年明けに要確認 原産地規則の変更点 2026年版 日本輸入実務で注意したいポイント
なぜ年明けは原産地規則の確認が重要なのでしょうか。
年明けは、貿易実務において制度や運用が切り替わるタイミングです。関税率の改定だけでなく、原産地規則そのものが見直されることも多く、前年と同じ判断基準で取引を続けていると、特恵関税が適用されない、あるいは事後的に否認されるリスクがあります。
特にEPAやFTAは、年度区切りで附属書や品目別規則が更新されることがあり、2026年も例外ではありません。年明けに一度立ち止まって原産地規則を再確認することは、輸入者にとって重要なリスク管理の一つです。
原産地規則の基本を簡単におさらい
原産地規則とは、当該貨物がどの国を原産国と認められるかを判断するための基準です。大きく分けると、完全生産品と実質的変更基準の二つがあります。
完全生産品は、その国で完全に生産・採取されたものを指します。一方、多くの工業製品は複数国の原材料を使用して製造されるため、実質的変更基準によって原産性が判断されます。
実質的変更基準には、関税分類変更基準、付加価値基準、加工工程基準などがあり、EPAごと、品目ごとに細かく定められています。この点が原産地実務を難しくしている要因でもあります。
2026年の年明けに見られやすい原産地規則の変更点
2026年に向けて特に注意したいのは、以下のような変更パターンです。
まず、品目別規則の見直しです。特定のHSコードについて、関税分類変更の要件が厳しくなったり、逆に緩和されたりするケースがあります。前年まで原産と判断できていた製品が、規則変更により非原産扱いとなる可能性も否定できません。
次に、HSコード改正との連動です。HSコードは定期的に改正されており、その影響で原産地規則の条文中の番号や適用範囲が読み替えられる場合があります。コード変更に気づかず、旧番号の規則を参照してしまうのは、年明けに多いミスの一つです。
さらに、付加価値基準の計算方法や割合の調整も見られます。付加価値率そのものが変更されることは多くありませんが、計算に含められる費用項目の扱いが明確化されたり、解釈が変わることがあります。
累積規定の適用条件が整理されるケースもあります。複数国をまたぐサプライチェーンでは累積規定が重要ですが、対象国や適用範囲が明確化されることで、従来の判断が通用しなくなることもあります。
実務で影響が出やすいポイント
制度変更の影響は、現場では静かに、しかし確実に現れます。たとえば、長年同じ製品を同じ条件で輸入していた場合でも、原産地規則の変更によって、突然特恵関税が使えなくなることがあります。
また、サプライヤーから取得している原産性に関する説明や計算資料が、最新の規則に対応していないケースも見受けられます。2026年版の規則を前提に、再度説明資料の提出を求める必要が生じることもあるでしょう。
インボイスや原産地証明書の記載内容にも注意が必要です。証明書自体は有効でも、その裏付けとなる規則が変わっていれば、実質的には不十分と判断される可能性があります。
日本へ輸入する際に特に注意しておきたい点
日本へ輸入する場合、輸入者は原産性の最終的な説明責任を負う立場になります。原産地証明書を取得しているから安心、という考え方は危険です。
まず、輸入申告時点で適用しているEPAやFTAが最新のものであるかを確認することが重要です。過去に取得した証明書や計算資料をそのまま流用するのではなく、2026年時点での規則に照らして再確認する必要があります。
次に、事後確認を見据えた資料保管です。日本の輸入実務では、原産性に関する資料の提出を求められることがあります。その際、規則改定前後の違いを説明できないと、特恵関税の否認につながるリスクがあります。
また、商社やフォワーダー任せにせず、自社として原産地判断のロジックを把握しておくことも重要です。少なくとも、どの規則を根拠に原産と判断しているのかを説明できる状態を維持しておくことが望まれます。
よくある勘違いと年明け特有のトラブル
年明けによく見られるのが、関税率だけを確認して原産地規則を見落とすケースです。関税率が下がっていても、原産と認められなければ特恵は適用できません。
また、前年の品目別規則をそのまま引用してしまうミスも多く見られます。条文の文言が微妙に変わっているだけでも、判断結果が変わることがあるため注意が必要です。
HSコード改正と原産地規則の改定を別物として扱ってしまうのも典型的な落とし穴です。両者は密接に関係しているため、必ずセットで確認する意識が求められます。
年明けに行いたいチェックリスト
2026年の年明けに行いたい基本的なチェックとしては、以下のような点が挙げられます。
- 適用しているEPAやFTAの最新版確認
- 対象品目のHSコードと品目別規則の再確認
- 原材料構成と原産性計算の見直し
- サプライヤーへの確認事項の整理
- 社内での判断根拠の共有と記録
これらを一度整理しておくだけでも、年内・年初のトラブルを大きく減らすことができます。
原産地規則チェックリスト(2026年版)
| チェック項目 | 確認内容 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 適用EPA・FTAの最新版確認 | 利用しているEPA・FTAが2026年時点で最新か | 発効日・附属書改定日を確認 |
| HSコードの再確認 | 現在使用しているHSコードが改正後も正しいか | HS改正による番号変更・分割に注意 |
| 品目別規則(PSR)の確認 | 対象品目の原産地規則に変更がないか | 条文の文言変更・例外規定の有無 |
| 原材料構成の見直し | 非原産材料の割合や構成に変更がないか | 新規材料・調達先変更の影響 |
| 付加価値基準の再計算 | 付加価値率が最新規則を満たしているか | 計算式・含算項目の扱い |
| 累積規定の適用可否 | 累積対象国・条件に変更がないか | 適用範囲の限定・整理に注意 |
| 原産性説明資料の更新 | 計算表・説明書が2026年規則ベースか | 年度表記・規則番号の更新 |
| 原産地証明書の様式確認 | 使用している証明書様式が有効か | 自己証明・第三者証明の区別 |
| インボイス記載内容 | 原産国表示・文言が最新要件を満たすか | 表記揺れ・略称に注意 |
| 資料保管体制 | 事後確認に備えた資料が揃っているか | 規則改定前後の説明可否 |
| 社内共有 | 判断根拠を社内で共有できているか | 属人化の防止 |
まとめ

2026年の年明けにおいても、原産地規則の変更点を見落とさないことは、輸入実務の安定運用に直結します。制度は静かに変わりますが、その影響は確実に実務に及びます。
特に日本へ輸入する立場では、証明書の有無だけでなく、原産性の根拠そのものを理解しておくことが重要です。年明けのタイミングを、原産地規則を再点検する良い機会として活用することが、長期的なリスク低減につながると言えるでしょう。
参考外部リンク
・税関
原産地規則やEPA・FTAに関する最新情報、事後確認制度の解説などが掲載されています。
https://www.customs.go.jp/
・財務省
関税制度や通達、制度改正の背景を確認する際に参考になります。
https://www.mof.go.jp/
・経済産業省
EPA・FTAの概要、原産地規則の考え方、自己申告制度に関する資料が公開されています。
https://www.meti.go.jp/
・JETRO
各EPAの実務解説、国別・品目別の注意点、セミナー資料などが充実しています。
https://www.jetro.go.jp/
・World Customs Organization
HSコード改正や国際的な原産地規則の考え方を確認する際の参考資料があります。
https://www.wcoomd.org/