SWIFT MT769:ディマンド保証の修正通知で条件変更を正確に伝える方法

SWIFT MT769:ディマンド保証の修正通知で条件変更を正確に伝える方法

SWIFTカテゴリ7にリストされているSWIFT MT769は、すでに発行されたディマンド保証(Demand Guarantee)に修正が生じた際、その変更点を正式に通知するために用いられるメッセージです。ディマンド保証は、国際取引において取引先が契約上の義務を履行しなかった場合に、銀行が受益者に対して代金を支払うことを保証する仕組みであり、建設工事や大型設備投資、輸入取引などの現場で広く活用されています。

しかし、契約条件や商取引の進展に伴い、保証の金額・期限・条項が変更されることは珍しくありません。その際、当事者間で口頭やメールによるやり取りのみでは誤解や不一致が発生しやすく、重大なリスクに発展する可能性があります。そこで、国際標準の通信手段であるSWIFTネットワークを通じ、MT769を用いて正式な修正通知を行うことが不可欠となります。

つまりMT769は、「保証の生命線を最新かつ正確に維持する」ための仕組みといえ、取引の安全性・透明性を確保するうえで重要な役割を果たします。

SWIFTカテゴリ7 MT769の主な用途

MT769は、主に以下のような場面で利用されます。

01. 保証金額の変更

契約規模が拡大し、追加工事や予備部品の費用が発生した場合には保証金額を増額します。逆にプロジェクトの一部が完了してリスクが下がれば、減額するケースもあります。
例えるなら、旅行保険の補償額を「追加で保険をかけ直す」ようなイメージです。必要に応じてカバー範囲を広げたり狭めたりします。

02. 有効期限の延長・短縮

建設工事の遅延や輸送トラブルで納期が後ろ倒しになると、保証の期限を延長する必要があります。逆に契約が早期に履行された場合には期限を短縮することもあります。これは、レンタカーの契約を「もう1日だけ延長」するような感覚に近く、保証を有効な状態で保つための延長措置です。

03. 条項や条件の修正

受益者が請求できる条件や、書面に記載する文言を変更するケースがあります。例えば「納期遅延の場合に請求可能」としていた条項を「品質不良の場合も請求可能」と修正するなどです。例えるなら、スポーツの試合ルールを「追加で明文化する」イメージで、試合(取引)をフェアに進めるための条件を明確にします。

SWIFTカテゴリ7 MT769のメッセージの流れ

MT769による修正通知は、次のようなステップで進みます。

01. 受益者による承諾または確認

修正が保証契約にどのような影響を与えるかを受益者が確認します。場合によっては、受益者の同意がなければ修正が効力を持たないこともあります。これは、契約相手に「延長契約書へサインしてもらう」イメージです。最後に当事者同士で合意して初めて有効になります。

02. 保証発行銀行(Guarantor Bank)が修正を決定

契約の進捗や依頼人(Applicant)の要望に応じ、保証の内容を変更する必要が生じます。例えば、建設工事の工期が延びた場合、保証の有効期限を延長する修正を決めることがあります。例えるなら、賃貸契約の大家さんが「あと1年延長できますよ」と条件を見直すようなものです。

03. SWIFTネットワークを通じて修正通知を送信

発行銀行はMT769メッセージを作成し、相手方銀行に送信します。標準化されたフォーマットでやり取りされるため、国や銀行が異なっても同じ形式で理解できます。これは、国際的に共通ルールで書かれた「公式のFAX」や「定型フォーム」を送る感覚に近いです。

04. 受益者側の銀行(Advising Bank)が内容を確認

修正内容を受信した銀行は、その内容が正しいか形式的にチェックし、受益者に伝えます。銀行が間に入ることで、誤送信や改ざんのリスクを大幅に減らせます。例えるなら、旅行代理店が航空券の変更内容を確認してからお客さんに渡すようなもので、「仲介役」が安心感を生みます。

SWIFTカテゴリ7 MT769のサンプル

{1:F01XXXXJPJTAXXX0000000000}{2:O7691205050101YYYYDEFFXXXX00000000000501011205N}{4:
:20:REF-2025-0001
:21:ORIG-2024-1120
:23:AMD
:25:XXXXBANKTOKYO
:30:20250928
:32B:USD500000,
:33B:USD450000,
:72:/BENEFCHANGE/Clause 4 updated - Expiry extended to 2026/06/30
-}

サンプル各項目の意味

  • {1:F01XXXXJPJTAXXX0000000000}
    発信元の銀行情報(送信者アドレス)。ここでは東京のXXXX銀行を仮定しています。
  • {2:O7691205050101YYYYDEFFXXXX00000000000501011205N}
    メッセージタイプ(MT769)、送信時刻、受信先銀行の情報。ここではドイツのYYYY銀行(伏字)に送られているイメージです。
  • :20:REF-2025-0001
    この修正通知自体の参照番号。今後のやり取りで一貫して使用される識別子です。
  • :21:ORIG-2024-1120
    元の保証契約(原契約)を特定する参照番号。どの保証を修正しているのかを紐付けます。
  • :23:AMD
    メッセージが「修正通知(Amendment)」であることを示すコード。
  • :25:XXXXBANKTOKYO
    保証を発行している銀行の識別。依頼人に代わって保証を出している銀行を明示します。
  • :30:20250928
    修正日付。修正内容が効力を持つ基準日になります。
  • :32B:USD500000,
    新しい保証金額。ここでは50万米ドルに増額されています。
  • :33B:USD450000,
    修正前の金額。比較できるように記載されるケースがあります(銀行によっては省略可)。
  • :72:/BENEFCHANGE/Clause 4 updated – Expiry extended to 2026/06/30
    修正の詳細を記載する自由記述欄。例として「契約第4条の改訂、保証期限を2026年6月30日まで延長」と明記しています。

補足

このように、サンプルには 参照番号(20,21)・修正種別(23)・金額(32B,33B)・日付(30)・修正内容(72) が盛り込まれます。実務上は、受益者や依頼人の詳細、保証文言の具体的な変更点なども添付書類で送られることがあります。

各フィールド番号の説明表

フィールド番号項目名内容例解説
20トランザクション参照番号REF123456789この修正通知を識別する一意の番号。後続のやり取りでも参照される。
21元の参照番号ORIGREF987654321修正前の保証状の識別番号。元契約との紐付けに必須。
23修正の種類AMD(Amendment)修正であることを示すコード。取消の場合は別のコードを使用。
30修正日付2025/09/28修正が発効する日付。契約履行の判断基準にもなる。
32B金額修正USD100,000新たな保証金額。増額や減額の内容を明確化。
72備考/修正内容Clause 4 updated特定条項の変更内容を記載。誤解を避けるため簡潔かつ具体的に記載。

SWIFTカテゴリ7 MT769のメリット・デメリット・留意点

メリット

MT769を利用することで、ディマンド保証の修正が明確に記録され、取引当事者の間で誤解や摩擦を防ぐことができます。特に国際取引では、保証の修正を公式に伝える仕組みがあることで、関係者全員が安心してビジネスを進められます。

  • 国際標準フォーマットにより誤解を最小化できる
  • 金額や期限など、取引の核心部分を迅速かつ安全に伝達可能
  • 記録が残るため、後日の監査や紛争時の証拠資料として利用可能

こうしたメリットは、単に保証契約を円滑に進めるだけでなく、企業の信用力そのものを支える要素にもなります。

デメリット

一方で、修正のたびに銀行を経由することでコストや時間がかかることもあります。また、あまりに頻繁に修正が行われると、取引相手から「計画性がない」と見られる可能性もあり、注意が必要です。

  • 頻繁な修正は、依頼人や取引の信頼性を低下させる懸念がある
  • 修正のたびに銀行手数料が発生し、コストが積み重なる
  • 受益者が修正に同意しない場合、取引が停滞するリスクも存在

このため、修正は「必要最低限」にとどめ、契約の安定性を損なわないよう計画的に扱うことが望まれます。

留意点

MT769を運用するにあたり、見落としてはいけないのが「細部の正確さ」です。数字や日付のわずかな誤りでも契約の解釈に大きな影響を与えるため、送信前の確認体制が重要になります。

  • 修正内容は必ず関係当事者間で事前合意を取り付けておくこと
  • 金額や日付の誤記は重大なトラブルに直結するため、複数チェックが必須
  • 受益者側が修正を受け入れるかどうかは保証の実効性に直結するため、交渉の余地が生じるケースもある

つまり、MT769は単なる通知文ではなく、契約の「修正契約書」に匹敵する重みを持つものです。その意識を持って正確に運用することが肝要です。

SWIFTカテゴリ7 MT769のまとめ

MT769は、ディマンド保証の修正を正しく通知するための仕組みであり、保証契約の透明性と信頼性を支える柱です。国際取引において保証は「最後の安全網」として機能しますが、その条件が適切に更新されなければ、当事者間で大きな齟齬や紛争が発生しかねません。

SWIFTネットワークを活用したMT769は、そのリスクを最小限に抑え、関係者全員が安心して取引を進められる環境を整えます。保証を扱う企業や金融機関にとっては、正しく理解し、確実に運用することが不可欠なメッセージといえるでしょう。

2025年8月24日 | 2025年9月28日