SWIFTカテゴリ8(MT8xx)は、主に トラベラーズチェック(Traveler’s Cheques, TC) に関連するメッセージで構成されています。トラベラーズチェックは、かつて国際旅行者の主要な支払手段として広く用いられており、現金に代わる安全な決済ツールでした。
SWIFTメッセージでは、発行、引受、清算、取消、紛失などの通知や依頼を標準化された形式でやり取りします。
SWIFTカテゴリ8の主な用途
- 発行依頼・通知:トラベラーズチェックの新規発行や追加発行
- 引受・決済処理:使用済みTCの受入と精算
- 紛失・盗難報告:利用者がTCを紛失・盗難に遭った場合の照会や停止依頼
- 取消・返金:未使用TCの返金や取消依頼
トラベラーズチェックとは何ですか?

近年では、クレジットカードやデビットカード、さらにはプリペイドカードや国際キャッシュカードの普及により、トラベラーズチェックの利用は急速に減少しました。多くの銀行では新規発行が終了し、旅行者にとって必需品だった時代は過去のものとなっています。しかし、SWIFTカテゴリ8(MT8xx)は、かつての国際決済における標準的な仕組みを理解する上で依然として重要です。銀行のシステムやレガシー取引の一部には今なお関連する処理が残っており、歴史的背景や金融実務の知識として把握しておく価値があります。
トラベラーズチェックの特徴
- 発行銀行が保証:サインをすれば現金のように使用でき、発行銀行やブランド(American Express、VISAなど)が支払いを保証していました。
- 安全性:現金と違い、紛失や盗難に遭っても再発行(Refund)が可能。番号管理されているため、不正利用を防止できます。
- 両替不要:旅行先でそのまま現地通貨に両替でき、国際的に広く利用可能でした。
- 額面指定:あらかじめ100ドル、500ドルといった額面で発行され、利用時はサインで本人確認を行います。
トラベラーズチェックの利用の流れ
- 出発前に銀行や旅行代理店で購入(パスポートなど本人確認必要)
- 利用時に、店頭やホテルでサインをして支払い
- 受け取った店舗は銀行を通じて清算
- 万が一紛失・盗難した場合、番号を提示すれば再発行可能
SWIFTカテゴリ8の主なメッセージ種別
MT番号 | 名称 | 用途 |
---|---|---|
MT800 | Issue of Traveler’s Cheques | トラベラーズチェックの発行依頼 |
MT802 | Traveller’s Cheque Reimbursement | 引受銀行から発行銀行への清算依頼 |
MT810 | Acknowledgement | 発行・清算に対する受領確認 |
MT899 | Free Format Message | TC関連の自由書式通知(補足・例外処理に使用) |
4. メッセージの流れ(例)
- 発行銀行が MT800 を送信し、新規のTC発行を通知
- 旅行者が使用したTCを、受入銀行が回収
- 受入銀行が MT802 により発行銀行に清算依頼
- 発行銀行が内容を確認し、MT810 にて承認通知
- 万が一紛失・盗難が発生した場合は、MT899 を活用して迅速に照会・ブロック依頼
より詳しく見ていきましょう。
発行依頼(MT800)
- 発行銀行(Issuer)は、旅行代理店や販売拠点からの申込みに基づき、トラベラーズチェックを発行します。
- この際、MT800 を利用して発行内容(額面、通貨、シリアル番号、発行枚数など)を通知します。
- 受取銀行(Acquirer)は、この情報に基づき、将来的な清算に備えて記録を保持します。
利用と回収
- 旅行者は現地でTCを使用し、ホテルや店舗が受け取ります。
- 受け取った店舗は、自国の受入銀行にTCを提出し、現地通貨での支払いを受けます。
清算依頼(MT802)
- 受入銀行は、発行銀行に対してMT802を送信し、利用済みTCの清算を依頼します。
- メッセージには、使用されたTCのシリアル番号や額面、取扱日などが含まれ、発行内容と照合されます。
承認通知(MT810)
- 発行銀行は受け取った依頼を確認し、内容が正しければMT810で清算承認の通知を返します。
- これにより、受入銀行は立替分の資金を正当に回収できる仕組みとなっています。
例外処理・照会(MT899)
- 紛失や盗難が発生した場合、関係行はMT899(自由書式)を使って迅速に照会やブロック依頼を送ります。
- これにより、不正利用の防止や返金手続きが可能になります。
こうして見ると、MT8xxは「発行 → 利用 → 清算 → 承認 → 例外処理」という一連のライフサイクルをカバーする設計になっていることがわかります。
5. 現在の位置づけ
近年ではクレジットカードやプリペイドカードの普及により、トラベラーズチェックの利用は大幅に減少しました。しかし、SWIFTカテゴリ8は過去の国際決済の標準的な手法を理解する上で重要であり、銀行システムに残る処理やレガシー取引の知識として把握しておく価値があります。