LC、DLC、SBLCとは

LC、DLC、SBLCとは

海外との取引を行う上で、金額が大きくなってくるとリスクを回避するため現金ベースではなく、別の決済を用いることがあります。なかでもLC、DLC、SBLCなどは、よく出てくるワードになっています。

1. LC(Letter of Credit / 信用状)

もっとも一般的な信用状で、輸入者(買い手)の依頼で銀行が発行し、輸出者(売り手)に対して支払いを保証する仕組みになっています。メリットとデメリットをここで紹介します。

メリット

1-m-1. 輸出者にとっては、書類を整えて提出すれば銀行から確実に代金回収ができる(買い手の信用度に左右されにくい)。
1-m-2. 輸入者にとっては、契約条件どおりの船積書類が揃わなければ支払い義務が発生しない。
1-m-3. 国際的に広く使われているため、ルール(UCP600)も整備されている。

デメリット

1-d-1. 開設コスト(銀行手数料)がかかる。
1-d-2. 書類不一致が起きやすく、その場合は支払い遅延や拒否のリスクがある。
1-d-3. 輸入者にとっては信用状発行時に銀行に担保や与信枠が必要。

2. DLC(Documentary Letter of Credit / ドキュメンタリーL/C)

LCの中でも正式には「信用状付き取引(Documentary Credit)」を指しています。前述した通常のLCは書類提出を条件とするので、実務上「DLC」と呼ぶ場合は「貿易書類を根拠に支払いが保証されるL/C」を強調する場面で使われます。

メリット

2-m-1. LCと同様に、輸出者は書類ベースで確実に支払いを受けられる。
2-m-2. 輸入者は、貨物が積み込まれたことを確認できる書類(B/Lなど)が揃うまで支払いが発生しない。

デメリット

2-d-1. 実質的にはLCと同じで、コスト・手続きの煩雑さがデメリット。
2-d-2. 実物の貨物品質は保証されない(書類が正しければ支払いが実行される)。

3. SBLC(Standby Letter of Credit / スタンバイ信用状)

通常の支払い方法が履行されなかった場合に備える「保証的な信用状」。保証状に近い性質を持っていて、米国系の取引でよく利用される。

メリット

3-m-1. 輸出者にとっては、輸入者が支払不能になっても、SBLCを根拠に銀行から支払いを受けられる。
3-m-2. 実際には通常の送金(T/T)やD/A決済を使い、万一の不履行時にSBLCを請求する形なので柔軟性が高い。
3-m-3. 保証の国際的代替手段として広く利用される(ISP98というルールがある)。

デメリット

3-d-1. 保証的な性質ゆえ、実際に決済手段として行使されるケースは稀。輸出者側に「本当に支払いされるのか」という心理的不安が残る。
3-d-2. 輸入者は銀行に与信枠や担保を求められる。
3-d-3. 銀行手数料が高めになることもある。

信用状の現場から見た「LC・DLC・SBLC」の違いはなに?

決済方法の選択は、リスクを回避する必要があるため、常に頭を悩ませるポイントになります。LC・DLC・SBLCといった信用状は、銀行が介在するため「安心できる」と思われがちですが、実際の現場では一長一短があります。

LC(信用状)

輸出取引をしたとき、取引先から「LCでお願いしたい」と言われたと仮定しましょう。LCは書類さえ揃えれば銀行が支払いを保証してくれるため、輸出者にとっては確実にお金を回収できる手段です。

しかし、実際に契約を締結し取引を進めていくうちに「書類不一致」という壁にすぐぶつかります。インボイスの一文字の違いや、B/Lの日付のズレなどで、銀行が受け付けないことがあります。輸入者側も、信用状を発行するために銀行へ取引額に応じて、指定された割合の担保を差し入れる必要があり、負担は小さくありません。

安心感はありますが、実務上は「神経をすり減らす」決済方法と言えなくもありません。

DLC(ドキュメンタリーL/C)

DLCは、いわゆる「書類付きの信用状」。LCとの違いがわかりづらいですが、現場では「とにかく書類で決済が進む」という点を強調する意味で使われていました。

輸出者にとっては、船積み書類さえ整えば支払いが保証されるため、比較的安心です。ただし、品質までは保証されません。

仮に「書類は完璧だったけれど、実際の商品が規格外だった」という場合、輸入者にとってはリスクを回避できていないことになります。

「書類の完璧さ」を要求される点ではLCと同じですが、書類ベースで動く取引の“シビアさ”を強調した手段でしょう。

SBLC(スタンバイ信用状)

米国などと取引をする際などに出てくるSBLCですが、これは通常の決済(送金や手形)が履行されなかった場合に備える“保険”のような信用状です。

正直に言えば、輸出者としては「本当に使われるのか?」と不安になることもあります。ほとんどは契約の安心材料として存在するだけと考えても良いかもしれません。

一方、輸入者にとっては「とりあえずSBLCを付けておけば、相手に安心感を与えられる」メリットがあります。特にアメリカの商習慣では、保証の代替として一般的に使われていました。

まとめ

要するに、LCやDLCは「書類を揃えれば必ず支払われる」という強みがある一方で、実務的には書類不一致が大きなリスク。SBLCは「万一の保険」として機能し、特に米国系の取引で重宝されます。

決済手段として一言で表すなら、
LC/DLC→「安心だけど手間が増える」
SBLC→「安心材料だけど使う機会は少ない」

この違いを理解しておくと、交渉時のリスクを回避しやすくなるかもしれません。

2025年7月14日 | 2025年8月24日