SWIFT MT720・MT721とは?信用状部分承諾と詳細通知の役割

SWIFT MT720・MT721とは?信用状部分承諾と詳細通知の役割

国際貿易における信用状(Letter of Credit, L/C)は、輸出入取引の支払いを保証する重要な手段です。中でも、取引条件の一部を輸出者が承諾する場合に利用されるのがSWIFTメッセージカテゴリ7に属する MT720 および MT721 です。これらのメッセージは、信用状の条件を部分的に確認・承諾する役割を持ち、輸出入取引の調整局面で用いられます。

SWIFT MT720とSWIFT MT721の概要とポイント

SWFIT MT720: Transfer of a Documentary Credit (Credit Transfer Advice)

SWIFT MT720は、発行済みの信用状を部分的に承諾または条件付きで受け入れる際に使用されるメッセージです。特に、発行銀行や通知銀行から受け取った信用状に対して「特定条件は承諾するが、その他条件は留保する」といった意思を通知するために用いられます。

SWFIT MT720のポイント

01. 信用状の条件に対する部分的な承諾

信用状は多くの条件が付随するため、すべてを一度に受け入れることが難しいケースがあります。その際、輸出者はまず受け入れ可能な部分だけを承諾し、交渉の余地を残すためにMT720を利用します。

02. 受益者(輸出者)が特定条件に合意する意思を示す

取引の先行きが不透明でも、輸出者が部分的にでも条件を承諾することで、契約成立に向けた積極的な姿勢を示すことができます。これは輸入者や銀行にとっても安心材料となり、取引継続の意思表示として重要です。

03. 追加の修正依頼や交渉の前段階で活用

MT720は、全面的な修正や交渉の前に「まずは受け入れ可能な範囲」を示す役割を果たします。これにより、必要な修正点を明確にし、交渉を効率的に進める土台を築きます。

SWIFT MT721: Transfer of a Documentary Credit (Details of Partial Transfer)

MT721は、MT720での部分承諾を補足し、承諾された条件や部分移転の具体的な詳細を通知するメッセージです。主に受益者や関係銀行に対し、承諾済みの信用状条件を明確化する役割を持ちます。

SWIFT MT721のポイント

部分承諾の詳細内容を明示

MT721では、MT720で示された「承諾部分」が具体的にどういった条件であるかを文書化します。これにより、条件の曖昧さが排除され、誤解や後日のトラブルを防止します。

承諾された条件を関係当事者に共有

発行銀行・通知銀行・輸出者といった複数当事者の間で、共通理解を形成することがMT721の大きな役割です。承諾条件が正確に共有されることで、各当事者が次のステップに進む準備が整います。

取引を進めるための確定情報を提供

部分承諾が合意されると、その情報を基に書類準備や貨物手配が始まります。MT721は、交渉段階から実務段階へと移行するための「確定通知」として機能し、実際の貿易手続きを円滑に進める要になります。

SWIFT MT720、MT721が使用されるケース

輸出者が信用状の条件を一部のみ承諾する場合

例えば輸出者が「出荷期日は承諾できるが、保険条件については再交渉したい」と考える場合です。
分かりやすく置き換えると、レストランでコース料理を頼んだ際に「前菜とメインはそのままでいいけど、デザートだけ変更してほしい」と伝えるイメージです。

契約条件に一部齟齬があるが、交渉を続行するため承諾可能部分のみ通知する場合

例えば、数量や金額は合意できるが、船積み港の指定が希望と異なる場合です。
こちらも分かりやすく置き換えると、賃貸契約の下見で「家賃と間取りは希望通りなので承諾するけど、入居開始日の調整は必要」と伝えるのに似ています。

受益者が複数に分かれている場合の部分的信用状移転

例えると大きな注文を複数の輸出者で分担する場合、それぞれの輸出者に割り当てられた部分のみを承諾するケースです。
置き換えると、学校のグループ課題で「私は資料作成の部分を引き受けます。他の部分はメンバーが担当してください」と役割を分担するイメージです。

SWIFT MT720とMT721の比較表

MT720とMT721はいずれも「信用状の部分承諾」に関連するメッセージですが、役割や用途には明確な違いがあります。MT720は承諾そのものを通知するのに対し、MT721はその詳細を具体的に伝えるために使われます。以下の表で両者の違いを整理してみましょう。

項目MT720MT721
メッセージ名Transfer of a Documentary Credit (Credit Transfer Advice)Transfer of a Documentary Credit (Details of Partial Transfer)
役割信用状条件の部分承諾を通知部分承諾の詳細を明確化
主な送信者発行銀行 / 通知銀行発行銀行 / 通知銀行
主な受信者受益者(輸出者)受益者、関係銀行
使用場面信用状条件の一部承諾を伝える承諾条件の具体的内容を通知する

このように、MT720とMT721は「承諾の意思表示」と「承諾内容の詳細化」という補完関係にあります。取引の初期段階で柔軟に承諾姿勢を示すのがMT720であり、その後の実務に耐えうる確定情報を関係者に伝えるのがMT721です。両者をセットで理解しておくことで、国際貿易の交渉や契約手続きがより円滑に進められるでしょう。

SWIFT MT720、MT721のサンプル

サンプル MT720:Transfer of a Documentary Credit (Credit Transfer Advice)

{1:F01XXXXBANKXXXX0000000000}
{2:O7201234567890XXXXBANKXXXX0000000000N}
{3:{108:REF123456789}}
{4:
:20: TRANSREF12345
:21: LCREF98765
:30: 250921
:32B: USD100000,
:50: BENEFICIARY NAME
XXXX TRADING COMPANY LTD.
ADDRESS: XXXX, TOKYO, JAPAN
:59: NEW BENEFICIARY NAME
**** SUPPLY CORPORATION
ADDRESS: XXXX, SHANGHAI, CHINA
:71A: OUR
:72:/ACC/ PARTIAL TRANSFER OF CREDIT UNDER TERMS AGREED
}
{5:{CHK:123456789ABC}}

サンプル MT721:Transfer of a Documentary Credit (Details of Partial Transfer)

{1:F01XXXXBANKXXXX0000000000}
{2:O7211234567890XXXXBANKXXXX0000000000N}
{3:{108:REF987654321}}
{4:
:20: TRANSREF67890
:21: LCREF98765
:30: 250921
:32B: USD50000,
:50: BENEFICIARY NAME
XXXX TRADING COMPANY LTD.
ADDRESS: XXXX, TOKYO, JAPAN
:59: SECOND BENEFICIARY NAME
**** IMPORTS LIMITED
ADDRESS: XXXX, HONG KONG
:40E: PARTIAL TRANSFER OF DOCUMENTARY CREDIT
:45A: CONDITIONS TRANSFERRED ONLY FOR SHIPMENT OF STEEL COILS
:71A: SHA
:72:/NOTE/ DETAILS OF PARTIAL TRANSFER CONFIRMED
}
{5:{CHK:987654321XYZ}}

SWIFT MT720、MT721のサンプル補足

  • :20: → 送金参照番号
  • :21: → 元の信用状番号
  • :32B: → 金額・通貨
  • :50: / :59: → 受益者(ベネフィシャリー)情報
  • :40E: → 信用状の種類や移転の形態
  • :72: → 追加情報

SWIFT MT720、MT721のメリット・デメリット・留意点

MT720やMT721を利用することで、取引を進める上での柔軟性は高まりますが、その一方で注意すべき点も存在します。ここでは、実務上よく指摘されるメリット、デメリット、そして円滑に運用するための留意点を整理してみましょう。

メリット

  • 取引を全面的に否定せず、進展を可能にする
  • 条件交渉の柔軟性を確保
  • 誤解を防ぎ、部分的にでも契約履行を進められる

デメリット

  • 承諾部分と非承諾部分の区別が不明確な場合、取引が停滞する
  • 曖昧な承諾内容は後のトラブルにつながる可能性
  • 複数回のやり取りが発生し、手続きが煩雑になる

留意点

  • 承諾・非承諾条件を文書で明確化すること
  • 各当事者間で同一内容を共有すること
  • 認識の齟齬を防ぐため、MT721による詳細通知が重要

MT720とMT721の活用は、国際取引における「交渉の柔軟性」と「合意内容の明確化」を両立させる重要な仕組みです。メリットとしては取引の継続性や信頼性を確保できる一方で、デメリットとしては条件の曖昧さが残れば手続きが複雑化するリスクもあります。そのため、留意点で触れたように、条件の明確化や関係者間の情報共有を怠らないことが不可欠です。これらを踏まえることで、MT720とMT721は信用状取引をより円滑にし、双方にとって安心できる合意形成を支える役割を果たします。

SWIFT MT720、MT721のまとめ

MT720およびMT721は、信用状条件に対する部分承諾を扱う重要なメッセージです。全条件を即時に受け入れられない場合でも、承諾可能部分を通知することで交渉を継続でき、取引成立の可能性を高めます。国際貿易においては、こうした柔軟な対応が商談を円滑に進める鍵となります。

2025年8月22日 | 2025年10月30日