海や地中海エリアの荒天により、スケジュール信頼性が下がりやすく、CCFI 欧州航路指数は12月にかけて安定的に推移するケースが多く見られます。
また、欧州市場では年末休暇が長く続くことから、荷主が11月〜12月に出荷を前倒しする動きがあり、運賃に上昇圧力がかかりやすいと言えます。

北米西岸(SCFI例) 北米東岸(SCFI例) 欧州向け(CCFI例) 指数 高値 指数 低値 1000(例) 1400(例) 1800(例) 2200(例) 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 12月 SCFI 約1900 1月 SCFI 約1850 12月 SCFI 約1850 1月 SCFI 約1800 12月 CCFI 約1800 1月 CCFI 約1750 ※指数・数値はいずれもイメージ用の例示値であり、実際のSCFI・CCFIとは異なる場合があります。

航路別の運賃変動は、取引で採用するインコタームズにも影響します。FOBCFR など海上運賃の負担者が明確に分かれる条件では、運賃が季節的に上昇しやすい12月から1月にかけて、どの条件で契約するかがコスト管理に大きく関わります。適切なインコタームズを選択することで、海上輸送コストの急変動による影響を抑えることができます。

4 当期(12月〜1月)の価格変動要因

本期間は海運市場の季節性が最も強く現れる時期です。変動要因として次が挙げられます。

・クリスマス商戦に向けた最終出荷の集中
・港湾混雑の増加とスケジュール信頼性の低下
・内陸物流の休日入りによるコンテナ循環遅延
・荒天による遅延増(北米西岸・欧州向けで顕著)
・船社による GRI・PSS の追加適用
・1月下旬の春節休暇を見据えた前倒し出荷

春節はアジア発輸送の大きな節目となるため、12月下旬〜1月上旬は荷動きが増えやすく、運賃が底堅く推移しやすいです。

海上運賃の影響は、荷主が採用するインコタームズによっても異なります。
とくに FOBCFRCIF といった海上輸送を前提とする条件では、運賃変動が売主・買主いずれの負担になるかが明確に分かれるため、年末や春節前のような運賃が動きやすい時期は、契約条件の見直しが重要になります。インコタームズを正確に理解しておくことで、急な市況変動時でも適切な費用負担とリスク分担を行うことができます。

5 価格予想(上昇要因)

・春節前の駆け込み需要が強まる可能性
・港湾混雑と遅延が続く場合、供給が引き締まる
・燃料価格が上昇した場合、運賃調整が発生する
・コンテナ不足が一時的に発生する可能性
・SCFI・CCFI が上向き基調を維持する場合、市場心理が強含む可能性

これらが複合する場合、スポット運賃は短期的に上昇しやすいです。

6 価格予想(停滞要因)

・世界的な消費需要が伸びにくい状況が続く場合
・船腹量が増加し供給が逼迫しにくい場合
・荷主の前倒し出荷が早期終了し、需要が落ち着く場合
・一部航路で新造船や追加サービスが投入される場合

需給が均衡すると、12月でも運賃は横ばいに推移しやすいです。

7 価格予想(下落要因)

・1月中旬以降に荷動きが急減する場合
・港湾混雑が早期に解消し、スケジュール遅延が改善する場合
・燃料価格が安定し、追加サーチャージが不要となる場合
・外需の減速が鮮明となる場合

春節前後の荷動きの落ち込みにより、1月後半は下落圧力が高まりやすいです。

8 価格予想一覧

状況影響市場の動き
上昇要因需要増・港湾混雑スポット運賃は上値を試しやすい
停滞要因需給均衡運賃は横ばいで推移しやすい
下落要因荷動き減少・供給増加1月後半に下落しやすい

9 まとめ

12月〜1月の海上運賃は、年末商戦による荷動きの増加、港湾混雑、気象リスク、春節前の駆け込み需要などが重なることで、例年大きく変動しやすい時期です。航路別に見ると、北米西岸は混雑の影響が強く、東岸は物流遅延と季節要因が絡みやすく、欧州向けは気象リスクと前倒し出荷の影響を受けやすい特徴があります。

SCFI や CCFI といった主要指数も底堅く推移する傾向があり、今年も12月〜1月は上昇または横ばいで推移しやすいと言えます。ただし、外部環境の影響は大きいため、市況と指数を継続的に確認することが重要です。

2025年12月3日 | 2025年12月3日