【2026年版】紛争・戦争リスク下の貿易で要注意の国・地域リストと実務対策

【2026年版】紛争・戦争リスク下の貿易で要注意の国・地域リストと実務対策

近年、世界各地で紛争や戦争、地政学的な緊張が相次ぎ、国際貿易を取り巻く環境は急速に不確実性を増しています。取引相手の国で直接的な戦闘が起きていなくても、経済制裁の強化、物流ルートの遮断、決済銀行の対応変更などにより、突然取引が停止するケースも珍しくありません。とくに新規取引先との貿易では、「相手国は問題なさそう」という感覚的な判断が、思わぬ損失につながることもあります。本記事では、現在の国際情勢を踏まえ、貿易実務の視点から注意すべき国・地域の考え方と、紛争・戦争が取引に与える影響、実務で取るべき対策を整理します。

要注意となる国や地域

注意すべきは「国名そのもの」だけではありません。取引の途中に登場する経由地(港・空港)、船会社、保険会社、決済銀行まで含めてリスク評価するのが実務的です。情勢は短期間で変わるため、公的ソースの最新情報で必ず上書きしてください。

1) 制裁・輸出管理が強い(または強化されやすい)国・地域

  • 例:制裁対象国・地域、輸出管理が厳しい国・地域(地域指定制裁があるケースを含む)
  • 注意点:相手国が制裁対象でなくても、相手の実質支配者(Beneficial Owner)や決済銀行、船会社がリスト該当になると取引が止まります。

制裁プログラムや対象の更新は頻繁です。米国(OFAC)やEUなどの一次情報で確認する運用が安全です。

2) 戦闘・内戦・治安悪化で、物流・現地運営が不安定な国・地域

  • 渡航・滞在リスクが高い国・地域(国全体だけでなく、都市・州・国境付近などの地域指定に注意)
  • 例:政変・武装勢力・誘拐リスクが高い地域、港湾周辺が不安定な地域、通信や金融インフラが不安定な地域

国のラベルだけではなく、取引先の所在都市・港・国境線がどの指定に入っているかまで落とし込むと判断の精度が上がります。

3) 主要海上チョークポイント周辺(通航リスクが高い海域)

  • 例:紅海〜アデン湾、ホルムズ海峡周辺、黒海周辺など
  • 注意点:仕向国が比較的安全でも「通るルート」でコストと納期が崩れます(迂回、保険料上昇、遅延)。

4) 二次制裁・資金洗浄対策(AML)の影響を受けやすい相手

  • 決済銀行が取引を嫌がる国・業種・スキーム(第三国迂回、名義貸し、過度な前金要求など)
  • コンプライアンス書類の要求(取引実体の証明、最終需要者、用途など)が増えやすい

2026年1月19日時点のリスクの高い国や地域

地域国名主な注意理由(要約)
東アジア中国地政学リスク、輸出管理強化、制裁波及リスク
東アジア北朝鮮全面的な制裁対象、決済・物流不可
南アジアアフガニスタン治安不安、金融インフラ不全
中東イラン経済制裁、二次制裁リスク
中東シリア内戦継続、制裁・物流困難
中東イエメン内戦、港湾・物流リスク
中東イスラエル周辺地域の戦闘激化による物流・保険リスク
東欧ロシア大規模制裁、決済・輸送制限
東欧ウクライナ戦闘継続、地域限定で物流不可
東欧ベラルーシ制裁対象、ロシア関連リスク
アフリカスーダン内戦、政情不安、通関リスク
アフリカソマリア治安悪化、海賊リスク
アフリカリビア政権不安定、港湾・治安問題
南アメリカベネズエラ経済制裁、外貨・決済規制
南アメリカコロンビア一部地域の治安リスク
中央アメリカハイチ政情不安、治安崩壊、物流困難

※情勢は短期間で変化するため、実務担当者は必ず実際の取引前に最新の公的情報を確認してください。

紛争や戦争で起きやすい影響

  • 決済停止・送金遅延:銀行が中継を止める、外貨規制、コンプライアンス審査で入出金が長期保留
  • 輸送遅延・迂回:航路変更、混雑、積替増加でリードタイムが伸び、追加費用が発生
  • 保険条件の悪化:戦争危険担保の追加、免責の拡大、保険料の上昇
  • 契約不履行:港湾閉鎖、輸出入禁止、通関停止、徴用・没収リスクで納品不能
  • 規制違反リスク:相手・船・銀行が制裁リスト該当、用途がデュアルユース扱いで差止め
  • 情報の非対称:現地情報が途切れ、虚偽説明や詐欺が混ざりやすい(書類の真正性が落ちる)

実務的には「止まる理由の多くが、制裁・決済・物流のどれか」です。最初にここを潰すのが費用対効果が高いです。

スポンサーリンク

対策

対策1:国・地域のリスク判定を“固定の手順”にする

  • 危険情報:外務省などの公的機関の危険情報(国だけでなく地域指定まで確認)
  • 制裁:米国(OFAC)、EUなどの制裁情報(プログラム・リストの更新をチェック)
  • クロスチェック:英国など他国の渡航勧告も併用し、治安や混乱の温度感を比較する

対策2:取引先審査を「相手の実体」と「資金の道」で分けて確認する

  • 相手の実体確認:登記情報、所在地、代表者、実質支配者、過去の取引実績、固定電話・ドメイン・メールの整合性
  • 資金の道の確認:支払人(誰が送るか)、受取人(誰が受けるか)、決済銀行(どこを通るか)、第三国迂回の有無
  • 危険シグナル:名義が頻繁に変わる、第三国の個人口座、過度な値引き、急かす、書類の不備が多い

対策3:決済条件を「最悪でも回収できる形」に寄せる

  • 新規・高リスク:取消不能L/C、信用状+確認銀行、段階払い(出荷前・船積書類確定後・到着後など)
  • 中リスク:T/T前受け比率を上げる、出荷後の支払サイト短縮、保険・輸送書類の厳格化
  • 低リスクでも:制裁や銀行都合で止まる可能性があるため、代替決済ルートや条件変更条項を用意

対策4:契約条項で“止まった時の処理”を先に決める

  • 不可抗力(Force Majeure):戦争・内乱・政府措置・港湾閉鎖・制裁強化を想定し、通知義務と協議手順を入れる
  • 制裁コンプライアンス条項:制裁該当の疑いが出た時点で出荷停止・解除できること、追加書類の提出義務
  • Incotermsの再点検:リスクと費用の境界(保険・危険負担の移転点)を、現実の物流に合わせる
  • 準拠法・裁判管轄:回収局面で機能する選択にする(仲裁条項も含めて)

対策5:物流は“迂回と在庫”で吸収する設計にする

  • 代替ルート:主要港が詰まった場合の代替港、航空切替の条件、積替回数が増える場合の費用負担
  • バッファ設計:安全在庫、納期の余裕、分納(1回で大きく送らない)
  • 保険・運送条件:戦争危険担保の要否、免責、インコタームズと実保険の齟齬を確認

対策6:社内の最小チェックリスト(例)

  • 相手・実質支配者・決済銀行・船会社が制裁リストに該当しない
  • 危険情報で、相手所在地が高リスク地域指定に入っていない(入っているなら代替案と承認がある)
  • 用途・最終需要者・最終仕向地が説明でき、書類で整合する
  • 決済が止まった時の代替条件(L/C化、前受け増、分納など)が契約に織り込まれている
  • 物流の迂回・遅延時に、費用負担と解除条件が決まっている
スポンサーリンク

まとめ

紛争・戦争リスク下の貿易では、「国名が危ないか」よりも「制裁・決済・物流のどこで止まるか」を先に潰すのが実務の近道です。公的な危険情報と制裁の一次情報を起点に、取引先の実体確認、資金の道、契約条項、物流の迂回と在庫バッファまでを最小手順として固定化すると、新規取引でも事故率を大きく下げられます。

スポンサーリンク

参考外部リンク

2026年1月19日 | 2026年1月19日