紛争や戦争、経済制裁が常態化する現在の国際環境では、従来の貿易常識が通用しない場面が増えています。 とくに新規取引では、善意や経験則に基づいた判断が、思わぬ損失につながることも少なくありません。 本記事では、初心者が陥りやすい代表的な誤解を10項目に整理し、なぜ危険なのかを実務視点で解説します。
誤解1:契約書をしっかり作れば大丈夫
契約書は重要ですが、紛争国や制裁下では「守らせる仕組み」が機能しないことがあります。 裁判や仲裁が現実的に使えない場合、契約書は紙切れに近い存在になります。
誤解2:前払いならリスクはない
前払いでも、制裁や銀行判断により返金が不可能になるケースがあります。 また、制裁違反と判断されると、資金が凍結される可能性もあります。
誤解3:信用状(L/C)を使えば安心
信用状は有効な手段ですが、制裁や銀行のコンプライアンス判断で無効化されることがあります。 確認銀行が付かないL/Cは、実務上のリスクが残ります。
誤解4:相手企業が誠実そうだから問題ない
相手に悪意がなくても、政府命令や金融規制により取引が止まることがあります。 個人の誠実さではどうにもならないリスクが存在します。
誤解5:少額取引だから影響は小さい
金額に関係なく、制裁やマネーロンダリング対策に抵触すれば銀行口座調査や取引停止が発生します。 結果として、本業全体に影響が及ぶこともあります。
誤解6:これまで問題なかった国だから今回も大丈夫
地政学リスクは短期間で変化します。 昨日まで安全だった国が、今日突然高リスクになることも珍しくありません。
誤解7:国全体が制裁対象でなければ問題ない
制裁は「国」だけでなく、特定の個人・企業・銀行・船会社にも及びます。 取引のどこか一箇所でも該当すれば、全体が止まります。
誤解8:物流が動いているから安全
船や飛行機が動いていても、保険が付かない、港で差し止められるなどのリスクがあります。 物流の可否と取引の安全性は別問題です。
誤解9:第三国を経由すればリスクを回避できる
意図的な迂回取引は、二次制裁や違法取引と見なされる可能性があります。 結果として、より大きな問題を招くことがあります。
誤解10:何かあったらその時に考えればいい
紛争・制裁下では、問題が起きてから対応できる選択肢はほとんど残りません。 事前に「やらない判断」を含めて設計することが重要です。
誤解を避けるために重要な視点
貿易リスクを考える際は、「取引できるかどうか」ではなく、 「問題が起きたときに自社が耐えられるか」という視点が欠かせません。 初心者ほど、条件や書類に頼りすぎず、全体像で判断する姿勢が求められます。
まとめ

紛争・戦争・制裁が絡む取引では、従来の貿易常識が通用しないケースが増えています。 今回紹介した誤解は、初心者だけでなく経験者でも陥りがちなものです。 「避ける」「条件を厳しくする」「最初から取引しない」といった判断も含め、 冷静で現実的なリスク管理を行うことが、長期的な事業継続につながります。