SWIFT MT710、MT711:信用状発行通知の仕組みと実務上の注意点を解説

SWIFT MT710、MT711:信用状発行通知の仕組みと実務上の注意点を解説

SWIFT MT710 、MT710の概要

SWIFT MT710 信用状(L/C)の発行通知とは?

SWIFTカテゴリ7、MT710は、信用状(Letter of Credit, LC)の発行通知を行うためのSWIFTメッセージです。発行銀行が直接受益者の銀行(通知銀行)に信用状を送信する場合に利用されます。輸出者にとっては、買主の依頼によって信用状が正式に発行され、支払い保証が得られる重要なステップとなります。

SWIFT MT711 信用状(L/C)の発行通知(継続電文)とは?

同じくSWIFTカテゴリ7、MT711はMT710の“継続メッセージ”として用いられ、MT710に収まりきらない情報(主に:45A 商品説明、:46A 必要書類、:47A 追加条件)を追加送信するための電文です。発行銀行から受領した信用状を通知する通知銀行(advising bank)が、受益者側へ通知する銀行(または別の通知銀行)に送る点はMT710と同じですが、「情報量が多い場合にMT710に追加で送る」のがMT711の役割です。

SWIFT MT710 、MT711の役割

SWIFT MT710 信用状(L/C)の発行通知の役割

MT710は、信用状取引の流れの中でも実務上きわめて重要な段階を担っています。単に条件を伝達するだけでなく、輸出者に対して「代金回収が保証される」という安心感を提供し、国際取引を円滑に進めるための土台となるメッセージです。その役割は以下のとおりです。

  • 発行された信用状の条件を、受益者に正しく通知する
  • 輸出者にとって代金回収の保証を提供する
  • 信用状取引のスムーズな進行を可能にする

SWIFT MT711 信用状(L/C)の発行通知(継続電文)の役割

MT711は、MT710の内容を補完し、信用状条件を過不足なく伝えるために使われます。
重要なポイントは次のとおりです。

  • 送信目的は「条件の追加通知」:
    MT710の続きとして、長文になりがちな商品明細・必要書類・追加条件を安全に伝達。
  • 矛盾禁止・重複禁止
    MT711の記載は関連するMT710と矛盾してはならず、同一フィールドの繰り返し記載も不可(追記・延長のための電文という位置づけ)。
  • 規則の明示はMT710側
    適用ルール(例:UCP600など)の表示はMT710の:40E側で行うのが原則。

SWIFT MT710 信用状(L/C)の発行通知に含まれる情報

信用状の取引では、条件や必要書類にわずかな不備があるだけで支払いが滞ることがあります。そのため、MT710には取引の根幹に関わる詳細な情報が盛り込まれており、輸出者・輸入者双方が同じ条件を共有することで、誤解やトラブルを未然に防ぐ役割を果たしています。以下が主な内容です。

項目内容例
信用状番号・発行日・有効期限L/C番号、発行日、利用可能期限、最終有効日
関係銀行・当事者発行銀行、通知銀行、申請人(輸入者)、受益者(輸出者)
金額・通貨・利用方法USD/EUR等、総額、sight(一覧払い)やusance(手形期日払い)
書類提出先・提出期限書類を提出する銀行や場所、提出締切日
出荷条件FOB, CIF, CFRなどインコタームズに基づく条件
必要な貿易書類商業インボイス、船荷証券(B/L)、保険証券、パッキングリスト等

SWIFT MT710 信用状(L/C)の発行通知のテンプレート

{1:F01XXXXBANKXXXX0000000000}
{2:I710YYYYBANKXXXXN}
{4:
:27: 1/1
:20: L/C番号 XXXX123456
:25: 発行銀行口座 ZZZZ999999
:30: 発行日 YYMMDD
:31C: 有効期限 YYMMDD / 国コード XX
:40A: UCP600適用 / Irrevocable Documentary Credit
:50: 申請人(Applicant)
      Company Name: XXXX Corporation
      Address: XXXX, City, Country
:59: 受益者(Beneficiary)
      Company Name: ZZZZ Trading Ltd.
      Address: ZZZZ, City, Country
:32B: 金額
      Currency: USD
      Amount: XXXXXXX
:41A: 使用銀行
      XXXX BANK, SWIFT: XXXXXXXX
:42C: 有効期限 / プレゼンテーション場所
      YYMMDD at XXXX BANK
:44A: 出荷地/積地
      XXXX Port
:44B: 荷受地/仕向地
      ZZZZ Port
:44C: 最新船積日 YYMMDD
:45A: 商品説明
      XXXX 商品(詳細略)
:46A: 必要書類
      - 商業インボイス
      - 船荷証券(B/L)
      - 保険証券
      - パッキングリスト
:47A: 特別条件
      - All documents must show L/C No. XXXX123456
      - Documents must be presented within 21 days after shipment
:71B: 銀行手数料
      To be paid by Applicant
-}

MT710 主なフィールド解説表

MT710には多くのフィールドが含まれており、それぞれが信用状取引における重要な意味を持っています。フィールドコードは一見すると単なる数字や記号に見えますが、国際的に統一されたルールに基づき、銀行間で誤解なく情報をやり取りするための言語のような役割を果たしています。以下の表では、代表的なフィールドとその意味を整理しました。

フィールド意味解説
:20:L/C番号信用状を識別する固有の番号。契約や書類照合の基準となる。
:25:発行銀行口座信用状を発行する銀行の口座番号。支払処理の拠点となる。
:30:発行日信用状が正式に発行された日付。契約条件の起点になる。
:31C:有効期限信用状が利用できる最終日。有効期限を過ぎると使用不可。
:40A:信用状の形式取消不能/UCP600適用など、信用状の法的拘束条件を示す。
:50:申請人(Applicant)輸入者。信用状の発行を依頼する主体。
:59:受益者(Beneficiary)輸出者。信用状に基づいて代金を受け取る主体。
:32B:金額・通貨信用状で保証される金額と通貨。
:41A:使用銀行書類提出や支払処理を担当する銀行。
:44A/44B:出荷地・仕向地FOBやCIF条件に基づく出荷港・到着港。
:44C:最新船積日出荷が可能な最終日。契約遵守の重要な期限。
:45A:商品説明対象となる商品や取引内容の概要。
:46A:必要書類輸出者が提出すべき貿易書類(インボイス、B/L、保険証券など)。
:47A:特別条件その他の条件や追加要件。例えば「書類は21日以内に提出」など。
:71B:銀行手数料手数料の負担者(輸入者 or 輸出者)を明示。

実務で注意すべき主要フィールド

MT710に含まれるフィールドの中でも、特にトラブルの原因となりやすい項目があります。たとえば、:31C:(有効期限)や:44C:(最新船積日)は、少しの遅延でも信用状の効力を失わせる重大な要素です。また、:46A:(必要書類)は細部まで正確に一致していないと「不一致(ディスクレパンシー)」と判断され、支払いが保留される恐れがあります。さらに:47A:(特別条件)は、追加要求が記載されることが多いため、見落とすと後々の回収リスクにつながります。したがって、輸出者はこれらのフィールドを優先的に精査し、条件に沿った対応を徹底することが実務上きわめて重要です。

SWIFT MT711 信用状(L/C)の発行通知(継続電文)に含まれる情報

MT711に載る中心情報は、MT710で入り切らなかった「記述系フィールド」です。

  • :45A 商品・役務の説明(例:仕様・等級・梱包・インコタームズ等の詳細)
  • :46A 必要書類(例:商業インボイス、船荷証券、保険証券、原産地証明 等の要件を列挙)
  • :47A 追加条件(例:呈示期限の細則、書式要件、文言指定 など)
    併せて系列管理の:27(総通数/通番)、参照番号の:20、**信用状番号:21**が用いられます。

SWIFT MT711 サンプル

{1:F01XXXXBANKXXXX0000000000}
{2:I711YYYYBANKXXXXN}
{4:
:27: 2/2                      // 例:全2通のうち2通目(MT710が1/2)
:20: REF-XXXX-ADVICE          // 送信者参照
:21: LCNO-XXXX123456          // 信用状番号(発行銀行付番)
:45A: + 商品明細の続き
     +1) Commodity XXXXX ...(詳細略)
     +2) INCOTERMS: CIF TOKYO 2020
:46A: + 必要書類の続き
     +1) Commercial Invoice ...(詳細略)
     +2) Full set of B/L ...(詳細略)
:47A: + 追加条件の続き
     +1) All documents must ...(詳細略)
     +2) Presentation within ...(詳細略)
-}

MT711はMT710の続きとして作られ、同じフィールドの情報を重複再掲せず、矛盾のない追加記載に限定されます。

MT711 主なフィールド解説表

フィールド名称役割・ポイント
:27:シーケンス(通番/総通数)一連の電文管理。例:2/2 は全2通の2通目(=MT710が1通目)。
:20:送信者参照送信側での管理番号。MT710との連続性のトレースに用いる。
:21:信用状番号発行銀行が付与したL/C番号。MT710と一致している必要。
:45A:商品説明(続き)長文のスペック・条件を列挙(+1), +2) 等で行頭管理)。
:46A:必要書類(続き)書類の要件・文言の詳細を記載(読み替え・変更は不可)。
:47A:追加条件(続き)呈示期限の細則や表示文言等を追記(MT710と矛盾不可)。

SWIFT MT711実務で注意すべき主要ポイント

  • 矛盾チェックの徹底:MT711はMT710の補遺文言の齟齬二重管理はディスクレパンシーの温床。
  • 通番:27の整合:通知側・受領側双方で1/2→2/2の連番を明確化し、不足分がないか必ず検証。
  • 「規則」はMT710側:UCP等の準拠規則をMT711に新規記載しない(メインはMT710の:40E)。

SWIFT MT710 信用状(L/C)の発行通知におけるメリット・デメリット・留意点

メリット

MT710は、輸出者にとって「支払い保証の裏付けが確定した」という強い安心感をもたらします。銀行が発行した信用状に基づくため、契約条件を満たす限り代金回収のリスクは大幅に軽減されます。また、国際標準のSWIFTフォーマットを用いることで、誤解の少ない透明な取引を進められる点も大きな利点です。

デメリット

一方で、信用状の条件は非常に厳密に適用されます。提出書類が信用状条件と少しでも異なれば「不一致(ディスクレパンシー)」とされ、支払い拒否や遅延の原因となり得ます。また、信用状発行・通知に伴う銀行手数料の負担も発生するため、コスト増加の側面があります。

留意点

MT710を受領した輸出者は、信用状の内容を細部まで精査し、自社の契約条件と矛盾がないかを確認することが不可欠です。特に有効期限や船積期限、必要書類の要件はトラブルの温床となるため、早い段階で確認し、必要に応じて修正依頼を出すことが望まれます。実務においては、MT710は「安心と同時に細心の注意を要する通知」として扱うべきものです。

SWIFT MT711信用状(L/C)の発行通知(継続電文)のメリット・デメリット・留意点

メリット

  • 長文条件の安全な伝達文字数制限を回避しつつ、仕様・書類・追加条件を正確に伝えられる。

デメリット

  • 運用負荷の増加電文が複数通になるため、受領・照合・保管・更改の事務負担齟齬リスクが上がる。

留意点

  • 「追加」原則の順守同一フィールドの再掲・書き換えは不可。MT710と齟齬があれば修正要求を。

MT710とMT711の差分早見表

観点MT710MT711
位置づけ第三銀行(または非銀行)発行信用状の発行通知(本体)継続メッセージ(MT710に入り切らない情報の追加)
主なフィールド:20:/:21:/:31C:/:40A/40E/:50/:59/:32B/:41A/:44A/B/C/:45A/:46A/:47A/:71B など:27:/:20:/:21: と **:45A/:46A/:47A の“続き”が中心
規則表示:40E(UCP等)はこちらに記載記載しない(MT710側の規則を継承)
文言本体条件の通知重複・矛盾のない追記のみ可
使う場面通常のL/C通知長文・多条件でMT710の文字数上限を超えるとき

SWIFT MT710 、MT711のまとめ

SWIFT MT710 信用状(L/C)の発行通知のまとめ

MT710は、信用状の正式発行を通知する中核的なメッセージであり、輸出者にとって安心して取引を進められる重要な拠り所となります。ただし、条件遵守や書類作成には細心の注意が求められるため、実務担当者には銀行実務や国際貿易の知識が不可欠です。

SWIFT MT711 信用状(L/C)の発行通知(継続電文)のまとめ

MT711は、MT710の続きとして記述情報を補完するための継続電文です。主に:45A/:46A/:47Aの詳細を追記し、通番:27で一連管理します。MT710との一体運用を前提に、重複・矛盾の禁止という原則を守ることで、ディスクレパンシーを未然に防ぎ、信用状条件の完全伝達を実現します。

2025年8月20日 | 2025年10月30日