SWIFT MT767:保証状・SBLC修正の役割と流れを解説【国際取引】

SWIFT MT767:保証状・SBLC修正の役割と流れを解説【国際取引】

国際取引において発行された保証状(Guarantee)やスタンバイ信用状(SBLC)(MT760)は、取引条件や契約の進行状況に応じて修正が必要になることがあります。その際に使用されるのがSWIFT カテゴリ7にリストされている MT767(Amendment to a Guarantee/Standby L/C) です。本記事では、その役割や流れ、注意点を解説します。

SWIFT カテゴリ7 MT767の概要

MT767は、すでに発行された保証状またはスタンバイ信用状の内容を修正するために使用されるSWIFTメッセージです。修正対象には、有効期限、金額、条件条項、適用法などが含まれます。
つまり「保証の約束を少し調整するための公式通知」といえるでしょう。

SWIFT カテゴリ7 MT767の主な用途

取引を「旅行計画」に例えると、保証状は「旅行保険」にあたります。MT767は「旅行日程や補償範囲を変更するための追加契約」であり、たとえば「帰国日が遅れたから保険期間を5日延長」や「補償額を増額」といった修正が行われます。

有効期限の延長

保証が効力を持つ期間を延ばす際に使用します。例えば建設工事の進行が遅れた場合、保証の有効期限を延長しなければ、工事完了前に保証が失効してしまいます。MT767により「保証はあと6か月延長」と明確に通知でき、取引の安全を確保できます。

金額の修正

保証額の増額または減額する際にも使用されます。契約金額が増えた際に保証金額を増額するケースが代表的です。逆に、取引規模が縮小した場合には保証額を減額することもあります。これにより保証が実態と一致し、過不足のないリスク管理が可能となります。

条項の変更

履行条件や提出書類の追加・削除。例えば「請求には独立監査人の証明を添付する」など、新しい条件が加えられる場合があります。こうした条項変更は、取引の信頼性を高めつつ、万一の不履行リスクを回避するために不可欠です。

当事者情報の修正

受益者名、銀行情報などの訂正。誤った受益者名や旧銀行口座をそのまま放置すれば、保証の効力が無効になるリスクがあります。MT767で正式に修正することで、誤解や無効化を防ぎ、スムーズな請求や支払いが可能になります。

SWIFT カテゴリ7 MT767のメッセージの流れ

  1. 発行銀行(保証銀行) が修正内容を作成し、MT767を送信。
  2. 通知銀行 が受領し、受益者へ伝達。
  3. 受益者 が修正内容を承諾(または異議)。
  4. 必要に応じて、発行銀行から再度修正通知が行われる。

発行銀行(保証銀行)が修正内容を作成し、MT767を送信

保証状やSBLCの発行銀行が、契約当事者の合意に基づいて修正を行います。修正の具体的な内容(延長、増額、条項変更など)をSWIFTフォーマットに整え、MT767として送信します。これが修正プロセスの出発点です。

通知銀行が受領し、受益者へ伝達

受益者と直接やり取りしない場合、通知銀行が重要な役割を果たします。発行銀行から受け取ったMT767を確認し、間違いがないかチェックしたうえで受益者に伝達します。これにより、受益者は正式な修正情報を確実に入手できます。

受益者が修正内容を承諾(または異議)

受益者は修正内容を精査し、条件に同意すれば修正は有効になります。ただし不利な変更(保証金額の減額や条件の厳格化など)の場合、異議を唱えることもあり、その場合は交渉が再び行われることになります。

必要に応じて、発行銀行から再度修正通知が行われる

受益者の反応や追加合意に基づき、発行銀行は再度MT767を発行することもあります。この「修正の修正」が繰り返されるケースもあり、最終的に両当事者が納得する形に至るまで、やり取りが続くことがあります。

こうして流れ全体を見ると、MT767は単なる「修正の通達」ではなく、発行銀行・通知銀行・受益者の三者間で確認を取りながら進む「調整のプロセス」であることが分かります。

SWIFT カテゴリ7 MT767のメリット・デメリット・留意点

メリット

  • 契約変更を迅速かつ国際的に標準化された形式で伝達可能
  • 修正履歴が明確に残り、トラブル防止に役立つ
  • 取引の柔軟性を高める

デメリット

  • 修正には受益者の承諾が必要な場合が多く、交渉が難航することも
  • 手数料や事務負担が追加発生する

留意点

  • 修正は原保証状と一体で効力を持つため、元の条件を置き換えるのではなく「追加・変更」として理解する必要がある
  • 不明瞭な修正は紛争の原因となるため、文言は正確性が求められる

SWIFT カテゴリ7 MT767のサンプル

{1:F01XXXXJPJTAXXX0000000000}{2:O7671200YYYYUS33AXXX0000000000123456789012345N}{3:{108:AMENDMT767EXAMPLE}}
{4:
:20: GUAR123456-AMD02
:21: GUAR123456
:23: AMND/02
:30: 250925
:31E: 260331
:32B: USD500000,
:77C:
AMENDMENT TO GUARANTEE / STANDBY L/C

1) INCREASE THE GUARANTEED AMOUNT BY USD 500,000.00.
   NEW TOTAL GUARANTEED AMOUNT: USD 1,000,000.00.
2) EXTEND THE EXPIRY DATE FROM 2025/12/31 TO 2026/03/31 (YYYY/MM/DD).
3) ALL OTHER TERMS AND CONDITIONS REMAIN UNCHANGED.

REFERENCE:
- ORIGINAL GUARANTEE NO.: GUAR123456
- BENEFICIARY: XXXXXXXXXX CO., LTD.
- APPLICANT: YYYYYYYYYY CORPORATION
- ISSUE BANK: XXXX BANK, TOKYO
- ADVISING BANK: YYYY BANK, NEW YORK

THIS AMENDMENT BECOMES EFFECTIVE UPON BENEFICIARY'S ACCEPTANCE
WHERE REQUIRED UNDER THE ORIGINAL TERMS.
-}

各番号の意味と記載内容一覧

番号意味(和名)記載内容の狙い記載例
:20:Sender’s Reference(送信参照)この修正電文自身の一意な参照番号。後続照会・照合のキー。GUAR123456-AMD02
:21:Related Reference(関連参照)原保証/原SBLC の参照番号を結び付ける。GUAR123456
:23:Further Identification / Amendment Ref(追加識別)修正回次や種別の簡記。行内運用で「AMND/02」など。AMND/02
:30:Date(修正作成日)修正メッセージの作成日(YYMMDD)。時系列管理。250925(= 2025/09/25)
:31E:New Date(新期限)新しい有効期限。旧期限は :77C で明示して誤解排除。260331(= 2026/03/31)
:32B:Currency/Amount(通貨・金額)増減額 を記載(増額/減額の“差額”)。総額は :77C で確定。USD500000,(=50万の増額)
:77C:Narrative(叙述欄)変更点を箇条書きで旧⇒新を明確化。総保証額、旧期限/新期限、その他条件、承諾要否などを完備。INCREASE ... NEW TOTAL ... EXTEND ... ALL OTHER TERMS ...
{3:{108:…}}MUR(Message User Reference)システム/運用上の追跡子。任意だが照合が容易に。{3:{108:AMENDMT767EXAMPLE}}
{1:}{2:}Basic/Appl. HeaderSWIFTヘッダー。BICや優先度等。生成/送信システムが自動付与。例の通り

行やコルレスによっては :33B(通貨・別額)や :72(Sender to Receiver)等を採用する場合があります。運用標準は発行行に合わせてください。

SWIFT カテゴリ7 MT767のまとめ

MT767は、保証状やスタンバイ信用状の「修正通知」として重要な役割を果たします。契約や取引条件の変化に応じて柔軟に保証内容を調整するため、取引の安全性と信頼性を維持する上で不可欠なメッセージです。

国際取引は長期にわたることも多く、その間に状況が変化するのは自然なことです。MT767を正しく理解・活用することで、信頼関係を崩さず、取引を円滑に進めることができます。

2025年8月23日 | 2025年10月30日