SWIFT MT701とは?MT700との違いと信用状追加条件の実務解説

SWIFT MT701とは?MT700との違いと信用状追加条件の実務解説

国際貿易において、信用状(Letter of Credit, L/C)は輸出者と輸入者の双方に安心をもたらす決済手段です。SWIFTメッセージの中でも MT700 が基本的な信用状の発行に用いられるのに対し、MT701 は、MT700に記載しきれなかった条件や補足情報を追加するためのメッセージです。

言い換えると、MT701は「MT700の続報」として発行され、信用状の条件を完全なものにする役割を果たします。

SWIFT MT701の主な用途

01. MT700の補足情報

信用状発行メッセージであるMT700には、文字数や項目数の制限があります。そのため、特に長文になりやすい「貨物説明(:45A:)」や「必要書類(:46A:)」などは記載が収まりきらないことがあります。こうした場合に、MT701が補助的に使われます。

02. 複雑な契約条件の追記

資源取引(原油・非鉄金属など)や、多品目を含む大口取引では、取引条件が細かく定義されるのが一般的です。例えば「SGSによる品質検査証明書を積出港で取得」「輸送時の梱包仕様を細かく指定」といった条件が契約書に盛り込まれている場合、MT700単体では不足し、MT701に分割記載されます。

03. 銀行のオペレーション面での補助

信用状発行銀行は、取引条件を正確にSWIFTフォーマットで伝える必要があります。もしMT700に無理に詰め込んで誤記・省略が発生すれば、後の決済で拒否の原因になります。そのリスクを避けるため、あえてMT701を分割して「第2の本文」として送るのです。

実務での利用例

  • 機械輸出案件
    部品リストが数十点に及び、インボイス記載条件を詳細に分ける必要がある場合
  • 農産物輸送
    等級ごとの品質規格や包装単位を逐一指定する必要がある場合
  • 長期契約
    複数回の船積を前提とする契約で、それぞれの条件を分けて明記する場合

このように、MT701は「補足説明用」ではあるものの、実際には信用状の完全性を担保するための必須メッセージとして、多くの実務で利用されています。

SWIFT MT701のサンプル

{1:F01XXXXJPJTAXXX0000000000}
{2:O7011234567890YYYYJPJTXXXX0000000000}
{4:
:20: LCREFXXXXXXX
:21: RELATED TO MT700
:45A: ADDITIONAL GOODS DESCRIPTION
     - COPPER CATHODES GRADE A, 99.99% PURITY
     - PACKAGING: STRAPPED IN BUNDLES
:46A: ADDITIONAL DOCUMENTS REQUIRED
     - CERTIFICATE OF ORIGIN ISSUED BY CHAMBER OF COMMERCE
     - SGS INSPECTION CERTIFICATE AT LOADING PORT
:47A: ADDITIONAL CONDITIONS
     - ALL DOCUMENTS MUST SHOW LC NUMBER
:72: SENDER TO RECEIVER INFORMATION
     THIS MT701 COMPLEMENTS MT700
-}

サンプルの意味

上記サンプルでは、MT700に収まりきらなかった「貨物説明」「必要書類」「追加条件」を補足しています。特に大規模な資源取引や多品目輸送では、輸出者・輸入者の双方が合意した細部条件を正確に反映するため、MT701が必須となります。

SWIFT MT701のフィールド番号一覧表

フィールド番号ラベル記載例意味
:20:Documentary Credit NumberLCREFXXXXXXX対象となる信用状の参照番号
:21:Related ReferenceRELATED TO MT700MT700との関連を明示するフィールド
:45A:Description of GoodsCOPPER CATHODES GRADE A…MT700で入りきらない商品の追加説明
:46A:Documents RequiredCERTIFICATE OF ORIGIN…MT700の続きとして必要書類を追加記載
:47A:Additional ConditionsALL DOCUMENTS MUST SHOW LC NUMBER補足的な条件や特記事項を追記
:72:Sender to Receiver InformationTHIS MT701 COMPLEMENTS MT700銀行間通信欄。MT700との関係を通知する

SWIFT MT701のメリット・デメリット・留意点

メリット

MT701はMT700を補う形で使われるため、単なる追加電文に見えがちですが、実務上は多くの利点があります。特に複雑な取引条件を明確にする場面では、その存在感が大きく発揮されます。

  • MT700だけでは不足する詳細条件を補足できる
  • 貿易契約内容を正確に反映でき、誤解や曖昧さを防止
  • 条件を段階的に整理でき、読みやすさを確保

これらのメリットによって、MT701は国際貿易の現場で信用状をより正確にし、実務担当者にとって安心できるツールとなっています。特に条件交渉が細かい案件ほど、MT701の効果が際立ちます。

デメリット

一方で、MT701の利用には負担も伴います。追加情報を管理するがゆえに、オペレーション面での課題やリスクが発生することも少なくありません。

  • MT700とMT701を照合しながら確認する必要があり、手続きが煩雑になる
  • 情報が複数メッセージに分かれるため、抜けや誤読のリスクが増える
  • 条件不一致が発生した場合、輸出入双方にトラブルの火種となり得る

このようなデメリットは避けられない面もありますが、銀行・輸出者・輸入者が相互に確認プロセスをしっかり行うことで、トラブル発生の可能性を大幅に減らすことが可能です。

留意点

MT701を実務で扱う際には、利点・欠点を理解するだけでは不十分です。特に信用状は「書類取引」であるため、細部まで正確に運用するための注意が欠かせません。

  • 契約条件と完全一致しているかを必ず両方の電文で確認する
  • MT701単体では効力がなく、必ずMT700とセットで利用される点に注意
  • 銀行間での伝達・処理の際に、MT701が正しく添付・参照されているか確認が必要
  • 書類作成・提出の際には、MT701の補足条件も確実に反映させる必要がある

これらの留意点を意識することで、MT701を「便利な補足ツール」として活かせるだけでなく、信用状取引全体を安全に進めることができます。特に新人担当者や初めて扱う企業にとっては、事前にルールを理解しておくことが重要です。

SWIFT MT701のまとめ

MT701は、MT700に追加情報を補うための「続報メッセージ」であり、両者は常にセットで扱われます。

特に複雑な取引では、MT701が信用状の正確性を高め、輸出者・輸入者双方にとって安心材料となります。一方で、複数メッセージに分割されるため確認作業が増え、ミスが起きやすい側面もあります。
したがって、MT700=信用状の骨格、MT701=肉付け部分と捉え、実務上は両者を合わせて慎重に取り扱うことが肝要です。

2025年8月26日 | 2025年9月30日