1. はじめに:年末年始はなぜ物流が遅延するのか
年末年始は、国際物流が一年の中で最も停滞しやすい季節です。日本の年末年始休暇に加え、欧州のクリスマス休暇、米国のホリデー商戦、そしてアジア各国の旧正月など、さまざまな国で大型休暇が重なります。そのため、港湾・空港・倉庫・税関の稼働日が大幅に減り、処理能力が下がることが遅延の主な原因です。
また、12月下旬はオンライン販売が世界的に急増し、航空貨物や宅配便がパンクしやすくなります。海上輸送でも、積み替え港の混雑やスケジュール乱れが発生し、通常よりも数日から一週間以上の遅れが生じるケースがあります。
2. 年末年始にとくに遅延しやすい地域と国
ここでは、地域ごとに「国」「遅延理由」を整理した表を示し、その後に地域別の解説を加えます。以下の停止日数は、各国の祝日・行政休暇・港湾稼働日などを基準にした、例年見られる一般的な傾向です。実際の停止日数は年度や地域ごとに異なる場合があります。
2-1. アジア地域(旧正月と重なるため最も影響が大きい)
アジア:国別一覧(遅延理由+想定停止日数)
| 国名 | 遅延理由 | 想定停止日数(例年) |
|---|---|---|
| 中国 | 旧正月の長期停止、港湾減員、通関ほぼ停止 | 7〜14日(旧正月期間)、年末は1〜3日 |
| 台湾 | 旧正月停止、税関の人員縮小 | 5〜10日 |
| 韓国 | 旧正月が長期停止 | 3〜5日(旧正月)、年末は1〜2日 |
| ベトナム | 税関停止が長期化しやすい | 5〜10日 |
| タイ | 年末年始の祝日+旧正月前後の縮小 | 3〜5日 |
| インドネシア | 行政休暇、港湾の人員減少 | 3〜5日 |
| マレーシア | 行政機関の稼働縮小 | 3〜5日 |
| フィリピン | クリスマス休暇長期化、港湾混雑 | 4〜7日 |
| インド | 行政処理の遅れ、港湾の減員 | 3〜6日 |
アジア地域の解説
アジア全体では、中国や台湾を中心に旧正月による長期停止が最も大きな影響を与えます。年末年始の混雑と旧正月の二段構えとなるため、この地域からの輸出入は12月〜2月にかけて大幅な遅延が起こりやすくなります。
また、インドやフィリピンでは年末の行政処理が遅れる傾向があり、書類審査・税関の承認が年明けや旧正月後まで動かないケースもあります。オンライン物流が急増する地域でもあるため、航空便のスペース確保が難しくなることも多いです。
2-2. 中東地域(休暇と行政サービス縮小が重なる)
中東:国別一覧(遅延理由+想定停止日数)
| 国名 | 遅延理由 | 想定停止日数(例年) |
|---|---|---|
| UAE | 行政縮小、週末サイクルの影響 | 3〜6日 |
| サウジアラビア | 行政業務の停止、書類承認停滞 | 3〜7日 |
| カタール | 税関業務の減員 | 3〜5日 |
| トルコ | 公的機関の休暇が長く港湾処理が停滞 | 4〜7日 |
| オマーン | 行政休暇、船積み遅延 | 3〜5日 |
中東地域の解説(文章)
中東は宗教行事以外でも年末年始に行政サービスが縮小するため、書類処理が滞りやすくなります。港湾や空港は動いていても、税関が稼働しないため輸入許可が進まず、貨物がそのまま倉庫に滞留するケースが多い傾向です。
また、金曜・土曜が週末となる国も多く、通常より稼働日が少なくなることで、結果的に通関作業が数日単位で遅れることがあります。
2-3. 欧州地域(長期クリスマス休暇が最大要因)
欧州:国別一覧(遅延理由+想定停止日数)
| 国名 | 遅延理由 | 想定停止日数(例年) |
|---|---|---|
| ドイツ | 12/24〜1/1の長期休暇、港湾減員 | 7〜10日 |
| フランス | 行政停止期間が長い | 5〜9日 |
| オランダ | ロッテルダム港混雑 | 5〜9日 |
| ベルギー | EU域内書類処理が止まりやすい | 5〜9日 |
| イギリス | 航空貨物混雑、年末稼働縮小 | 4〜7日 |
| スペイン | 祝日が多く行政が動かない | 5〜8日 |
| イタリア | 稼働日が少なく書類停滞 | 5〜8日 |
欧州地域の解説
欧州では、クリスマス休暇が12月下旬から1月初旬まで長く続く国が多く、港湾・空港・倉庫ともに大幅な人員不足となります。とくにドイツやオランダは欧州物流の中心であるため、ここが止まるとEU全体に波及します。
書類の承認や輸送計画の調整も年始まで進まないことが多く、年末に輸出入を行う企業は極めて慎重なスケジュール管理が必要です。
2-4. 北米地域(ホリデーシーズンの荷物急増と天候要因)
北米:国別一覧(遅延理由+想定停止日数)
| 国名 | 遅延理由 | 想定停止日数(例年) |
|---|---|---|
| アメリカ | 荷物急増、港湾混雑、航空スペース不足 | 3〜6日 |
| カナダ | 大雪・氷の影響、行政停止 | 4〜7日 |
北米地域の解説
アメリカはブラックフライデーから年末まで荷物量が急増し、航空便のスペースが圧迫されます。港湾も混雑しやすく、通常時より大幅に遅延しやすい傾向です。
カナダは天候要因が大きく、特に冬季は大雪や氷結で輸送そのものが止まることもあります。書類処理も年末は遅れるため、余裕のある日程での出荷が必要です。
2-5. 中南米・アフリカ(行政機関の休暇が長め)
中南米・アフリカ:国別一覧(遅延理由+想定停止日数)
| 国名 | 遅延理由 | 想定停止日数(例年) |
|---|---|---|
| ブラジル | 行政休暇長期化、税関稼働減 | 5〜10日 |
| アルゼンチン | 行政停止、港湾遅延 | 5〜10日 |
| チリ | 祝日に伴う承認停止 | 3〜6日 |
| ケニア | 行政人員減、通関停止 | 4〜7日 |
| ナイジェリア | 港湾混雑と行政遅延 | 4〜7日 |
| 南アフリカ | 税関停止期間が長い | 4〜8日 |
中南米・アフリカ地域の解説
この地域では、行政機関の休暇期間が長めに設定されていることが多く、書類承認が年明けまで停止するケースが頻繁にあります。また、一部地域では港湾インフラの混雑も慢性化しており、年末は遅延がさらに拡大します。
輸出入手続きが複雑な国が多いため、事前に必要書類を揃えておくことが特に重要です。
補足:停止日数の読み方
この記事で示した停止日数は「税関・行政・港湾の実務がほぼ動かない期間」を指しており、完全な休業日だけでなく、稼働が極端に落ち込む“実質停止期間”も含めています。
そのため、
・書類承認が動かない
・積み替えのタイミングがずれる
・港湾で滞留する
・工場や倉庫が出荷対応しない
などの実務的な停止をカウントした「実務目線の日数」になっています。
3. 遅延が起きる主な理由
- 税関の停止または大幅縮小
- 港湾・空港の人員不足
- 航空便・船便のスペース不足
- 書類の承認や修正が年明けまで進まない
- ブラックフライデー以降の荷物急増
- 悪天候(北米・欧州)による欠航や遅延
- アジアの旧正月を見越した過剰貨物の先送り
これらが複合的に重なるため、例年12月〜2月は物流が不安定になります。
4. 実務で注意すべき期間(カレンダー形式)
・12月20日〜12月31日:欧州・北米の稼働低下
・1月1日〜1月10日:欧州が復帰途中、アジアは通常だが混雑は残る
・1月中旬〜2月:アジアの旧正月で大幅な停止
・特に中国・台湾・ベトナムは1〜2週間の停止が一般的
5. 遅延を防ぐための実務対策
・12月前半までに主要出荷をすべて完了
・航空便は早期にスペース確保
・海上輸送は積み替え港の混雑予測を事前確認
・税関書類は事前にチェックし、差し戻しリスクを排除
・L/C決済は銀行休業日を必ず確認
・可能な場合は直行便・プレミアムサービスを利用
・仕入先や輸送会社と毎週スケジュールを共有
6. 国別にまとめた遅延要因一覧
| 地域 | 代表的な国 | 主な遅延理由 |
|---|---|---|
| アジア | 中国・台湾・韓国・インド | 旧正月、行政停止、港湾混雑 |
| 中東 | UAE・サウジアラビア | 行政縮小、週末の影響、書類停滞 |
| 欧州 | ドイツ・フランス・イギリス | クリスマス長期休暇、港湾減員 |
| 北米 | アメリカ・カナダ | 荷物急増、悪天候、航空混雑 |
| 中南米・アフリカ | ブラジル・南アフリカ | 行政休暇、港湾混雑 |
7. まとめ

年末年始は、世界各地で行政サービスが止まり、物流が停滞しやすい時期です。理由は国ごとに異なりますが、共通しているのは「通関」「港湾」「航空・海上輸送」の処理能力が低下する点です。
とくにアジアの旧正月と欧米のクリスマス休暇は規模が大きいため、毎年のように遅延が発生します。企業としては、前倒しの出荷と書類管理を徹底し、国別の休暇情報を正確に把握することが最も重要です。